
2026年07月10日
情シスを企業成長の起点へ ― zooba
- 株式会社zooba
名和 彩音 - 代表取締役
2026年7月1日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行った。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューを行ったので皆様にご紹介!
今回はzooba。情シスの実務までこなす「情シスAI zooba」を開発するスタートアップ。zooba代表取締役の名和 彩音氏に話を伺った。
目次
めぇ〜ちゃん- 情シス業務の実行と改善をAIで支援するスタートアップです!
情シスの課題から生まれた挑戦
創業経緯を教えて下さい。
名和:私は日本マイクロソフトでActive Directoryなどエンタープライズ製品のサポートエンジニアを務めた後、2013年にインフラエンジニアとしてDeNAに入社しました。当初はオンプレサーバーの管理や海外支社のインフラ整備が主な仕事でした。
転機は、IT戦略部へ異動してSaaSの運用を担当するようになったことです。当時は事業のシーズだという意識などありませんでしたが、振り返れば、あの経験こそがzoobaの出発点でした。
オンプレのサーバーなら、スクリプトを流せば全台まとめて設定が完了します。ところがSaaSはそうはいきません。
ツールごとにAPIも属性も異なり、Admin権限で都度コンソールに入って作業する——そんな細かな手間が積み重なっていく。
「面倒だ」「ミスをしたら怖い」「退職者のアカウントに抜け漏れはないか」。こうした課題感がずっと頭を離れませんでした。
そのような中、直接のきっかけは、デライト・ベンチャーズとの出会いでした。「支援プログラムがあるのなら、私がこの事業を立ち上げたい」。思わずそう手をあげ、DeNAに籍を置いたまま準備を重ね、2021年8月、株式会社zoobaを創業しました。
“実行するAI”が情シスを支える
zoobaはどのような企業にどんな価値を提供していますか。
名和:zoobaは、Google WorkspaceやSlackをはじめ数多くのSaaSを使い、その管理が情シスに集中している企業に価値を提供しています。
業種業界を問わずご利用いただいておりますが、事業の成長とともにアカウントやツールが増え続け、運用が追いつかなくなってきた成長期の事業会社やエンタープライズに適しています。
提供する価値は、情シスの仕事を「答えて終わり」にせず「実行して、終わらせる」ことです。
SaaS・IT資産管理プラットフォームを土台に、従業員向けの「ヘルプデスクAI」と情シス向けの「情シスAI」を提供し、問い合わせ対応からアカウントの発行・停止、棚卸しまでを担います。
可視化にとどまらず実際の操作まで行う点が、私たちの特徴です。
価値が及ぶのは情シスだけではありません。経営層にとっては、使われていないアカウントの可視化がコスト削減につながります。従業員にとっても、チャットで完結する手続きや即答するヘルプデスクで、日々の負担が軽くなります。
情シスを起点に、企業全体の運用を軽くしていく。情シスが強くなれば、会社全体が強くなる。その好循環をつくることが、zoobaの提供価値です。

サービスイメージ
実行と改善を両立するAI
競合と比較した際の御社の強みを教えてください。
名和:最大の強みは、操作の「実行」と、運用そのものの「改善」まで行う点です。
SaaSやアカウントの管理ツールの多くは「どこに何があるか」を見える化するところで止まり、操作は人が手で行う前提です。
zoobaは100以上のSaaSと連携し、アカウントの発行・停止や権限付与といった操作そのものをAIが代行します。見せて終わりではなく、実行して終わらせることができます。
さらにzoobaは、実行した結果や問い合わせの傾向から、つまずきの多い箇所やムダな手続きを見つけ、ナレッジや運用フロー自体を更新していきます。使うほど対応範囲と精度が広がり、運用が継続的に改善されていく仕組みです。
そして私たちが向き合っているのは、情シスだけではありません。その先で働く従業員一人ひとりまで見て、プロダクトをつくっています。情シスの運用を軽くすることが、最終的には働くすべての人の毎日を良くすることにつながる。両方を同時に支えられることが、zoobaの強みです。

