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2022年09月05日

大規模な都市封鎖 上海ロックダウンの中で活用されたテクノロジー ーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundの中国上海拠点では、中国のスタートアップへの投資、共同事業の開発を行なっています。今回は、日本でも大きな話題となった上海のロックダウンについて、テクノロジーの観点からレポートします。


笠井 道彦KDDI中国
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドの中国 上海拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。

2か月間に渡るロックダウン その中で活用されたテクノロジー

上海では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い3月末~5月末まで約2か月間に渡るロックダウンが行われました。外出は厳しく制限され、企業の活動やサプライチェーンにも大きな影響がありました。一時期は日本のニュースでも多く報道されていたかと思います。

都市全体の封鎖は解除されたものの、現在も公共交通機関の利用や商業施設等への入館には72時間以内のPCR検査陰性が必要ですし、感染者が出た区域は2週間封鎖されることになるなど、日常生活への影響は続いています。

このようなロックダウンの中、様々な場所でテクノロジーが活用され、スタートアップのプロダクトが活用される場面も見られました。今回はその観点でいくつかの事例をご紹介したいと思います。

キャンパスや隔離施設でも 無人配送ロボット

中国では既に多くの場所でサービスロボットが商用活用されていますが今回のロックダウンにおいても多くの場所で稼働する事例が見られました。ロックダウン期間中は大量の感染者及び濃厚接触者を隔離、治療するための方舱と呼ばれる施設が複数設置されましたが、この施設の中で物資、食糧の配送等にスタートアップのロボットが活用されました。


食料配送するロボット

同様に、規模の大きな居住コミュニティ、寮を含む大学のキャンパス内の屋外配送や、大手物流、コマース企業のラストワンマイルにおいて無人配送車が導入され、物流の非接触化が追及されました。

食糧調達を支えた コミュニティコマース

上海を始めとする中国の大都市においてはフード・グローサリーのデリバリーやネットスーパーの普及が非常に進んでおり、日常の買い物はほとんどオンラインで済ませ、スーパーなどの実店舗に行くことはほとんどないという人も少なくはありません。そのような状況の中、ロックダウン中は通常のネットスーパーで商品を購入することが困難となり、外出も出来ないため食糧等の調達に窮することになりました。

この際に多く活用されたのが「快団団」などのコミュニティコマースサービスでした。これは近隣の地域やマンションごとに中心となるユーザが購入者を集め、一定数が集まるとメーカーや店舗から特別料金で商品を購入出来たり、販売手数料を得ることが出来るサービスであり、コロナ以前から提供されていました。

一時ブームとなったものの最近はどちらかと言えばあまり活発には利用されていなかったサービスでしたが、ロックダウン環境下では有効な食糧調達手段となり、非常に多く利用されました。今後再度一般的なコマースサービスとして定着するかどうかは注目されます。


コミュニティコマース「快団団」

継続的なPCR検査とデータ管理

ロックダウンが終わった現在も公共交通機関の利用や商店等含む多くの場所の利用においては72時間以内のPCR検査陰性証明が必要となります。これらは各自のスマートフォンにインストールされたアプリ上に表示されるQRコードベースで管理されています。

小規模な個店等を含むほぼ全ての商業施設等の入り口にQRコードが設置され、アプリからコードを読みこむと感染リスクを示す自身のコード、読み込んだQRコードに紐づく現在の場所、PCR検査結果(陰性結果から何時間経過しているか)が表示される仕組みです。ほんのわずかな期間でPCR検査施設及び各場所へのQRコード設置、対応するアプリの開発を行うスピード感には驚かされます。

コロナ禍が後押しする?テクノロジーの社会実装

ロックダウンについては様々な側面がありますが、ロボットなどの民間企業のプロダクトの採用、活用の速さには驚かされる面があります。以前のレポートでも触れましたが、こういった必要に迫られた状況での新規技術、プロダクトの活用は、スタートアップに実地での活用事例とリアルなデータ、利用者のフィードバックをもたらし、その後の事業展開を加速させている側面もあるのではないかと思います。

コロナ禍ではビデオ会議などリモートワークを可能とするサービスの多くが一般化しましたが、中国においてはロボット、自動運転等の社会実装も後押しされているのではないかと感じます。また、アプリのコードを通じた感染状況の管理などは、プライバシー等の考え方は勿論他国とは大きく異なるものの、政策の発表と同時にアプリに機能が実装されてアップデートされるなどスピード感については目を見張るものがあります。

最後に

今回は、ロックダウンについて、テクノロジーやサービス活用の観点からレポートさせていただきました。ロックダウンの終了から数か月、上海はようやくビジネスも動き出し、賑わいも徐々に取り戻しつつあります。まだまだ自由な移動とはいかない面もありますが、今後も中国のテクノロジーとその社会実装について注目していきたいと思います。

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