- インタビュー
2023年04月12日
教科書がない領域での挑戦、NFTの面白さを伝えるためにーKDDI関口氏&八木氏【αUインタビューVol.3】
KDDIは、2023年3月7日、メタバースとWeb3時代のサービスを提供する新しいサービス「αU(アルファユー)」を開始することを発表しました。αUサービスの一つであるαU marketは、飲食店とファッション分野のNFTを扱っており、コレクションを持つ人に特典が提供される仕組みとなっています。
飲食店のNFTでは、販売額と同額の商品を店頭で交換できる仕組みがあり、1700円のNFTなら1700円分の食べ物と交換できるため、実質無料のようなイメージです。ファッション分野のNFTでは、コラボしているブランドのTシャツがもらえる特典があります。 さらに、一般には出回っていないファッションショーへの参加という、一部のモデルやメディアの間でしか公開されていないような特別な特典も提供しています。
αUに関わる「中の人」に焦点を当てた連載シリーズ、今回はαU marketを担当している、事業創造本部 Web3推進部の関口直紀氏・八木光平氏です。
αU marketを担当している関口さん(左)、八木さん(右)
サービス立ち上げのきっかけは何でしょうか?
関口:Web3やNFT関連のサービスは他社さん含めて様々ありますが、取っ付きにくいというか難しいというイメージも世間一般的には持たれていました。しかし、すでに馴染みがある我々からするとこの世界は非常に面白いので、ぜひ多くの人に味わってもらいたいと思いました。
そこで、できるだけ初心者の方でも使いやすい形で、Web3やNFTの面白さが体験できるようなサービスを作りたかったというのが背景にあります。
八木:文脈としては2つあると思います。1つ目は、現在のZ世代は他世代よりも自分らしく生きたいという願望や、クリエイターとして発信したいという欲求が強いことから、クリエイターエコノミーのビジネスが注目されてきているタイミングだったことです。その文脈に沿う技術としてWeb3が台頭してきたので、それに合わせてサービスを作ろうとなりました。
2つ目は、今回αUという新ブランドを立ち上げるとなった中で、そのひとつとしてWeb3ビジネスのマーケット部分でNFTを販売するという役割があったことだと思っています。
リリースまでの過程で課題や難しかった点は何でしょうか?
関口:まず思い付くのは、同時に立ち上げるサービスがたくさんあったということです。αUという新ブランドの立ち上げであると同時に、マーケットサイト、そこで使うウォレット、さらにマーケットに並ぶNFTも同時に企画を進めていました。マーケットプレイスを作るだけでなく、それに付随するサービスもどんどん作っていかなければならなかった点は大変でしたね。
αU marketトップページ
どのようなパートナー企業と取り組まれていますか?また取り組み内容を教えてください
八木:前提をいうとWeb3界隈は参考にできる教科書があるわけでもないので、スタートアップ企業と会話しないと最新情報が得られないというのが顕著な領域でした。そこで、メンバー含めて様々なステージの企業と会話し関係性を築いていったので、関係値がある企業さんを選んだりもしていました。
開発に関してはPocket RDさんやSUSHI TOP MARKETINGさん、ファッションではワンオーさん、飲食店のNFTプロジェクトではSoudanNFTさん、リアル店舗で言うと渋谷界隈のお店といった感じでした。
パートナー企業と取り組みを進める中で大変だったことはありますか?
関口:どの企業さんともぶつかることなく協力的に相談しながら進められましたが、前例が少ない領域に取り組んでいたため、企画を詰める上でどのように進めたら良いのかという部分はかなり苦労しましたね。
八木:開発期間が3ヶ月しかない中でマーケットを作らないといけない点はなかなかハードでした。開発期間が短いにもかかわらず、パートナー企業さんと一緒に進めることができたのは、皆さんが協力的だったことが一番大きな要因だと思います。
3/8より開始したプロジェクトでは、NFT所有者が該当店舗で受けられるユーティリティのひとつとしてNFTの絵柄をもとにした特製コルクコースターを配布(SoudanNFTさんとコラボ)
現在はパートナー企業とどんな取り組みを進めていますか?
関口:NFTの面白さの一つでもありますが、一度売買したら終わりというわけでなく、持っていることに価値を見い出していくようなものなので、今買ってくれた方にどのようなことができるのか、これから持つ人にどのような価値を与えられるのかといったことを継続的に検討しています。それをもとに次並べていくNFTをどうしていくかは、まさに今話しているところです。
八木:ファッション領域でご一緒したワンオーさんはWeb3企業ではないのですが、Web3やNFTといった最先端の技術を取り入れたことで非常に喜んでもらえました。今後もこのような取り組みを継続していきたいと考えており、来年のイベントの話などもすでに始めています。
Web3領域以外のパートナーとも引き続き協議が進んでいるのですね。では、今後はどういった世界観を目指していきたいですか?
関口:達成したいことの一つは、NFTの新しい使い道や価値観を探求していきたいです。それによるマスアダプションみたいなものも実現できたらと思っています。また、NFTを持つことによって人々の行動が変わっていくような仕掛けづくりを目指しています。
NFTマーケットまとめ
NFTの新しい使い方、活用の仕方が人々の行動変容に繋がると。
関口:そうですね。次なる優先度が二次流通かどうかというのは実験しながら検討したいと思っています。提供する側と提供される側の垣根が曖昧なWeb3という観点でいくと、皆がちゃんと入ってこられる環境がいずれにしても必要だろうと考えています。それが二次流通かもしれないし、他に良い方法があるかもしれません。その辺りは検討していきたいと思っています。
八木:飲食やファッション以外の業種を増やすという観点とNFTの特性の使い方を増やすという観点の軸で進めていきたいです。来期は事業として成立させなければならないフェーズなので、売り上げやブランド向上なども目指していきますが、個人的には自由にやりたいことを追求したいと思っています。
特にSDGsとの組み合わせに非常に興味があり、ファッションでいえば、ファッションショーに行けるよりもフェアトレードの証明やカーボンクレジットの証明など、社会や世界をより良くする方向にNFTを活用していくことに興味があります。
二次流通も可能になってくるのでしょうか?
関口:具体的な計画はまだないですが選択肢としてはありえます。やりたいことを実現するために必要であれば、web3版だとどんな良いことがあるのかというところから考えていくべきかなと思っています。
αU marketスマホ画面
今後はどのようなアーティストや飲食店、企業とコラボしていくのでしょうか?
関口:具体的にはこうということはありませんがまだまだ狭い世界だと思っているので、様々なパートナーと組んでより多くの可能性を探っていきたいと思っています。
八木:基本的に機動力を使ってスピード感を持って動いていく部分はスタートアップの方が得意ですので、我々は彼らのやりたいことや困っていることに対して出来ることをしたいと考えています。
そして、業界全体を盛り上げるという役割を担うことが目指す方向性なので、パートナリングは必須かと。また、領域や業界を問わず組めるところとどう取り組んでいくかを考えていこうと思っています。
関口:リリースをする上で、初心者の方がちゃんと使えるという点を重視しまずは機能を絞って作りました。でももっと使いやすくするためには、まだまだ機能が足りていないと思っています。そういう機能面で一緒に取り組むスタートアップさんもこれからたくさん必要になるでしょう。
また、さっきも言いましたが、まだまだ狭い世界なので競合というよりは一緒に市場を大きくしていく観点で連携していきたいです。マーケット領域でもウォレット領域でもコンテンツ領域でも、Web3と全然関係なかった人たちも含めてのパートナリングをどんどん考えていく必要があると思っています。
ありがとうございました
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