
2026年09月09日
世界市場への挑戦が始まる。KDDI Beyond Borders Accelerator始動、5社がサンフランシスコへ
日本の有望なスタートアップがグローバルな舞台へ羽ばたくための新たな挑戦が始まった。KDDIは、イノベーションの聖地サンフランシスコにて「KDDI Beyond Borders Acceleratorキックオフイベント」を開催。B2B AIスタートアップ5社が現地に集結し、シリコンバレーの投資家や大手企業パートナーを前に熱いピッチを繰り広げた。
当日の会場には、米国現地VC、大手事業会社、スタートアップ関係者などあわせて100名以上が来場し、満員御礼の盛況となった。さらに、KDDI代表取締役社長CEOの松田浩路氏に加え、会長の高橋誠氏も現地へ同行。
KDDIグループとしての並々ならぬコミットメントとグローバル共創への熱意を強力にアピールした。熱気溢れるイベントの模様をレポートする。
目次
「挑戦者としてのDNA」とグローバル支援への決意
イベントの幕開けとして、KDDIオープンイノベーション推進本部グループリーダーの清水氏の呼びかけに応え、KDDI代表取締役社長CEOの松田氏が登壇。サンフランシスコのスタートアップコミュニティに向け、KDDIの歴史と本プログラムにかける情熱を語った。
KDDI 代表取締役社長 CEO 松田 浩路 氏
「大企業となっても、私たちの心は挑戦者のまま」KDDIは今でこそ何千万人もの生活を支え、数万社の企業パートナーを抱える大手通信・テクノロジー企業だが、その原点は40年以上前に稲盛和夫が創立した一社の挑戦的なスタートアップに遡る。
「テクノロジーで人々の生活をより良くする」という創業精神は、今もKDDIのDNAとして脈々と受け継がれている。
過去15年間、KDDI Open Innovation Fundを通じて170社以上のスタートアップへ投資し、40件以上のM&Aと15件以上のIPOを支援してきた。しかし、KDDIが最も誇りに思っているのは数字そのものではなく、日本のスタートアップ経営者から「9年連続で最もイノベーティブな大企業パートナー」に選ばれ続けているという事実である。
会場の様子
資金支援を超えた「アセットの全開放」と双方向のグローバル展開
KDDIの強みは資金提供にとどまらない。全国の通信ネットワーク、膨大な顧客基盤、専門人財、そして100社を超える大手パートナー企業との共創ネットワークをスタートアップへ開放している。
例えば、米ドローン大手のSkydioとの連携では、KDDIのネットワークとローソンの店舗網を融合させ、日本全国をカバーする防犯・防災用ドローンプラットフォームを構築した。
そして今回、KDDIはそのエコシステムを「日本から世界へ」と逆方向にも拡張させる。
KDDI代表取締役社長CEO松田氏は「本日立ち上げる『KDDI Beyond Borders Accelerator』は、ポテンシャルの高い日本のスタートアップが北米で真の事業基盤を築くための強力なエンジンであり、単なる視察や交流ではなく、現地の顧客獲得やパートナーシップといった『実質的な成果』を届けるため、我々は全力で創業者の伴走を務める。」と述べた。
スピーチの終盤には、KDDIのスタートアップ投資の礎を築いた会長の髙橋誠氏も紹介され、最高経営幹部ふたりが揃って現地に駆けつけた姿に、会場からは惜しみない拍手と大きな歓声が送られた。
100社超の応募から選ばれた5社が目指す「実効的トラクション」
今回始動した「KDDI Beyond Borders Accelerator」には、日本全国の有望なスタートアップから選出されたのが、グローバル市場で戦えるプロダクトと技術力を持つB2B AIスタートアップ5社である。
本イベントを皮切りに、5社はサンフランシスコをはじめとする北米市場での超実践型プログラムへと突入する。本プログラムが掲げる明確なゴールは、単なるネットワーク作りや面談ではなく、「具体的な顧客獲得、パートナーシップ締結、資金調達に繋がる真のトラクションの獲得」である。
KDDIの米国現地法人 KDDI Americaをはじめ、KDDIのグローバルネットワークやシリコンバレー現地のエコシステムを結集し、創業者の事業拡大をハンズオンで強力にバックアップする。
世界を塗り替える日本のB2B AIスタートアップ5社
続いて行われたピッチセッションでは、登壇した5社の創業者たちが、自社の革新的なテクノロジー、ビジネスモデル、そして北米市場への参入戦略を力強くアピールした。
以下、今回採択された5社のスタートアップをご紹介。
- AironWorks
- Findy
- LR
- MODE
- Outerport
登壇者: 共同創業者 兼 CEO 寺田 彼日 氏
現代のサイバー攻撃の62%は、システムではなく「人間」の隙を突いたソーシャルエンジニアリングに起因する。AironWorksは、イスラエル国防軍のエリート情報部隊「Unit8200」出身者らが結集して開発した、AI型サイバーセキュリティ・トレーニングプラットフォームを展開。
