
2026年05月21日
化学品の「作り方」を変える—化学プロセス革新の最前線 - Bubble&Flow
- 株式会社Bubble&Flow
衣笠 仁教 - 取締役
2026年5月14日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行った。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューを行ったので皆様にご紹介!
今回はBubble&Flow。ファインバブル及びフロー反応を活用した化学品の開発・製造・販売事業を展開するスタートアップ。Bubble&Flow取締役の衣笠仁教氏に話を伺った。
目次
めぇ〜ちゃん- 静岡大学・間瀬研究室発のディープテック系スタートアップで、ファインバブル技術とマイクロ波フロー反応技術を活用した「グリーンな化学品づくり」を行う会社です!
技術を「使われる形」にするための挑戦
Bubble&Flowは、どんな事業を行っている会社なのか教えてください。
衣笠:株式会社Bubble&Flowは、「ファインバブル」と「フロー反応」という二つの技術をコアに、合成反応・洗浄・培養・抽出など幅広い化学プロセスの変革に取り組んでいます。
ファインバブルとは、直径100μmより小さな気泡のことで、普段炭酸水などで見る数mmオーダーの気泡とは異なる特異な物理・化学的性質を持ちます。これら技術を活用することで、例えば従来の高温高圧環境下でのバッチ式反応に比べて、反応時間の短縮・収率の向上・副反応の抑制・省エネ・少廃棄物といった様々な効果が期待できます。
当社はこれら技術を組み合わせ、製造現場における「データ駆動型プロセスソリューション」を提供しています。具体的には、ターゲット探索、反応条件の最適化、実証実験の設計・実施・評価など、ユーザ企業様の実機導入に向けた一連の伴走支援を行っています。医薬品、農薬、機能性化学品、精密洗浄など幅広い分野の企業・研究機関と連携しながら、「つくる」プロセスそのものをよりクリーンで効率的なものに変えることを目指しています。
研究の可能性を「使われる技術」へと変える挑戦
大学での研究をもとに起業しようと思った理由や、創業の背景を教えてください。
衣笠:共同創業者の間瀬の研究で、非常に難しいファインバブルの挙動を解析・制御して、エビデンスに基づいて効果発現のメカニズムを捉えている話を聞いて、「ファインバブルの可能性」を感じたからです。
ファインバブルは、効果の期待できる用途が様々あるユニークな技術であり、実際に社会実装できれば研究成果を社会へ還元できると思いました。
しかし、大学では、基礎研究から論文・特許までは担えても、事業化・製品化まで一貫して推し進めることは構造的に難しい。一方、共同研究先の大手企業でも、不確実性の高い新技術をゼロから実用化まで持っていくのはかなりのハードルがあります。
であれば、自分たちでやるしかない。研究成果をユーザ企業が実際に使えるレベルまで仕上げていく。その役割を担う主体として、Bubble&Flowを立ち上げました。
実用化までに立ちはだかる時間と投資の壁
化学品づくりには、どんな社会課題や環境課題があると感じていましたか。
衣笠:化学製品は、現代社会を支える根幹でありながら、その製造工程は、同時に環境負荷の大きな発生源でもあります。有機溶媒の大量使用、高温・高圧条件下での長時間反応、冷却・廃液処理に伴うエネルギー消費、こうした要素が積み重なることで、製造1トンあたりのCO₂排出量や廃棄物量は他産業と比べても際立って高い水準にとどまっています。
しかしながら、「長年の製法を変えるリスクは取れない」というのが現場の慣性です。例えば、製造現場のデジタル化・データ活用はまだまだ十分とは言えず、どの工程でどれだけのエネルギーやコストがかかっているか可視化されていないケースも多く見られます。このような場合、改善したくても「どこから手をつければいいか分からない」というのが実情かと思います。
こうした構造的な課題は、グリーンものづくりへの移行を阻んでいる一つの要因だと感じています。
実証を重ねて信頼を獲得し案件拡大へ
研究成果を社会に届けるうえで、難しさや苦労している点があれば教えてください。
衣笠:ファインバブルのようなプロセス技術の社会実装において最も大きな困難は、「検証に時間とお金がかかる」という点です。
ラボスケールでの効果確認から実機導入まで、検証のステップは非常に長くなります。さらに、必要な投資規模やそれによる効果も、一定のスケールまで検証が進まなければ精緻に見積もることができません。
そして、投資対効果を十分に示せない段階では、大手企業側も大きな共同研究費の予算は確保しにくく、結果として、開発のスピードは遅くなりやすくなります。「やれば成果は出せる」と我々側が思ったとしても、それを証明するための時間とリソースが常に制約になってしまいます。しかし、そこは焦らず根気強く、着実に成果を出し続けるしかありません。一つひとつの検証で実績を積み重ねていった先に、大きな投資と本格的な社会実装があると信じて取り組んでいます。

サービスイメージ
成果で証明し、顧客からの信頼を獲得
実証や企業との対話の中で、「ファインバブルとマイクロ波フロー反応技術は社会に必要だ」と実感したエピソードはありますか。
衣笠:ある化学系企業から、「様々なプロセス検討を行ってきたが、狙い通りの構造・分子量・物性がどうしても得られない」という相談が届いたことがありました。
最初はまだ私たちも十分な信頼を得られていなかったため、まずは小さな予算からプロセス検討をスタートしました。しかし結果として、先方の期待を上回る成果を示すことができました。
その後、先方から「ぜひ継続して依頼したい」とのご連絡をいただき、当初の計画よりもスケジュールを前倒しして大きな予算を確保してくださいました。現在も実用化に向けて共同での取り組みが続いています。
自分たちの信じている技術やノウハウを活用することで、お客様が驚いてくれるほどの成果を出せた経験は、チーム全体のモチベーションも高めてくれます。「この技術は確かに社会に必要とされている」と感じられた瞬間でした。
環境負荷と競争力を両立する新しい製造モデル
Bubble&Flowが実現したい、“グリーンものづくり”の未来像について教えてください。
衣笠:まず前提として、化学品そのものよりも、環境負荷の大きな「作り方」が問題なのだと考えています。
Bubble&Flowが目指すのは、ファインバブル・フロー反応・自動化/AIによる反応最適化を統合した技術基盤によって、「安全性・再現性・生産性・選択性の最大化」と「E-Factor・エネルギー・コストの最小化」を同時に実現することです。グリーンにするために性能を犠牲にするのではなく、グリーンにすることで生産性も上がる。そのモデルを示すことが私たちの使命です。
この視点は、昨今の社会情勢とも重なります。脱炭素の潮流が逆風にさらされる中でも、プロセスの効率化・国内生産の競争力強化・サプライチェーンリスクの低減は、企業にとって普遍的な経営課題です。グリーンものづくりは「環境のための我慢」ではなく、重要化学品の国内生産回帰を可能にし、地政学リスクにも強い産業基盤を作るための実利ある選択だと考えています。
研究と社会実装が一本の線でつながる——その感覚を原動力に、ものづくり全体をより良い方向へ変えていきます。
KDDI 丹羽- ★推しコメント★
従来は高温・高圧や長時間反応が前提だった化学プロセスに対し、エネルギー・コスト・廃棄物を減らしながら、安全性や生産性も高めていく姿勢に強い現実味を感じました。
グリーンものづくりを理想論で終わらせず、実証とデータを積み重ねて現場導入まで伴走する同社の取り組みは、製造業の競争力にも直結するはずです。今後の社会実装の広がりに期待しています。それでは次回の記事もお楽しみに♪


