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「細胞の辞書」をつくる―先端技術で生命を読み解く - CYBO

株式会社CYBO
新田 尚
代表取締役社長

2026年5月14日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行った。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューを行ったので皆様にご紹介!


今回はCYBO。顕微鏡検査へのAI活用を通じた疾患の早期発見及び治療の精密化を目指す事業を展開するスタートアップ。株式会社CYBO代表取締役社長の新田尚氏に話を伺った。


めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
独自の高速撮像技術を強みに、細胞のデジタル解析で医療だけでなく幅広い分野の現場に貢献するスタートアップです!

顕微鏡観察からデジタル解析へ──CYBOの細胞解析技術とは

CYBOがどんな会社で、どんなサービス・事業を行っているのか教えてください。

新田:CYBOは、細胞を精密に計測する技術を提供し、医療をはじめ生命に関わるさまざまな産業で、細胞情報の活用を推進するスタートアップです。高速・高解像度の3Dイメージング技術とAIによる細胞解析技術を組み合わせ、従来は顕微鏡で人が観察していた細胞標本を、デジタル画像として取得・解析するプラットフォームを開発しています。

主力製品である「CYBO Scan」は、細胞標本を立体的に撮像するスキャナで、ビューアソフトや用途別AIモジュールと組み合わせることで、デジタル検鏡やAI解析に利用できます。実用化が最も進んでいるのは、子宮頸がん検診などの細胞診標本を対象とした事業で、それに続き、水質検査における藻類解析や血液検査などにも応用先を広げています。

私たちは、従来は専門家の経験や技能に基づく判断に依存していた細胞検査を、再現性と拡張性を持つ社会基盤に変えていきたいと考えています。細胞検査をアップグレードすることで、医療や環境衛生、食品など、生命に関わる幅広い分野の発展に貢献していきます。


サービスイメージ

AIが切り拓く細胞検査の新時代──CYBOの挑戦

なぜ、貴社は事業でその課題に取り組もうと思ったのでしょうか。

新田:私は大学院生の頃から細胞計測をライフワークとし、さまざまな計測技術の研究開発と事業化に取り組んできました。フローサイトや細胞遺伝子解析などの技術はここ数十年で急速に発展しましたが、細胞の形態に基づく顕微鏡検査は、社会で幅広く活用されているにもかかわらず、何十年も本質的な変化が少ない状態が続いていました。その背景には、高度な専門性を要する細胞検査が熟練者の経験と技能に大きく依存しており、それを支援・代替する技術が十分になかったことがあります。

近年急速に発展した人工知能技術は、この熟練者依存を補完し、長年停滞していた分野に新たな可能性をもたらすと確信し、CYBOとして研究開発に取り組みました。多くの困難がありましたが、その成果が今年Natureに論文掲載されたことで、顕微鏡検査の未来を変える一歩を踏み出せたと実感しており、今後の業界トレンドにつながる重要な一歩を私たちが示せたと確信しています。
今後はこの技術を現場で使える形に育て、検査の質と持続性の向上に貢献していきたいと考えています。

何十万個の細胞をAIが解析──細胞検査の常識を変えるCYBO Scan

CYBO Scanを導入すると、現場の仕事はどのように変わりますか?

新田:CYBO Scanを導入すると、細胞検査の標本を3Dデジタルデータとして保存・共有できるようになり、離れた場所からの画像確認やコンサルテーション、教育・研究、アーカイブなど、標本の活用の幅が広がります。

さらにAIシステムを組み合わせることで、大量の細胞画像から得られる情報を定量的に整理し、専門家が標本全体の傾向や注目すべき特徴を把握しやすくなります。

従来通り標本を作製した後、CYBO Scanで標本全体を3Dデジタル化し、AIが標本中の細胞を解析します。細胞検査士などの専門家は、デジタル化された標本画像に加え、AIにより定量化された形態情報も参照できるため、標本全体の特徴をより多面的に把握できます。

さらに標本中には何十万個もの細胞が存在しますが、人がそのすべてをくまなく観察することは現実的に困難であり、従来は目に留まった細胞に焦点を当てる検査になりがちでした。AIは膨大な細胞を一つひとつ解析し、定量化することで、人力では難しかった客観的な解析を可能にします。
これにより、細胞検査は今後、データドリブンで客観的な計測へとシフトしていくと考えています。

「2Dでは足りない」──細胞診デジタル化の難しさ

細胞診のデジタル化が進みにくかった理由を、現場の困りごととあわせて教えてください。

新田:細胞診のデジタル化がほとんど進んでこなかった大きな理由は、従来のデジタル顕微鏡やスライドスキャナでは、細胞検査士などの専門家が判断に必要とする細胞の形態情報を十分に再現できなかったためです。
細胞診標本は立体的で、細胞の重なりや厚みがあります。そのため2D画像では情報量が不足しやすい一方、3Dでデジタル化しようとすると、撮像時間やデータ容量が膨大となり、実用化が困難でした。

CYBOでは、3Dデジタル化を現場で扱える形にする新技術を開発しましたが、製品化を進める中で、それだけでは不十分だと分かりました。細胞内部の詳細な構造、質感、色味をどこまで忠実にデジタル化できるかも、検査品質に直結する重要な要素だったためです。細胞検査士にとって、デジタル化によって検査の質が落ちることは許容できません。
そこで、エンジニアが専門家の細胞の見方や判断プロセスを深く理解し、現場と密に対話しながら開発することが非常に重要でした。

細胞を“撮る・見る・解析する”──CYBOの技術の全体像

CYBOのコア技術を挙げるなら、どのような内容ですか?