Webやダークウェブ上の脅威情報をリアルタイムでスキャンし、組織や個人の文脈に合わせた高度な疑似攻撃・教育プログラムを自動生成する。すでに20カ国・400社・70万人以上のユーザーに導入されており、将来的には人間だけでなく、今後爆発的に普及する「AIエージェント」を狙ったサイバー攻撃の防衛基盤となる世界標準プラットフォームを目指している。
共同創業者 兼 CEO 寺田 彼日 氏
登壇者: CEO 山田 裕一朗 氏
日本においてITエンジニアの採用・生産性向上プラットフォームでトップシェアを誇るFindy。年商3,300万ドル(昨対比40%増)と急成長を遂げる同社が、グローバル市場を見据えて新たにリリースしたのが「Findy AI+」である。
生成AIの普及に伴い、企業におけるAIトークン利用量・コストは爆発的に増加しているが、投資対効果の測定は困難を極めている。Findy AI+は、チームや個人単位でAI支出をトラッキングし、AI活用のコストが最適化されているか、開発成果に貢献しているかを可視化。企業が自信を持ってAI投資を推進できる環境を整える。
CEO 山田 裕一朗 氏
登壇者: CEO 路 承融 氏
AdTech業界で長年エンジニアや責任者を務めてきた創業者路氏が挑むのは、「AIによって生成されたドキュメントや社内アプリなどの成果物を、安全な環境で管理・活用できるサービス」の構築である。
従来、社内ダッシュボードや業務ツールの開発には複数人のエンジニアチームが必要だった。しかし、ChatGPTをはじめとする生成AIの普及により、個人でも短時間でアプリケーションやドキュメントを作成できる時代となった。
一方で、こうして生み出された無数のツールやドキュメントを、セキュリティを担保しながら組織内で展開・運用する仕組みは十分に整備されていない。LRは、AIによって生成されたアプリケーションやドキュメントとデータを連携・管理するための基盤を提供し、組織全体での安全なAI活用を実現する。
CEO 路 承融 氏
登壇者: 共同創業者 兼 CEO 上田 学 氏
シリコンバレーで25年のキャリアを持つ上田氏率いるMODEは、建設、製造、物流、インフラ維持管理といった「物理的な現場(リアルワールド)」へのAI適用に特化したデータプラットフォームである。
オフィスワークでAI化が進む一方、過酷な現場作業にはAIの導入が遅れている。MODEは、建設機械や各種センサー、異機種カメラ、さらには20年以上前のレガシー機器から吐き出されるデータに加え、紙の作業計画書や報告書などのテキストデータまでも統合。現場の映像データと計画書を解析し、マネージャー向けの報告書を自動生成するような「現場特化型AIワークフロー」を実現している。日本国内で既に900箇所以上の現場を監視する実績を提げて、北米の現場革新に挑む。
共同創業者 兼 CEO 上田 学 氏
登壇者: CEO 瀧川 永遠希 氏
データセンターや大型工場を動かす産業機械・プラント向けの電気・制御・配管システム(配線図、単線結線図、PLCプログラム等)の設計は、何千ページものドキュメントが異なるツールや企業間で複雑に絡み合い、仕様変更による膨大な手戻りや遅延、巨大なコストオーバーランが常態化している。
Outerportは、これらの産業制御システムを「ソフトウェアコード」と同じ構造として捉える革新的なアプローチを採用。
同一の設計モデルからCAD図面の自動生成、設計ルールチェック、シミュレーション検証を一貫して実行できる。すでにグローバルな産業リーダー企業との検証を進めており、設計期間の大幅な短縮と複雑な設備設計の自動化を推し進めている。
CEO 瀧川 永遠希 氏
「Match-up」の想いを乗せて、次なるステージへ
熱気あふれるピッチセッションの終了後は、会場内外のオープンスペースにて登壇した創業者、現地の投資家、大手企業幹部らによる活発なネットワーキングが行われた。スタートアップ各社の代表は、現地企業やVC、そしてKDDI上層部と直接意見を交わし、2時間近くにわたり会話が途切れることがなかった。
会場からは、本取り組みに対し、「米国現地で、ここまで日本人が主導して質の高いプレイヤーが集まっているイベントは実に稀であり、非常に素晴らしい試みである」「大手の事業会社が多数参加してくれたおかげで、イベント終了後も具体的な商談に数多く繋がっている。」といった高い評価と手応えを示す声が相次いだ。
イベントの締めくくりには、参加者へのお土産として日本の伝統的な抹茶が手渡された。このギフトには、本プログラムを通じて創業者・パートナー・投資家の間に素晴らしい「Match-up(最高の出会いとマッチング)」が生まれるようにという温かい願いが込められている。
ネットワーキングの様子
「KDDI Beyond Borders Accelerator」の挑戦は、まだ始まったばかりだ。サンフランシスコでの集中プログラムを経て、5社のスタートアップはどのような進化を遂げるのか。
飛躍的な成果発表に、期待が高まる。