- インタビュー
2023年04月10日
誰もが簡単・安心・安全に使えるウォレットを目指してーKDDI廣田氏&水野氏【αUインタビューVol.2】
KDDIは、2023年3月7日、メタバースとWeb3時代のサービスを提供する新しいサービス「αU(アルファユー)」を開始することを発表しました。αUサービスの一つであるαU walletは、αU marketやαU dotadpで購入したNFTやPolygonネットワークに対応したNFTを格納できるサービスです。
法定通貨決済機能を持っており、クレジットカードやauかんたん決済での購入を可能とします。そのため、これまでNFTや暗号資産を持ったことがない初心者でも利用やすい仕様になっている点が大きな特徴です。また、暗号資産の管理機能もあるため、購入したNFTを二次流通させる際のガス代支払いも可能です。
αUに関わる「中の人」に焦点を当てた連載シリーズ、今回はαU walletを担当している、パーソナル事業本部 マーケティング統括本部の廣田勲氏・水野僚太郎氏です。
サービス立ち上げのきっかけや背景を教えてください
廣田:元々私たちはIDサービスを企画・開発している部署で、一昨年の9月頃から次世代のIDがどうあるべきかについて議論していました。その中で、自己主権型IDというユーザー自身が自分のIDを管理し、企業に依存せず自己証明できるような思想や仕組みを検討していたんですね。
具体的なサービスに落とし込むタイミングで社内の色々な部署・部門に声を掛け、事業創造本部内でWeb3を立ち上げる話を耳にし、であれば我々はそこにウォレットを作っていきますよという流れになったのがきっかけです。
リリースに向けて動く中でどのような点が特に大変でしたか?
水野:二つあります。一つはリリース日が3/7、しかも同日が発表会と決まっていたため、それに間に合わせる必要がありました。二つ目は、ウォレットのコンセプトとして「誰でも安心安全に使える、初心者の方でも使える」を目指していましたが、今あるウォレットは誰でも簡単に使えるものではないので、単に真似して作ればいいわけではなかった点です。
本当に全くWeb3について分からない人や今までNFTを買ったことない人に使ってもらえるにはどうしたらいいか、UIやバックアップという仕組みを入れるには何をクリアしないといけないかなど、答えがない中で検討して解決する必要があったので苦労しました。
どのような仕様であれば初心者でも使いやすいサービスなのでしょうか?他のウォレットとの違いを教えてください
水野:大きな点はやはりバックアップ機能ですね。今のウォレットは秘密鍵を自分で管理する必要があるものが大半です。例えば英単語12個を順番通りに覚えたり。あとは管理も自己責任だし、秘密鍵をなくすとウォレットの中身を復元できないし、他人に取られてしまうとwalletの資産を丸々取られちゃいますと。
やっぱりその鍵の管理がすごく煩雑でリスクでした。その点が一般層に使ってもらうには大きな障壁と考え、バックアップという仕組みを作ることで鍵を全く意識せずにウォレットを安心して使えるという点が最も大きな差別化要因です。
KDDIに閉じずに誰でも参加できるパブリックチェーンにした理由はありますか?
廣田:まずユーザーやクリエイター視点だと、やはり特定の企業に閉じるよりもグローバルに展開できた方が良いよねと。もう一つは、我々はプラットフォーマーでもあるので、自分たちの役割をディスラプトせずにグローバルの仕組みにしっかり向き合ってビジネスをしていきたいという想いもありました。
ウェルカム画面
パブリックチェーンを採用する難しさはあったのでしょうか?
廣田:パブリックチェーンは端的に言うと安定していないです。履歴が見られなかったり、送金に時間がかかったり、今までの2.0の世界では企業が担保していた部分をブロックチェーンに委ねられるため、そこはデメリットといえるかもしれません。
ただ、そういう経験をしながら問題をどう改善していくか、その問題を解決できるソリューションを我々が見出せるかもしれないと思い挑戦しています。
サービス立ち上げに際して協力しているパートナーはいますか?
水野:ウォレットのコアな機能はNRIデジタルさんが提供するデジタルウォレット開発キットを使っています。NRIデジタルさんとは次世代のIDをどうするかという構想段階から一緒に議論を重ね、その中でNRIデジタルさんとしては、この開発キットを開発し、KDDIはそれを利用させていただくという座組となりました。
廣田:実はNRIさんとは以前からau IDやauかんたん決済などを共同開発してきました。単なる開発パートナーという関係にとどまらず、共にビジネスを創出していくというビジネスパートナーという観点でも古くからご一緒させてもらっています。
αU walletを担当したチームメンバー
今後どのような世界観を目指すのか、またαU walletはどう成長していくのでしょうか?
水野:個人的な想いとして考えていることは、プロダクトとしてはどんなWeb3サービスやメタバースでも使える共通のお財布のようなものにしたいです。au以外のお客様にも次世代のお財布として使ってもらえるようにしたいですし、グローバルに展開していきたいという野望もあります。
廣田:私も基本的に同じ考えで、リアルで使っているお財布はお金以外にも身分証、ポイントカードなども入っているじゃないですか。そういったものも全て入っているお財布をつくり、リアルやバーチャル問わず、いつでもどこでもシームレスに使えるものにしていきたいです。
世の中にはアプリ版のウォレットが多いですが、web版も登場してきそうですか?
水野:具体的な計画はまだないですが選択肢としてはありえます。やりたいことを実現するために必要であれば、web版だとどんな良いことがあるのかというところから考えていくべきかなと思っています。
廣田:いわゆるUX、UIという観点でアプリの方が優れているのと、もう一つはセキュリティの観点がありますね。今回も怪しいサイトに飛ばないようにするフィルター機能をつけましたが、ブラウザだとなかなかこの実現が難しいのでアプリにしました。ただ、ブラウザも進化してくると思うので、状況を踏まえながら判断していければと。
今後どのような企業とパートナーシップを組んでいきたいですか?
廣田:単純に、大小問わず、同じ志がある企業と組みたいです。今の第1弾はやはりエンタメ領域、クリエイターエコノミーの観点がコアな部分だと思うので、まずはその観点でのパートナー探しが第1なのかなと思います。
また、分散型ネットワークを構築されている企業様の考え方や目指すところを知っておかないと始まらないので、そういった方々とお話しながら一緒に座組を考えていきたいです。
ありがとうございました
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