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2022年04月22日

海外トレンドレポート 「数年後の未来をうらなう?中国のサービスロボット

KDDI Open Innovation Fundの中国上海拠点では、中国のスタートアップへの投資、共同事業の開発を行なっています。今回のレポートでは、中国で社会実装が進むサービスロボットについてレポートします。


笠井 道彦KDDI中国
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドの中国 上海拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。

生活に溶け込むロボット

昨年上海に来て以降、私が最初に興奮を覚えたのが様々な場所で稼働するロボットでした。オフィスビルや商業施設等一般的な生活環境の中で稼働しており、日常生活の中で目にすることも決して珍しくはありません。身の回りで稼働するロボットをいくつかご紹介したいと思います。

出勤したオフィスでまず良く見かけるのは高仙机器人(Gaussian Robotics)が提供する清掃ロボットです。1フロアの清掃が終わるとエレベータに乗り込み、別の階に移動して清掃を行っています。


清掃ロボット

また、フードデリバリーが非常に普及している中国では、お昼頃になるとオフィスにも大量のデリバリーが到着します。これらの商品を各オフィスまで運ぶのはオフィスビル内で稼働する有个机器人 (YOGO ROBOT)が提供する配送ロボットです。多くの人が行きかうなかでもスムーズにエントランスゲートを通過し、エレベータに乗って各オフィスまで配送します。


無人コンビニカー

屋外では、オフィス街を巡回する新石器慧通(北京)科技 (NEOLIX)が提供する無人のコンビニカーを見かけます。車体に食品、お弁当等が積まれており、利用者はQRコードを読み込んで購入します。


配送ロボット

休みの日に街に出ると、ジュースやカフェラテ、料理などを作るロボットがあったり、カラオケ店などで部屋に客を案内したり、注文したドリンクや食品の配送を行うロボットも見かけます。


料理ロボット


案内ロボット

もちろん中には有用性や費用対効果が本当にあるんだろうかと感じるような実験的なプロダクトもあり、今後取捨選択も進む可能性がありますが、多くの製品が実社会の中で商用稼働し、具体的な実装の中で競争する市場環境にあると言えます。

成長を支える投資と政策

ロボット分野はスタートアップ投資の領域としても投資家の注意を引き付けています。2021年には、中国のロボット分野の企業への投資は日本円で1兆円を超える規模となりました。2021年の日本の全業種におけるスタートアップ投資の総額が約0.8兆円であることと比較するとその規模の大きさが分かります。

また、政策もこの普及を後押ししています。2021年に中国政府は今後5カ年のロボット産業の発展計画を発表しました。この中では、2025年までに世界最先端の技術水準を達成すると共に、同分野において年率20%以上の売上成長を実現することが目標として掲げられています。従来中国は製造インフラである産業用ロボットの輸入国でしたが、これらの内製化が進められると共に、新しく生まれつつあるサービスロボットの分野では世界をリードしつつあります。

コロナ禍が後押しした実用化

このようなサービスロボットの開発進展と普及には、やはりコロナ禍も一つの要因となったように思われます。中国では、新型コロナウイルスのパンデミック初期の段階から、治療や隔離の現場での接触リスクを減らすためロボットが積極的に活用されました。病院内の物資の配送、消毒、隔離施設内の食品配送その他にもロボットが活用され、現在ではレストラン内の配膳、ホテル内の配送等の各分野でリーディングカンパニーとなっているロボット開発スタートアップ各社も病院等へのロボット提供を行ったそうです。極めて限られた環境で行われる実証実験とは異なり、必要に迫られた実際の現場での稼働は多くのデータと知見をもたらし、開発と普及を早めたのではないでしょうか。

これに近いことは自動運転の分野でも起こっているように思います。中国ではコロナウイルスの感染状況に応じて都市レベルのロックダウンが断続的に行われていますが、感染者が多い地域への物資輸送には自動運転の無人トラックが活用される事例もしばしば見られます。こういった車両には自動運転技術を開発するスタートアップの技術が活用されており、このような実現場での活用は、将来的な同分野の技術・事業の発展を大きく後押しすることになるかもしれません。

最後に

笠井笠井
今回は、中国におけるサービスロボット活用の状況についてレポートさせていただきました。少子高齢化、労働力の不足を背景に日本でもロボット活用のニーズは高まっており、多くの実証実験等が行われていますが、一足早く商用での活用が進む中国の状況は、数年後の日本社会での活用状況をうらなうものになるかもしれません。単純にロボットが稼働するだけではなく、ロボット同士が連携したり、自動販売機やロッカーと連動する等の事例も生まれており、今後も動向に注目していきたいと思います。

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