- インタビュー
2023年10月13日
1話3分のスマホドラマがヒット「BUMP」クリエイター還元のヒミツを聞いてきた/【MUGENLABO Café・推しスタ】
- emole株式会社
澤村直道 - CEO
MUGENLABO Magazine編集部では定期的に開催している「スタートアップ×大手企業」のマッチングイベント「MUGENLABO Café」にやってきてくれたスタートアップをピックアップしてご紹介しています。今回は1話3分のショートドラマアプリで話題「BUMP」を開発したemole代表の澤村直道さんに登場いただきます。
ちょっとしたスキマ時間にスマホをいじって時間潰し・・・やったことある人も多いのではないでしょうか。ゲームやソーシャルメディア、電子書籍に勉強などなど、たくさんの候補の中でも有力なのがやはりエンターテインメント、特に動画関連です。このスマホ動画のカテゴリに「1話3分完結」というアイデアで乗り込んできたのがBUMPでした。
2022年12月にローンチした同アプリはこれまでに50万ダウンロード(2023年9月時点)を記録。TikTokなどのソーシャルネットワークでの総再生回数も4億6,000万回に到達しています。また事業の足元を支えるべく、千葉道場ファンドなど合計6社からプレシリーズAラウンドの資金調達を成功させ、2億6,000万円を集めています。
彼らの魅力はやはり、オリジナルの動画コンテンツたちです。自社制作や他社との共同制作に加え、彼らの元に集まるクリエイターたちと共に独自のクリエイター経済圏を作っていることも特徴に挙げられます。今回のインタビューでは具体的にどのようなネットワークを構築しているのかをお聞きしてきました。澤村さんとの一問一答をお送りいたします。(太字の質問は全てMUGENLABO Magazine編集部、回答は澤村さん。敬称は略させていただいています)
BUMP好調のようですね。澤村さんって元々映像畑の方なんですか?
澤村:いや、制作については独学です。映像の業界にいたわけではなく、少し経験のある人に聞いて教えてもらったり、巻き込みながら学んできたという感じですね。
では元々は全然違う仕事をされていたのですね
澤村:そうですね、自分の好きなことに仲間と挑戦して生きていける世界を作るというビジョンがあって、以前は挑戦したい人が仲間を集められるプラットフォームを運営していました。クラウドファンディングでお金を集めて立ち上げたんですが、経営上のトラブルがあり、大きな借金を抱えることになって。サービスを運営できる状態ではなくなったので、一旦それを閉じたんです。
わ、厳しいですね
澤村:それを最初に使ってくれていたユーザーの方々にエンタメ領域の方が多かったんです。ただ、エンタメはやりたいけどご飯を食べていくのは難しい領域なので、その人たちがどこでつまずくのか、課題を知りたいと思い、YouTubeのプロデュースやミュージックビデオを作ったのがはじまりですね。
エンタメや映像はすぐに事業にならないと思いますが、開始当初はどういう仕事をされていましたか?
澤村:メインのビジネスとしては、アプリ開発をやっていました。ウェブサービスやアプリ開発で収益を上げて、クリエイターの人たちを集めてミュージックビデオの製作やコミュニティの運営、コンテストなどで短編映画作ったりすることを全部自費でやっていましたね。そうすると途中から映像の案件をもらうようになりました。
そこから徐々に映像コンテンツの制作が始まるのですね
澤村:ミュージックビデオを作るところから派生して短編映画とか作るようになって、めちゃくちゃ楽しいことに気付いたんです。純粋にお金を稼ぐとかじゃなくて、良いものを作ろうという方向にみんなエネルギーを注いで、いろんなスキルを持った人たちといろんな役割の人たちが目標に向かって作品を作っていく。まさに自分が作りたかった場所はここだと。
もっとここで頑張ってる人たちが活躍できるような場所を広げていきたいと思う一方、ドラマとか映画は作る予算がかかるのでなかなかハードルが高いです。例えば10分の映像がYouTube上で100万回再生されたらすごくヒットだと思いますが、それでも広告収益はわずかです。プラットフォームとして大きくなって、自分たちが配信社になり、他の人たちが出ていけるような場所を広げていかなきゃいけない。
ところでなぜショートに注目したのですか?
澤村:隙間時間で見れるドラマとかあったら、自分だったら見たいなと思ったんです。それで改めてショートを考えた時、マーケットとか視聴者のニーズ、欲求ベースでありそうと思えるニーズと、解決したいクリエイターの課題がマッチしたんですよね。
ショートドラマのプラットフォームを作って、動画の数を増やして収益を上げていくモデルを作れば持続的に活動できるし、ショートがヒットになったことがきっかけでさらにテレビとか映画に進出できるような場所を作れたらいいじゃないですか。やりたかったことはここで全部できると思い、BUMPをやろうと決めました。
クリエイターの方と独自の還元モデルを作られていますが、コンテンツ制作はどのようなパターンがあるのか詳しく教えていただけますか?
