
2026年07月13日
社内・工場ネットワークを可視化し、 産業システムのリスクを自動検証する ― Powder Keg Technologies
- Powder Keg Technologies株式会社
濱村 将人 - 代表取締役
2026年7月1日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行った。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューを行ったので皆様にご紹介!
今回はPowder Keg Technologies。社内ネットワークや工場ネットワークに潜む機器やリスクを可視化し、制御システムなどの産業システムにも対応する自動セキュリティテストデバイス「MUSHIKAGO」を開発するスタートアップ。代表取締役の濱村 将人氏に話を伺った。
目次
めぇ〜ちゃん- 社内・工場ネットワークの見える化から、産業システムのセキュリティ検証まで支援するスタートアップです!
国産セキュリティを生み出した原点
創業のきっかけを教えてください
濱村:創業の原点は、電力会社やコンサルティングファームでサイバーセキュリティの現場に携わるなかで抱いた、強い問題意識にあります。
攻撃手法は年々高度化する一方で、専門人材は慢性的に不足し、脆弱性診断やペネトレーションテストを継続的に実施できている組織はごくわずかでした。加えて、国内のセキュリティ基盤の多くが海外製品に依存している状況は、技術の蓄積や経済安全保障の観点でもリスクになり得ると感じていました。かといって対策を増やしすぎれば、現場の運用に大きな負荷がかかります。
そこで、専門家の知見をAIとソフトウェアに落とし込み、企業自身が必要な範囲を、必要なタイミングで、繰り返し検証できる「国産の仕組み」をつくりたいと考えました。この発想から、疑似攻撃によるセキュリティ評価を全自動化する「MUSHIKAGO」開発に着手し、2021年にPowder Keg Technologiesを創業しました。
研究成果を社会へ還元し、日本発の選択肢を広げることも、当初からの目標です。
社内・工場ネットワークを可視化し、リスクを継続検証
貴社の提供するサービスについて、どのような価値を提供しているのでしょうか
濱村:当社は、AI駆動の自動ペネトレーションテストデバイスを中心に、社内ネットワークや工場ネットワークに接続された端末・機器の可視化、脆弱性診断、設定不備の検出、疑似攻撃によるセキュリティ検証を提供しています。
ネットワークに接続するだけで、PCやサーバ、IoT機器、ネットワーク機器に加え、制御システムなどの産業システムにも対応し、現場の資産構成とリスクを把握できます。さらに、実際の攻撃者が行う侵入、権限昇格、横展開などを再現することで、侵入経路や想定被害範囲まで可視化します。
最大の特徴は、必要な機能をデバイス内に備え、インターネットに接続できない完全オフライン環境でも利用できることです。検証データを外部クラウドへ送る必要がないため、工場、病院、船舶、重要インフラなど、機密性が高く外部接続に制約のある環境でも、ネットワーク資産の可視化と実効性の高いセキュリティ検証を行えます。

サービスイメージ
工場・重要インフラでも使えるオフライン対応デバイス
SaaSではなく、ハードウェアを選んだ理由を教えて下さい
濱村:SaaSは導入や更新が手軽で、多くの領域で合理的な選択です。
一方、当社が主な対象とする工場、病院、船舶、重要インフラには、インターネット接続が制限され、システム構成や脆弱性情報を外部クラウドへ送ることが許されない環境が数多く存在します。
こうした閉域・オフライン環境にこそ高度な検証が必要だと考え、当社はあえてハードウェアでの提供を選びました。
MUSHIKAGOは検証に必要な機能を小型デバイス内に備えているため、ネットワークに接続して簡単な設定を行うだけで利用を開始でき、診断に関する情報はすべてお客さまの内部で完結します。専用ソフトの導入や複雑な検証環境の構築も不要です。さらに、専用機として構成を標準化することで、利用者の端末やOSに左右されず、診断品質とサポートを均一に保てます。
セキュリティの専門家が常駐していない現場でも、必要な場所へ持ち込み、接続するだけで高度な検証を繰り返せることを重視した結果、ハードウェアという提供形態を選択しました。

ハードウェア提供を支える開発体制
ハードウェア運用の課題に対し、どのように乗り越えたのでしょうか?