新田:CYBOのコア技術は、大きく三つあります。
第一に、細胞標本を高速・高解像度に3D撮像するホールスライド・エッジ・トモグラフィー技術です。厚みや重なりを持つ標本でも細胞の形態情報を立体的に取得し、大容量の3D画像を撮像中にリアルタイムで処理・圧縮することで、現場運用に耐える速度とデータ量に落とし込みます。これはCYBO Scanに搭載している基盤技術です。

第二に、圧縮保存した3D画像データを、閲覧時にオンデマンドで解凍・表示する技術です。閲覧ソフトCYBO Viewの中核を担っています。

第三に、標本中の膨大な細胞を検出・分類し、異常細胞の数や分布などをCMDという独自形式で定量化し、解析に用いるAI技術です。CYBO AIシリーズの基盤となる技術です。従来は専門家が経験に基づいて総合判断していた情報を、細胞単位・標本単位のデータとして扱えるようにする点が特徴です。撮像、圧縮、表示、AI解析までを一体で設計し、検査現場で継続的に使えるシステムとして実装していることが強みです。

細胞をデータ化し、生命現象を読み解く未来へ

CYBOが目指しているのは、どんな未来でしょうか。

新田:CYBOが目指しているのは、細胞検査を一部の熟練者に依存する仕組みから、誰もが高品質な検査にアクセスできる社会インフラへ進化させることです。細胞は生命の基本的構成要素であり、私たちの体はもちろん、食べ物や周辺環境など、さまざまなものが細胞で成り立っています。そのため、細胞を精密に計測する技術は、がん検査や細胞療法などの医療分野に加えて、環境や食品など幅広い産業との接点を持ちます。

一方で、広く普及している細胞検査の多くは、いまだ顕微鏡下での目視判断に依存しており、専門人材の不足、負荷集中、主観的判断に起因するばらつきなどの課題があります。私たちは、細胞を高品質にデジタル化し、AIによって定量化することで、検査の再現性、効率性、客観性を高めたいと考えています。

将来的には、医療、環境、食品などの領域で細胞形態データを蓄積・解析し、AIが多様な細胞パターンを学ぶことで、従来は見過ごされていた生命現象や環境変化を可視化する基盤をつくりたいと考えています。

蓄積された細胞データが、新たな検査の可能性を拓く

3〜5年後、細胞データや検査のあり方がどう変わっていてほしいと考えていますか?

新田:3〜5年後には、細胞検査の現場でデジタル化とAI活用が特別な試みではなく、日常的な検査フローの一部として導入され、あるいは設備導入の候補として広く認知されていてほしいと考えています。
すでに当社技術を導入したユーザーからは、人が見逃しかけた細胞をAIが示唆したという事例も出始めており、数年後にはこうしたデータがエビデンスとして報告・共有されることを期待しています。

チェスや将棋の世界では、AIが新しい打ち手を発見し、それを学んだ棋士のレベルが向上する例があります。細胞検査でも同様に、AIをトレーニングするだけでなく、人間がAIから学ぶことで検査のレベルが高まることが起きてくるはずです。
この世界観に共感する専門家の協力により、細胞標本データの収集ネットワークは国内にとどまらず海外にも広がりつつあります。2〜3年後には、その蓄積されたデータから新たな検査のあり方や未来の片鱗が見え始めているかもしれません。

KDDI 瀬戸谷
★推しコメント★
私が感じたCYBOの魅力は、単なる“医療AI企業”ではなく、細胞診の在り方そのものをアップデートしようとしている点にあります。独自の高速撮像技術とAI解析を組み合わせることで、従来は人の経験や目視に依存していた細胞診断の効率化・高精度化に挑戦しているのが特徴です。特に印象的だったのは、技術先行ではなく、医療現場の課題解決を軸にプロダクトを磨き続けている姿勢。診断を“より早く、より正確に”届けることで、患者・医療従事者双方の負担軽減を目指す点に、CYBOならではの可能性を感じています。
それでは次回の記事もお楽しみに♪

株式会社CYBO
https://www.cybo.jp/
顕微鏡検査へのAI活用を通じた疾患の早期発見及び治療の精密化を目指す事業を展開

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