Demo Chinaとは

Demo Chinaは中国で最大のベンチャーキャピタル業界のイベントの一つです。有名投資機関同士のコミュニケーションの場でもあり、スタートアップ企業が自社のサービスをピッチできるデモの場でもあります。2016年以降、Demo Chinaに応募したスタートアップ企業の総数は4万社を超え、その内3000社がDemo Chinaに参加し、このイベントを通じて100億元の資金調達が実現しました。

今年のDemo Chinaは9月7日から9月8日まで中国江蘇省无锡市で行われました。今回のピッチセクションに応募したスタートアップは1400社を超え、予選を勝ち抜き現場に来られたのは50社。完全招待制のため、投資家側はトップVCと大手CVCのみが参加しており、今回はsequoia、Qualcomm Ventures、Lenovo CVCを含め、120名の投資家が参加しました。

主催するCYZONEについて

Demo Chinaの主催者であるCYZONE社は中国最大のベンチャーキャピタルとスタートアップ向けのメディア運営企業であり、同社のSNSは2千万人のフォロワー数がいます。

イベントの様子

今回のDemo Chinaでは以下五つのバーティカル・業界に会場が分かれており、それぞれの会場でピッチコンテストと投資関係者によるフォーラムが行われました。

1. New Business Session + Open Day
   今年で3回目となるCYZONEとHP（Hewlett Packard）が主催するNew Business Sessionには、テクノロジー分野の優良スタートアップが多く集まり、最終的に9社のスタートアップがピッチを行いました。
2. コミュニティマーケティング革新特別セッション
   有名ブランドの幹部、マーケティングの専門家、シンクタンク、投資界のゲストを招いて、ブランドの影響力を築くための重要な要素をテーマにしたピッチコンテスト及びパネルディスカッションが行われました。また、「CYZONE × Xi Ping Media - 2022年コミュニティマーケティング業界調査報告書」の発表や、「Starfire Awards」（影響力のあるコミュニティマーケティングブランドTOP50、コミュニティマーケティング事例TOP10）の発表などが行われました。
3. 海外進出セッション
   シンガポールの新しいインターネットベースの総合会計事務所「GO GLOBAL GEM」とCYZONE共同で海外進出に関する特別セッションが設けられ、海外進出を目論む企業家のピッチコンテストが行われました。私達KDDI Open Innovation Fund のメンバーもこのセッションのピッチにジャッジとして参加しました。また、meta社などのグローバルプラットフォームによるプレゼンテーション、中国企業の海外進出における現地化戦略、先進的手法、地域選択等についての討論が行われました。
4. 医療セッション
   業界全体の投資活動が大きく減少している2022年上半期においても、ヘルスケアは投資額上位3位にランクインしています。 今年のDEMO CHINAに登壇したヘルスケア分野の起業家たちは、現在の市場環境における資金調達や商品化の面の課題について討論しました。
5. デジタルインテリジェンスセッション
   デジタルインテリジェンス分野の起業家と投資家が集まり、deeptechを主なテーマとして、長期的な投資と現状の課題についてディスカッションしました。

決勝戦の様子

上記五つの各セッションでのピッチを勝ち抜いた企業による最終決戦が行われました。各会場の1位企業は無条件で最数決戦でのピッチ機会が与えられます。また各セッション二位の企業は分会場で30秒を与えられ、30秒間のピッチで審査員の半数以上に認められる（通過ボタンが押される）と、最終決戦の正式会場で登壇ができるという仕組みになっており、本会場でピッチを行った企業の中から審査員の採点により優勝が決定されます。

決勝戦に登壇した主な企業

1. 千顧科技
   電気自動車やスマートコネクテッドカーのワイヤー制御モーションやワイヤー制御ステアリングなど、次世代シャーシのキーコンポーネントとシステムインテグレーションを提供しています。今年のDemo Chinaの総合得点で優勝を果たしました。
2. Bear Sunny（伯宇科技）
   Bear Sunnyが開発した新しいCNC変色レンズは、自動的に環境に合わせて変色を可能にし、可視光、赤外線、紫外線を効果的にフィルタリングし、グレアダメージを低減し、耐衝撃性、耐食性、防曇性などの特性を有しています。製品は、主にAR CNC変色レンズ、スマート変色サングラス、変色ディスプレイバックプレート、変色バイザー、変色センターコントロールスクリーンなど、家電製品や自動車などの分野で使用されています。
3. KataWorld
   KataWorldブランドは、DIYのウェアラブルアートプロダクトであり、自分でデザインしたモジュールを自由に組み合わせる事でユーザ独自のデザイナートイを作るプラットフォームを提供しています。
4. Zenobiotech（芝诺科技）
   2020年に設立された革新的なバイオテック企業で、合成生物学、発酵工学技術を用いて高付加価値天然物の開発に取り組み、母乳オリゴ糖(HMO)や新しい微生物色素の研究に力を注いでいます。
5. Ziwi Technology（紫蔚科技）
   越境EコマースのカスタマイズPOD分野で、新しいカスタマイズエコシステムを構築することを目ざす革新的なインターネットテクノロジー企業です。SDSという中国国内カスタマイズセレクションプラットフォームとBigolloという海外ソーシャルインターネットカスタマイズeコマースプラットフォームを構築し、S2B2Cモデルでワンストップでサービスを提供しています。
6. Foodvio（花花食界）
   中国で初めて西洋料理のレトルト食品にフォーカスし、B2Bで販売する会社です。2022年初に北京で設立され、Foodvioは3カ月で35品目を開発しました。そのまま食べられるインスタント食品から簡単な加熱で完成する調理済みの食品等も取り扱っています。サプライチェーンを重視し、原材料を海外調達し、本格的な味付けを再現する事を目指しています。

海外進出セッションの二位企業

30秒間のPRチャンスは突破できず、惜しくも最終決戦に挑戦することができませんでしたが、個人的に可能性のある事業と感じたので、ご紹介します。

KIRI Engine
KIRI Engineはコンシューマー向けの3Dスキャンサービスを提供するスマホアプリを提供しています。3Dモデルを作りたい場合スマホのカメラで20数枚の写真を撮るだけで、３分間で色だけではなく、材質まで再現できる3Dモデルが作成されます。ゲームや、CG映画やAR・VRに広く使われています。最低レベルのコストで3Dスキャンツール提供しているため、現在15万のユーザを抱えています。

最後に

今回はDemo China 2022についてお届けしました。中国では多くのVCフォーラムやテックカンファレンスが行われていますが、Demo Chinaほどの規模のものは少なく、参加意義の大きいものでした。
また中国のVC業界においては他国以上にコミュニティーに参加していることが本当に重要となります。良い投資案件は有力VCの間のみで情報が流通しているケースも多く、こういったイベント参加は、良い企業の発見機会であると同時に何よりも良いネットワーキング機会になります。今後も中国から現地イベントのトレンドレポートを皆様にお届けいたします！