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2023年05月02日

今までにないライブ体験を創っていくαUliveとはーKDDI水田氏【αUインタビューVol.4】

αUliveは、アーティストと会場をバーチャル空間に再現し、視聴者はリアルのライブに近い体験ができる、今年の夏頃にリリース予定の新サービスです。

これまでのダウンロード型アプリケーションとは異なり、クラウド上でコンテンツを処理し、さらに、5G通信を活用することでスマートフォンでも低遅延かつ映像の品質を大幅に向上させたのが特徴です。

新しいエンターテイメントの楽しみ方、メタバース体験はどのようなものになるのでしょうか?αUの中の人にインタビューするシリーズ、今回はαUliveを担当している、KDDI株式会社 事業創造本部 XR推進部の水田修氏にお話を伺ってきました。


 


XR推進部の水田修氏

αUliveはどのようにして着想されたのでしょうか?

水田:これまでのライブは観客が一堂に集まり熱気を感じられる点が魅力でしたが、コロナが流行ったことでオンラインライブが増えてきたんですね。しかし、アーティストにとって、オンライン配信では魅力が十分に伝わらないと感じることもありました。

一方で、コロナ禍をきっかけに、デジタル技術を活用することで、グローバルに届けられる、より多くの人にライブ体験を届けることができると考えるアーティストも増えてきたんですね。

このような状況から、我々は音楽コンテンツを平面的な映像ではなく、臨場感ある3Dの体験として届けるためにどう表現力を高めるか、グローバルに届ける十分な価値を作れるかを考えるようになりました。その時に、誰が見ても日本だと分かる渋谷を舞台にすることで、グローバルから見ても日本のコンテンツがポジティブな形で伝わるのではと考えて今回の形になりました。


BE:FIRSTの圧巻パフォーマンスを360度自由視点で楽しめる「Boom Boom Back PLAYGROUND remix

アーティストとしては、デジタルを活用することでより広い層に良さを発信できるチャンスだと。

水田:コロナ禍によってリアルな活動ができなくなったことで新しいことに目を向けるアーティスト、クリエイターが増えたことは非常に大きな変化です。単なる映像配信ではなく、3Dの体験としてそれ以上の表現力で届けられるようになれば、来場できない人にもアーティストの価値を今までにない形で提供できると考えられます。KDDIとしては、これを実現するための仕掛けを作ることが目標です。

最近では顔を出さなかったりオンラインからスタートするアーティスト、VTuberなどが増えています。これらの人たちにとってはオンラインがホームのため、オンラインでの表現力が自由であることは大きな魅力です。新しい時流を持った人たちに、自分たちの表現力を最大限に生かせる場と捉えてもらえそうだと考えていました。

高精度でリアルに近いものをつくるまでに、どのような障壁があったのでしょうか?

水田:実は先読みして1年以上前から試験を行い準備していました。最初、クラウドに大きなコンピュータを置いて高性能なコンテンツを作り、それをあたかもスマートフォンで操作しているように見えるのかが分かりませんでした。こちらで操作したものが瞬時に向こうに伝わり操作した映像が戻ってこなければ、使い物にならないですよね。そういう不安もあったので、一度試したく、デジタルの渋谷をクラウドで処理して実際に動かすということを行いました。

このタイミングで、エンターテイメントや地方創生の観点から、現地に行けない人にも行った先の世界観を美しい演出で体験してもらえば、そこに対する魅力が高まり行きたくなる気持ちが生まれるという仮説を持っていました。ただ、私たちはコロナ禍真っ只中の時期に話していたので、このような発想自体にまだ必然性を感じない市場環境だった中で進めるかどうかが大変でした。


様々なアーティストとコラボしたαUlive

周りよりも先回りして、将来こういうサービスが出来るだろうと事前に仕込んでいたのですね。

水田:2022年には、実際にお客様を招いて実際にすごいと感じてもらえるものなのかどうかを試すことにしました。この頃はコロナが終息するかもという時期だったため、お客様にも体験していただけるタイミングは今だと狙ってマーケティング的な意味で動き出しました。実際の発表より1年ぐらい前から動いていたことが一番大きなポイントだと思います。

αUliveは、試験的に行った過去の取り組みからどのように進化しているのでしょうか?

