- インタビュー
2023年06月20日
仮想都市での交流とクリエイティビティの融合を目指すαU metaverseーKDDI川本氏、齊藤氏、松村氏、矢島氏【αUインタビューVol.6】
“メタバースで都市を再現、音楽ライブに参加、新しい友人との出会い”これがαU metaverseが提供する全く新しいエンターテインメント体験です。バーチャル空間でのコミュニティ作りからクリエイティブな表現まで、一人ひとりが自由に探求と創造に参加できる世界を目指すαU metaverse。新しいエンターテイメントの楽しみ方、メタバース体験はどのようなものになるのでしょうか?αUの中の人にインタビューするシリーズ、今回はαU metaverseを担当している、KDDI株式会社 事業創造本部 Web3推進部の担当者4名にお話を伺ってきました。
αU metaverseは、社内で2つのグループに分かれていると聞きました。それぞれの役割の違いを教えていただけますでしょうか。
松村:αU metaverseの事業は2つのグループで推進しています。私のグループはαU metaverseのプロダクト開発と一般のお客様向けのサービスのご提供を担当しており、矢島さんのグループでは開発したプロダクトを活用し、パートナーと協力して新たな施策を生み出したり、パートナーがメタバースを活用したいと考える事業に対してアライアンスを組んだりしています。
αU metaverseは、渋谷や大阪の街並みが再現されたバーチャル空間の中で、音楽ライブやボイスチャットのような形でコミュニケーションが楽しめるサービスですよね?
松村:はい、その通りです。少し補足させていただくと、まずαU metaverseは、SNSの発展系みたいな捉え方をしていただければと思っています。3DCGで表現されたメタバースの中で、音楽ライブやイベントに参加することができますが、それだけではなく、自分と嗜好や趣味が合う友達とコミュニケーションとりながら、バーチャル空間で体験を共有、享受しあうことができます。
そしてもう一つは、従来型のSNSやプラットフォームでは提供されるデジタルコンテンツや資産はサービスに帰属するという考え方が一般的でした。当社は、特定のサービスやプラットフォームに帰属しない、個人のウォレットにコンテンツや資産を格納できるようにしていく構想を持っています。これにより、プラットフォームを越えて交換したり売買したりができるという特性を持つことになります。
ユーザーはNFTアイテムとして所持できる
メタバース分野における他社との連携、例えば、KDDIも出資しているクラスターのようなスタートアップとの連携については、どうお考えですか?
矢島:不動産業界、自動車業界、放送局、出版社などから多くの引き合いをいただいていて、各パートナーに対して、αU metaverseだけではなく、αUとして何が提供できるのかも含め複合的にお話していこうと思っています。
齊藤:クラスターさんとはまだPoCレベルではあるのですが、αU metaverseで作ったアバターをclusterに持っていくことができるというトライアルを昨年やらせていただきました。
松村:(メタバースの)相互接続、つまり他社様の運営する様々なメタバースと連携していこうと考えており、クラスターさんとの取り組みはその構想に向けた取り組みの一つです。アバターを起点に自分を表現して、いろんなメタバースを渡り歩いていけるという体験を目指しており、そのために相互接続を意識しています。
街へ出て音声コミュニケーション
αU metaverseは、「バーチャル渋谷」から始まったものだと認識していますが、これまでの背景や経緯を教えていただけますか?
川本:元々は渋谷とのプロジェクトで始まったものです。2019年からFDS(渋谷未来デザイン)と観光協会さんも一緒に都市体験を拡張するということで、いろんな取り組みをしてきました。
当初は街を訪れた方へのサービスなどを提供していました。しかし、その中でコロナ禍になってしまい、緊急事態宣言が出て、外出自粛となりました。それで、渋谷に行けないんだったら、家から仮想的な渋谷にアクセスできればいいんじゃないかというアイディアで作ったのがバーチャル渋谷です。
バーチャル渋谷、その後のバーチャル大阪といろいろ取り組みをしてきました。イベントなど1対nにコンテンツを届けるのにはクラスターさんのプラットフォームはすごく適していると思っています。一方で、よりユーザー同士のコミュニケーションを活性化させたり、ユーザー自身が空間の中で自由に発信できるようになったりできたら、という思いもありました。
つまり、よりn対nのコミュニケーションができるSNSの進化系で、かつオープンメタバースを作るためにαU metaverseを作っています。オープンメタバースというのは当初から想定していたもので、全てをαU metaverseに寄せようとするわけではなく、各プラットフォームが得意とする領域を活かし、連携してメタバースの体験をより良いものにしていこうという考え方です。そういったお互いに補い合って、連携できるところは連携してサービスを提供していこうという方針を打ち出しているのが、大きな特徴かなと思っています。
バーチャル渋谷ハロウィーンフェス
前身のVCから今回αU metaverseになったところのアップデートのポイントがあれば教えていただけますでしょうか?