人は思考のリーダー、AIはパートナー
AI普及で変わる情シスの未来と、人の役割はどう変化すると考えていますか?
名和:これまでの情シスは、問い合わせや障害が発生してから対応する受け身の仕事になりがちでした。AIの普及で、この構造が大きく変わると考えています。
定型的な問い合わせ対応やアカウント処理といった日々の雑務はAIが引き受け、人はそこから解放されていきます。
役割分担について私が大切にしているのは、人が「思考のリーダー」であり、AIは「思考のパートナー」である、という関係です。方向を決め、文脈を与え、最後に判断を下すのは思考のリーダーである人。一方で、膨大なデータの処理や、人では見落とす傾向の発見といった重労働を、思考のパートナーであるAIが担います。
AIは強力ですが、何を優先し、どこまで許容し、取り返しのつかない操作に踏み切ってよいかという判断は、責任を持つ人にしかできません。
だからこそzoobaは、最後に『OK』を出すのは人である、という設計を大切にしています。不可逆な操作はAIが提案し、人が承認する。判断と責任は人に残し、手間だけをAIに渡します。
人が思考のリーダーであり続けることで、情シスは雑務から解放され、会社の仕組みそのものをつくる側にまわれる。
AIは人を置き換えるのではなく、人を一段高い役割へ引き上げるパートナーだと考えています。

共創で広げる情シスの可能性
今後の共創戦略とパートナーへ期待することを教えて下さい。
名和:大きく2つの方向で連携を広げたいと考えています。
ひとつは、SaaSを提供する事業者をはじめとする周辺領域をお持ちの事業者様とのシナジーです。情シスの仕事は、IT資産管理やヘルプデスクにとどまらず、人事・労務・セキュリティ・コーポレートといった領域と地続きです。入退社の手続きは人事と、権限管理はセキュリティとつながっています。
zoobaは現在100以上のSaaSと連携していますが、こうした周辺領域を担う事業者の皆さまとご一緒することで、情シスを起点に会社の運用全体をなめらかにつないでいけると考えています。
もうひとつは、BPO・業務委託を担う事業者様との連携です。情シスの運用の多くは、外部への委託で支えられています。私たちが目指すのは人の判断を残しながら定型業務をAIで担うことなので、現場を熟知した皆さまと力を合わせることで、AIと人がうまく分担した、より質の高い運用を一緒につくっていけると考えています。
私たちが信じているのは、情シスが強くなれば会社全体が強くなる、という世界です。同じ景色を見て、その先で働く人の体験まで一緒に考えてくださる方々と、長く共創していきたいと考えています。
情シスが会社の未来をつくる
今後の展望を教えてください。また、情シスやバックオフィスの理想像をどのように描いていますか。
名和:今後はまず、情シスAIが担える操作の範囲を広げ、連携できるSaaSや周辺領域をさらに増やしていきます。
情シスが日々向き合う業務のうち、人が判断すべきところを残しながら、手間の部分をできる限りAIに移していく。使うほど運用が改善されていく仕組みを、より多くの企業に届けることが当面の目標です。
その先に描いているのは、情シスやバックオフィスが「呼ばれてから動く受け身の部署」から「会社の未来をつくる起点」へ変わる姿です。これまで情シスは、トラブル対応や雑務に追われ、戦略を考える時間を持てずにいました。AIがその手間を引き受ければ、情シスは会社全体のITやデータ、組織の仕組みそのものを設計する側にまわれます。
私は、情シスは「唯一の、経営のためのエンジニア」だと考えています。事業のためにコードを書くエンジニアがいるように、会社全体を強くするために動けるのが情シスです。情シスが強くなれば、会社全体が強くなる。
zoobaが目指すのは、バックオフィスが「コストセンター」ではなく、組織を進化させ続けるエンジンになる未来です。その変化を、AIで後押ししていきます。
KDDI 瀬戸谷- ★推しコメント★
zoobaの魅力は、情シス業務を「可視化する」だけでなく、「実行して終わらせる」という一歩先の価値を提供している点です。多くのSaaS管理ツールが管理や可視化に留まる中、アカウント管理や問い合わせ対応などの実務までAIが担い、さらに利用データをもとに運用そのものを改善し続ける仕組みは大きな差別化ポイントだと感じました。また、「人は思考のリーダー、AIはパートナー」という考え方からも、人を置き換えるのではなく、人がより本質的な業務に集中できる環境を目指す姿勢が伝わってきます。情シスを起点に企業全体の生産性向上を目指すzoobaは、AI時代のバックオフィスを支える存在として、今後ますます注目したいスタートアップです。
それでは次回の記事もお楽しみに♪