水田:技術的な進化という意味ではそれほど変わっていません。一方で、こういう実験を世に出すことで同じ領域で取り組んでいる人たちが我々の取り組みに気づいてくれて、仲間集めに繋がりました。その数は圧倒的に増えたと思います。

Googleさんと今回の協業に結びつくきっかけとなったクラウドレンダリングという技術は22年に取組みをスタートしましたが、そのきっかけも、Googleさんが目指していることを我々も同じように構想して既に取り組んでいたことがお互いの共感を生んだことからでした。

対外的に発表することで注目してもらえるようになったということですね

水田:発信する目的は、仲間を集めることが大きいです。22年5月にはGoogleさんとGoogle Cloudを使ってアパレル販売向け高精細 XR マネキンを開発したのですが、仕組みは一緒です。クラウドでバーチャルヒューマンというスマートフォンでは表現できないレベルのものを作成し、スマートフォンに表示させ、リアルな質感が分からないと服の購入に踏み切れないという問題を解決しようという取り組みです。

テーマは異なりますがやっていることは同じで、この話の後にエンターテイメントにも使えるのではないかとGoogleさんもKDDIも考えていました。その流れで今回も一緒に取り組むことになったんです。

また、ご一緒した花譜さんというアーティストを抱えるTHINKRさんは、以前からデジタルを舞台とした配信型ライブをされていて、クラウドにコンテンツを乗せることでお客様に与える体験価値が大きく変わることは確信めいた理解からスタートしていたので、そういうことを実際に取り組んでいるKDDIと一緒にやるという流れが出来ていきました。

今後はGoogleをはじめとしたパートナーとどのように共創していくイメージでしょうか?

水田:大きな目的はやはり新しいマーケットを作るということだと思います。GoogleさんはこれまでYouTubeを通じて誰でも映像を世界に発信できるようにしてきました。今回のクラウドをαUliveのような使い方で利用することで、従来の平面映像から3Dのコンテンツを配信できるようになり、お客さんは「視聴」ではなく「体験」が得られるようになります。

しかし、作り手の立場で言うと、今ないマーケットをこれから作っていく段階にいます。両社の力を活かして、マーケットをゼロから作ることが大きなミッションとしてあり、お互いが出来ることを持ち寄りながら進めていくというのが今回の契約に至った背景です。

今後こういう企業をパートナーにしていきたいといった構想はありますか?

水田:Googleさんの強みは、グローバルに向けてリーチできる場所を持っている点です。アーティストやクリエイターが世界に発信できる舞台が整い、日本発のアーティストやクリエイティブを世界に届けられれば日本全体がワクワクすると思います。

そうすると、世界に発信したい、展開したいアーティストを抱えるパートナーとはシナジーが生まれると考え、ANNINさんとご一緒させて頂くことになりました。彼らは世界を目指してリアルとバーチャルのどちらでも活動できるアーティストを展開することを考えています。

また、世界に届けるチャネルを作るという観点で言うと、世界中に拠点を持ち、企業との関わりを持つWPPさんとご一緒することで、世界全体にKDDI・Googleのプラットフォームを活用した新しいアーティストやクリエイターの取り組みが届くという仕組みが出来上がるのではないかと。


WPPのCEO Mark Read氏

αUliveを通じてどのような世界観をつくっていきたいですか?

水田:音楽やエンタメに「新しい楽しみ方」を提供し、世の中に理解してもらえるようにしたいです。例えば、ウォークマンにより今まで家でしか聴けないと思っていた音楽を持ち運べるようになったように、音楽を聴くだけでなく体験できる何か新しい形になると嬉しいです。音楽好きにとっては新しい楽しみ方が増えることでワクワクすると思うので、そういう立ち位置になれると良いなと思っています。

ありがとうございました。

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