澤村:パターンが三つあります。まずは、うちが100%出資するパターン。例えば1作品当たり1億円と決めたら1億払って制作会社にお金を預けて、企画とか監修とかはうちがやりますが、制作の進行とか現場の仕切りとかスタッフィング、キャスティングを制作会社がやる形です。基本利益は全部うちに入りますが、制作費のコストを全部回収できた後は、一緒に作ってくださったクリエイターの方々、監督、脚本家、音楽作家、出演者、制作会社に対して、利益の何%かをレベニューシェアする仕組みを作ろうとしてます。
二つ目は共同出資です。いわゆる製作委員会方式なのですが、例えばテレビ局とかと一緒に半々で出資をして制作するパターンです。どっちの方が制作に寄与したかによって、例えばうちが制作全体を握ってる場合、制作手数料を引いて、残りを出資比率に応じてレベニューシェアするのがこのパターンです。
三つ目は完全に外部のクリエイターさんが自分で予算を持って制作していただいて、うちでは配信するだけというパターンです。これは売り上げに応じて収益の一部をレベニューシェアしていくことになっています。
最後の外部のクリエイターの方が持ち込みされる場合、コインによる課金や広告収入などがありますが、こういった収益の分配はどうされていますか?
澤村:独占と非独占でも変わります。あと既にあるコンテンツなのか、BUMPのために作っているのかで分かれています。BUMPのために作る場合は、コスト回収するまでは高く還元しています。公開してる数字でいうと、プラットフォームの手数料差し引いた残りの70%を還元し、コスト回収後は40%を還元しています。40%はマンガアプリの業界水準なんですが、あくまでも基準として置いてるだけで、変わる可能性はあります。
BUMPのプラットフォーム以外で配信されることはないですか?
澤村:自由に選択できるようにしています。マンガアプリをイメージしてもらえるとわかりやすいかなと思います。独占配信というパターンもあれば、いろんなプラットフォーム出すパターンがあって、それによってレベニューシェアの関係比率が変わります。
配信自体は無料ですか?
澤村:無料です。
BUMP以外だとどこに配信されることがありますか?
澤村:Tiktokとかですね。
他のところで見るときと、BUMPで見るときとでは体験に違いはありますか?
澤村:コンテンツのクオリティが違うのが一番だと思います。基本的TikTokとかで流れているのは3分とかでも完結するものが多いです。再現ドラマに近いですね。うちは連続ドラマを3分にしているイメージです。
配信したいクリエータの数はどれくらいいますか?
澤村:定量的に言うの難しいですが、毎日いろんな方からお問い合わせいただいててかなり増えてると思います。
ヒットするかどうかは大切なポイントじゃないですよね。一部のマンガアプリなどは事前にSNS用に簡易的に作品を作って、テストマーケティングしたりするという話も聞きますが、澤村さんたちはいかがですか?
澤村:例えば女子高生がメインのお話だと女子高生に普段の生活や悩みついてヒアリングすることとかはあります。そういったリサーチを元に脚本を考えることもあります。ただ、漫画と違ってドラマは何を作るか決めて、逆算して撮影日数、関わる人数が決まります。ショートドラマでも30人以上かかるんですよね。30人の日程を合わせるのは結構時間かかるので、SNS用にテストで作って、また来週作るみたいな簡易的な作り方はできないんですよね。
その代わり、細かくコンテンツがヒットするためのガイドラインを作っています。基本的には離脱との戦いなので、3分1話ですが、その中の冒頭30秒と最後にフックを作られるかを見ています。あと、うちは1日〜3日で撮るので、その範囲で撮ってアプリ内で出して、アプリに出したコンテンツの切り抜きとかをSNSに出して流入を作っています。最初の10話から20話の数字を見るとそれがヒットするかどうかわかるので、それを見て残りをいくらで作ってくかを決めています。
クリエイターの方の参加が今後のBUMPの魅力の鍵を握ると思いますが、どのような計画を考えていますか?
澤村:将来的には外部コンテンツの割合も9割ぐらいにしようと思っています。外部の者を増やしていきたいですが、オリジナルの中でリクープしてるとか、利益が出てる事例をこれからたくさん作っていくことが、まずファーストステップ大事かなと思っています。この1年間そこを作りに行って、それが実証できたら、多分みんなやりたがるようになると思うんです。
制作会社さんの特徴とか、やりたい方向性とかをヒアリングしながら、最適な座組を提案していっています。現在、参加を希望される制作サイドの方々はテレビ局の制作会社から、普段から何億円という予算で作ってるような会社もあれば、すごい小さい会社もありますし、個人のクリエイターもいます。数百万円から1000万円そこそこで作ったものが数億円になるとなったら、参入してくると思うので、今そこを作りにいっています。
ありがとうございました
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