川本:先行体験版としてVCというアプリがありました。中身はそこまでアップデートしていないのですが、オープンメタバースに向けて取り組んでいこうというメッセージや、Web3文脈でαUが提供する他のサービス「αU wallet」や「αU market」との結びつきを世に示すため、名前を一気に変えました。
αU metaverseが、ウォレットや他サービスとの連携を通じてできることをもう少し伺いたいです。ユーザー体験はどう変わるのかでしょうか。
松村:メタバースの空間で人々が集まりコミュニティが活性化すると、リアルの世界でのファッションと同じように、自分を表現するニーズが高まると考えています。IPをお持ちの会社様やアパレル会社様といった色々なパートナー様と連携し、αU marketで商品やキャラクターをアバターパーツにして販売するなどしてメタバースと連携していくといった取り組みを実現していきたいです。
外部パートナーとの連携は各社それぞれ役割が違うと思うのですが、Pocket RD さんとの連携では、どのようなことをされているのですか。
川本:はい。出資先として、2022年頃から一緒に取り組んでいます。彼らはアバター技術だけでなく、ブロックチェーン関連の技術や特許をお持ちでいらっしゃいます。オープンメタバースにおける相互運用性は、業界全体で議論され始めていますが、そのために重要な技術をお持ちのパートナー様です。今回のαU metaverseにおいても、アバターを作る部分はPocket RD さんのi avaterエンジンを使用しています。
加えて、オープンメタバースを実現する上で重要になるブロックチェーン・NFTの領域では、Pocket RDさんのDigital Dubleエンジンを活用してαU marketなども一緒に作っており、αU全体を支える重要なパートナーになっています。
川本:KDDIが1社で企画して、全ての費用を出してやるということは今までしたことがありません。その代わりに、いろんなパートナーさんの強みを相互で生かしあいながら、コンテンツも作り、開発もするという形を信条としています。
今回カヤックさんに関しては、VRのプロデュース作品などを手がけた実績を持つ天野さんを招き入れて、より良いものを作りたいという考えのもとご一緒させて頂いています。
立ち上げ当初からぶれずに、オープンイノベーションの形式で共創しながらプロジェクトを進めています。
αU metaverseで、パートナーは何社いるのですか。
齊藤:αU metaverseのプラットフォームを開発するにあたり、カヤックさんとPocket RDさんの2社が参画しています。ただ、これまでのASPR(アゲハスプリングス)さんやANNINさんのように、コンテンツを制作したり、キャンペーンやイベントを開催したりする場合には、積極的にパートナーと連携して取り組んでいます。お客様が直接触れる部分に関しては無数のプロジェクトが存在しています。
メタジョブ!
最後に伺いたいのですが、メタジョブ!とαU metaverseの連携は、どういう経緯で決まったのでしょうか。
川本:2021年の「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス2021」がきっかけです。元々、三井物産の社内起業でMoon Creative Labというベンチャースタジオが実施していたプロジェクトの一つです。
メタバース内でのご案内は、空間内の看板などで案内を出していたり、ポップアップを表示するということが多いのですが、お客様の中にはそもそも看板の位置がわからなかったり、操作方法がわからなかったりされる方もいらっしゃいます。もちろん、UIやサービスがまだまだ分かりにくい、という点は大いに反省し改善を図っていくべきことです。そのうえで柔軟にお客様をサポートするために、公式スタッフが中にいて、同じ空間の中でお客様が気軽に話しかけてサポートできる状態をつくることがすごく重要だということを、メタジョブ!代表の星野さんから教えていただきました。
最初はPoCみたいなところから始めて、KDDIのメタバース内でメタジョブ!を使わせていただきながら、メタバースの中でのお客様の体験を良くしていこうとしています。メタジョブ!さんに我々自身もサポートしていただきながら、メタジョブ!さんが実現されようとする新しい働き方のプラットフォームビジネスをKDDIも支援させていただいているという感じです。
ありがとうございました!
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