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2022年03月10日

ロングテールを対象にECを民主化 - BASE 鶴岡裕太氏

KDDIはこの度「KDDI ∞ Labo」立ち上げから10周年の感謝を込めて、書籍「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」を出版することになりました。MUGENLABO Magazineでは特別に、書籍の掲載内容の一部を切り出してご紹介していきます。


はじめに

第2章では「過去10年にスタートアップが引き起こした変革」として上場、M&Aなどの形でエグジットした8社のトップが、これまでの10年にそれぞれの領域で起こした社会の変革について語ってもらいます。今回はその中でもBASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡 裕太 氏のインタビューの一部を特別にご紹介いたします。

ロングテールを対象にECを民主化

起業のきっかけ インターン経験と母の言葉から誕生

ネットショップ作成サービス「BASE」は創業当初から手掛けてきたもので、現在も収益の中心になるプロダクトですが、始めたきっかけは2つあります。1つ目は、私自身の経歴に関係します。BASEを起業する前、クラウドファンディングを運営するCAMPFIREでインターンとして働いていました。当時、CAMPFIREは決済サービスにPayPalを使っており、PayPalのようなオンライン決済の仕組みを使うことで簡単にビジネスを立ち上げられるんだと知りました。こういった経験ができたのは、インターンとして参加して、自分がコードを書けるエンジニアになっていたからです。

世間の大半は、PayPalの存在自体知らないころです。「このような便利なサービスを、あらゆる人に提供できないか、民主化できないか」と考えました。2つ目は、いろいろなところでも話していますが、故郷で小売店を営んでいる母から「ネットで商品を売ってみたい」と聞いたことです。2012年ころの当時も、ネットで物を売ることができるサービスはありましたから、いくつか勧めてみたのですが、うまく使えませんでした。考えてみれば当然で、当時のサービスはほとんどが大手企業の利用を想定したもので、自社でエンジニアやデザイナーを抱えているのが利用の前提なんです。やってみたいと思っても、「ロングテール」と言うべき個人や小規模な店舗ネットショップを持つのは簡単ではありませんでした。

インターンでの経験や母の言葉から感じた想いを融合させ、プロダクトに落とし込んだのが「BASE」です。こんなものがあったらいいなと考えて自分で開発したプロダクトで、最初から起業のためというのではありません。当時22歳でした。インターネット自体がすごく好きでしたし、コードを書くのも好きだから作ったんです。作った当初から反響がものすごくて、より安定した運用ができるように法人化しました。商品が売れた際に手数料をいただきますが、初期費用も月額費用も不要で、すぐにネットショップが開けます。ネットショップにチャレンジしたい人なら誰でも使える。最初の1年の間は、実際に使ってくださった方から、「BASE」を利用して売っている野菜などの商品や感謝の手紙が会社宛てに届くことがよくありました。

成長の軌跡初期費用不要のモデルでスタート

創業した2012年は、インターネット上で商品を売るといえば、既存の大手ショッピングモールに出店するか、自社でシステムを組んでECサイトを立ち上げるかのどちらかしかありませんでした。小規模店のネットショップを作っても売れるはずがないという考えが常識だったんです。当時、ECサービスを作るときに、中長期を見越してロングテールの人たちをターゲットに据えるというのは、非合理的な意思決定と判断されても仕方なかったと思います。「月額費用や初期費用を取らなければビジネスとして成り立たないだろう」とも言われました。

ショッピングモールが評価されたのは集客力があったからですが、「BASE」は集客には取り組みません。当時の常識とはかけ離れていましたから、出店する側からもここで売れるのかと疑問を持たれました。定量的にも定性的にも自信はありましたが、決断するに当たってはやはり勇気が必要でした。正直、やっていて身体的にも精神的にもきつかった時期もあります。

ただ、ロングテールの人たちがネットショップを作りたいのは分かっていました。プラットフォームには関係なくショップがSNSを活用して自分たちで集客できるという仮説もありました。大量生産した商品をインターネット上で売るときは、汎用的なキーワードで商品を選べる検索機能を備えたプラットフォームの方が良いでしょう。ですが「BASE」を利用するのは、自分でモノづくりやブランドづくりをしている人たちで、そういった人たちの商品は汎用的なキーワードで検索されたからといってすぐに上位に表示されるものではありません。

買ってくれるのはファンでありショップやブランドに共感してくれる人たちです。本質的に、ほかの商品との比較で選ばれるのではありません。むしろモールに出さない方が売れるのです。周囲は信じていなくても、光明は見えていました。

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
鶴岡さんが語るこれからの10年とは何かが気になりますね。
続きは書籍「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」にてご覧ください!

「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」書籍概要

次の10年で、日本が世界での競争力を再生させていくうえで不可欠となる、スタートアップと大企業による事業共創がどのような変革をもたらすのか、過去10年で日本経済に影響を与えてきたスタートアップ企業トップへのインタビューを通じて明らかにする。
更に日本を代表するベンチャーキャピタル(VC、CVC)71社への調査を実施。ESG関連企業への投資意欲について分析するとともに、VC、CVC各社が推薦する有力スタートアップ92社をリストアップ。どのようなスタートアップたちが日本経済の再生をリードしていくのか、示唆を打ち出す。

目次

  • 第1章「日本のイノベーション、これからの10年 スタートアップと大企業の共創で実現」

対談:SHOWROOM 前田裕二氏/小学館 畑中雅美氏/KDDI ∞ Labo 中馬和彦

  • 第2章「過去10年にスタートアップが引き起こした変革」

上場、M&Aなどの形でエグジットした8社のトップが、これまでの10年にそれぞれの領域で起こした社会の変革について語る
◆ソラコム 玉川憲氏
「スウィングバイIPOでグローバルIoTプラットフォームを目指す」
◆ウォンテッドリー 仲暁子氏
「仕事に夢中になれる人を増やしたい」
◆ラクスル 松本恭攝氏
「インターネットとソフトで仕組みを変え産業のムダをなくす」
◆BASE 鶴岡裕太氏
「ロングテール対象にECを民主化」
◆マネーフォワード 辻庸介氏
「FinTechはこれからが面白い」
◆ビザスク 端羽英子氏
「エキスパートネットワークサービスを日本に定着」
◆オイシックス 高島宏平氏
「ECでサステナブルな食を届ける」
◆ビジョナル 南壮一郎氏/mediba 江幡智広氏
「今の日本には伸びしろしかない」

  • 第3章「VC・CVC ESG関連スタートアップ投資動向調査」

8割超が重要テーマに挙げるが、リターンは未知数。日本のVC、CVC 71社のスタートアップへの投資方針、ESG分野の投資に対する意識などを独自調査から明らかにする

  • 第4章「ESG関連有望スタートアップス VC、CVCが選んだ92社」

ESGの視点を意識しつつ、これからの10年で日本を変える可能性のある92社の有望スタートアップを紹介

Amazon-スタートアップス 日本を再生させる答えがここにある
https://www.amazon.co.jp/dp/4296110462/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_QT0RYMWY70JF6CJA8WY9
日本のスタートアップと大企業の共創がこれからの10年を創る

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