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2022年03月09日

サステナブルで安心な食を ECで届ける - オイシックス・ラ・大地 高島宏平氏

KDDIはこの度「KDDI ∞ Labo」立ち上げから10周年の感謝を込めて、書籍「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」を出版することになりました。MUGENLABO Magazineでは特別に、書籍の掲載内容の一部を切り出してご紹介していきます。


はじめに

第2章では「過去10年にスタートアップが引き起こした変革」として上場、M&Aなどの形でエグジットした8社のトップが、これまでの10年にそれぞれの領域で起こした社会の変革について語ってもらいます。今回はその中でもオイシックス・ラ・大地 代表取締役社長 高島 宏平 氏のインタビューの一部を特別にご紹介いたします。

サステナブルで安心な食をECで届ける

起業のきっかけ成功事例がなかったからこそ挑戦

新卒で経営コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに就職しました。学生時代に起業していたのですが、マッキンゼーに入ったのは、学生時代の延長で続けているだけでは社会にインパクトを与える企業になるのは難しいと考え、経営の視点を学び、ビジネスパーソンとしての経験を積むのが目的です。学生時代からインターネットの可能性を強く感じており、どんなビジネスができるのか模索していました。日常生活に欠かせない衣食住にかかわる事業を検討する中で最終的に食に絞った理由は、この領域に問題が多かったからです。

オイシックスを創業した2000年当時は、乳製品の集団食中毒事故で日本中が揺れていた時期でもあります。全国各地に小売店があり、商品があふれているにもかかわらず、消費者は食に関する不安を感じていました。一方で生産者は、良い食材を作っても経済的に報われない状況が続いていました。多くの消費者に良さが伝わっていないのが原因です。ここはインターネットの出番ではないかと考え、ネット先進国の米国などのサービスを調べたのですが「食品×EC」の分野は一つも成功例がありませんでした。それなら自分が、食品×ECで社会課題を解決するために挑戦しようと思ったのが起業のきっかけです。

最初に選んだ道で認めてもらうしかなかった

起業前は経営コンサルタントでしたから、海外の事例を日常的に紹介していました。コンサルティングでは確率の高い方法をお薦めするために成功事例を探しますが、不思議なもので、自分で始める際には過去に成功事例がないからこそ闘志がわいたのです。しかし簡単には成功しない事業だったのも事実で、起業してから4年は赤字で、本当に苦労しました。当初、資金を投入して人員をそろえ、大々的な設立記者会見を開いたものの、その後はほとんど注文が来ない日々が続きました。数少ない注文の処理業務をみんなで取り合うといった、今となっては笑い話のようなエピソードもあります。

仕入先である生産者のみなさんとの関係づくりでも厳しさを思い知らされました。向こうから見れば我々はどこの馬の骨かもわからない集団で、いくらお金を積んだところでこだわりをもって作った食材を売ってもらえません。地道に何度も顔を出して、少しずつ同情に近い形で信頼関係を構築してきました。最も辛かったのは、設立2年目に経験した委託先の配送センターが急きょ倒産したことです。夜中に倉庫に出向いて、預けていた食材を運び出し、新しい配送センターでの配送業務を社員全員でやって何とか乗り越えました。いまの時代と資金調達環境が異なるのも苦戦した要因です。起業の直前にITバブルが崩壊したこともあり、BotCのネット販売というだけで敬遠されるムードがありました。

うまく行かなければ普通はピボットします。2000年代前半の当社は、ピボットしている間に資金が尽きる状況でした。自らが決めた道で周囲に認めてもらって資金を調達する以外、生き延びる方法がなかったのです。ただ手応えは最初からありました。購入されたお客様が数えるほどしかいない時からリピート率が非常に高かったのです。安心できる食をECで購入するサービスには需要があると確信しました。

成長の軌跡一つひとつ課題を解いて黒字に

5年目に黒字化しました。特別なことがあったわけではなく、ビジネスモデルを構築する上で大量の課題があり、それを一つひとつ解いていった結果です。課題に大小は関係なく、すべてに対応しないと黒字化できない難しい事業だったのでしょう。本当に雑巾を絞るような思いもしました。もともと分かっているものだけでなく、事業が進むにつれて別の課題が明らかになります。例えば輸送中に割れる卵の数をどう減らすのかなんて、起業前には想像もしていませんでした。最初は野菜20品目から始めて、商品数、商品カテゴリーを増やすたびに問題が増えた感じです。当社の事業にとって物流は重要ですから、配送センターをどう構築するか決定し、そのための資金をどう調達するかなどは大きな課題だったと言えるでしょう。

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
高島さんが語るこれからの10年とは何かが気になりますね。
続きは書籍「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」にてご覧ください!

「スタートアップス -日本を再生させる答えがここにある-」書籍概要

次の10年で、日本が世界での競争力を再生させていくうえで不可欠となる、スタートアップと大企業による事業共創がどのような変革をもたらすのか、過去10年で日本経済に影響を与えてきたスタートアップ企業トップへのインタビューを通じて明らかにする。
更に日本を代表するベンチャーキャピタル(VC、CVC)71社への調査を実施。ESG関連企業への投資意欲について分析するとともに、VC、CVC各社が推薦する有力スタートアップ92社をリストアップ。どのようなスタートアップたちが日本経済の再生をリードしていくのか、示唆を打ち出す。

目次

  • 第1章「日本のイノベーション、これからの10年 スタートアップと大企業の共創で実現」

対談:SHOWROOM 前田裕二氏/小学館 畑中雅美氏/KDDI ∞ Labo 中馬和彦

  • 第2章「過去10年にスタートアップが引き起こした変革」

上場、M&Aなどの形でエグジットした8社のトップが、これまでの10年にそれぞれの領域で起こした社会の変革について語る
◆ソラコム 玉川憲氏
「スウィングバイIPOでグローバルIoTプラットフォームを目指す」
◆ウォンテッドリー 仲暁子氏
「仕事に夢中になれる人を増やしたい」
◆ラクスル 松本恭攝氏
「インターネットとソフトで仕組みを変え産業のムダをなくす」
◆BASE 鶴岡裕太氏
「ロングテール対象にECを民主化」
◆マネーフォワード 辻庸介氏
「FinTechはこれからが面白い」
◆ビザスク 端羽英子氏
「エキスパートネットワークサービスを日本に定着」
◆オイシックス 高島宏平氏
「ECでサステナブルな食を届ける」
◆ビジョナル 南壮一郎氏/mediba 江幡智広氏
「今の日本には伸びしろしかない」

  • 第3章「VC・CVC ESG関連スタートアップ投資動向調査」

8割超が重要テーマに挙げるが、リターンは未知数。日本のVC、CVC 71社のスタートアップへの投資方針、ESG分野の投資に対する意識などを独自調査から明らかにする

  • 第4章「ESG関連有望スタートアップス VC、CVCが選んだ92社」

ESGの視点を意識しつつ、これからの10年で日本を変える可能性のある92社の有望スタートアップを紹介

Amazon-スタートアップス 日本を再生させる答えがここにある
https://www.amazon.co.jp/dp/4296110462/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_QT0RYMWY70JF6CJA8WY9
日本のスタートアップと大企業の共創がこれからの10年を創る

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