濱村:ハードウェア提供では、部材調達、製造、在庫、配送、故障対応など、SaaSにはない運用負荷が発生します。
当社では製造を内製し、需要を見ながら一定数の在庫を確保することで、導入までのリードタイムを抑えています。MUSHIKAGOは売り切り型ではないため、故障時には修理を待っていただくのではなく、原則として機器を交換します。取り付けや取り替えが容易な設計としており、交換機を送付すれば、お客さま自身で短時間に入れ替えられるため、現地作業や長期停止を避けられます。一方、ハードウェア基盤の一部は海外から調達しているため、半導体不足や物流の混乱によって納期が長期化する可能性があります。そのリスクに備え、特定の機器構成に大きく依存しないソフトウェア設計とし、調達可能な基盤へ柔軟に対応できるようにしています。
機能追加やアップデートも可能な限りソフトウェア側で吸収し、物理機を全面交換せずに対応できる範囲を広げています。また、お客さまの環境や要望に応じて仮想アプライアンス版も提供し、物理機に依存しない選択肢を用意しています。
OT・産業システムを守る共創を目指して
アセットを掛け合わせるためのパートナー像を教えて下さい
濱村:特に連携したいのは、社会や産業を支える重要インフラ企業と製造業の大企業です。これらの現場では、IT環境だけでなく、工場設備や制御システムなどのOT環境が混在し、業務や設備を止めずに現状を把握し、必要な対策を見極めることが求められます。
一方で、拠点ごとに設備構成や運用ルールが異なり、セキュリティ対策を全社へ展開することは容易ではありません。
そこで、実際の現場を活用した共同PoCを通じて、資産の可視化、脆弱性診断、ペネトレーションテストの安全性と有効性を確認し、各社の運用に合った導入モデルを共につくりたいと考えています。
さらに、一つの工場や事業所で得た成果を、国内外の複数拠点やサプライチェーンへ横展開し、グループ全体のセキュリティ水準を継続的に高める仕組みへ発展させたいです。
単なる製品導入にとどまらず、業界固有の知見と当社の技術を組み合わせ、重要な社会機能を守る実践的な基盤を共同で構築できる企業との連携を目指しています。
日本発の技術を世界へ
今後の展望を教えてください
濱村:海外展開は、まず日系企業の海外工場で実績を積み、それを同一企業の他拠点や同業他社へ横展開しながら、アジア、そして北米へ段階的に広げる方針です。
ASEANでは、2026年度中に日系大手自動車部品サプライヤーの複数の海外拠点でPoCを計画しています。各拠点でネットワーク資産の可視化とセキュリティ検証を行い、国や拠点ごとに異なる設備構成・運用体制・規制・サポート要件を把握しながら、海外でも再現可能な導入モデルを確立します。この実績を足掛かりにASEAN域内での展開を広げ、将来的に北米市場へとつなげていきます。
製品面では、ローカルLLMを活用し、検出・可視化したリスクに対する修復策の提示から自動修復までを支援する機能を提供予定です。
最終的には「診断するだけ」の製品ではなく、企業が国内外の拠点を横断してリスクを継続的に把握し、改善まで実行できるセキュリティリスク管理プラットフォームへと進化させることを目指しています。
KDDI 瀬戸谷- ★推しコメント★
サイバー攻撃の高度化が進む一方で、専門人材不足や海外製品への依存といった課題は、多くの企業に共通する悩みです。Powder Keg Technologiesは、こうした課題に対し、AIによる自動ペネトレーションテストという新たなアプローチで挑戦しています。
特に、社内ネットワークや工場ネットワークに接続された端末・機器を可視化し、制御システムなどの産業システムにも対応できるハードウェア型の「MUSHIKAGO」は、現場のニーズを深く理解したからこそ生まれたプロダクトだと感じました。インターネット接続が制限された工場、病院、重要インフラでも利用しやすく、単なる脆弱性診断にとどまらず、継続的なリスク把握と改善を実現する仕組みに大きな可能性を感じます。
今後、製造業や社会インフラを支えるセキュリティ分野で存在感を高めていくことが期待されるスタートアップです。それでは次回の記事もお楽しみに♪


