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2022年09月28日

話題のバーチャルレストランでハンバーガーを実食してみたーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナーでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

コロナ禍を経て、日本でもすっかり定着したデリバリーサービス。今回は、そのデリバリーアプリの発達に伴って、新規業態として注目を集めるゴーストキッチンと、YouTuberやTikTokerなどにより影響力を強めたインフルエンサーが手を組んだバーチャルレストランブランドについて調べてみました。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

バーチャルレストランとは

最近のあるレポートによると、米国内のフードデリバリー市場はパンデミック期間を経て、2倍以上に成長したそうです。渡米したばかりのころ、ファストフードのみならず個店でも、レストランにはモバイルオーダーとデリバリーがほぼ併設されていることには驚きました。
群雄割拠のアメリカフードデリバリーサービスですが、その裏でデリバリーサービスに出店する側のレストラン業態にもここ数年で大きな変化がみられるようになりました。
その一つとして注目されるのがバーチャルレストランです。バーチャルレストランはイートインスペースや実店舗を持たず、デリバリーサービスやオンライン上にしか存在しないレストランを意味します。

フード領域へのSNSやインフルエンサーの進出

アメリカでは、YouTubeやTikTok上でインフルエンサーがバーチャルレストラン事業者とタッグを組み、レストラン事業を展開する事例が複数出てきています。またTikTokも昨年末に、新事業として「TikTokキッチン」を発表しました。TikTokではローカルのおいしいレストランやカフェあるいはレシピを投稿する際のハッシュタグ「#FoodTok」で321億回、「#FoodTikTok」で972億回ものView数があり、非常に人気のジャンルの1つとなっています。

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渡米後にTikTokアカウントを新たに作ったのですが、確かにやたらとフード関連のレコメンドが多いことに気づきました。
日本在住時のアカウントでは、ある程度パーソナライズドされていたからかもしれませんが、ここまでフード関連をレコメンドされることはありませんでした。

インフルエンサーのメインの収益となるのはSNSを活用したタイアップ広告であり、米国のあるレポートによるとインフルエンサー収益の50%近くを占めています。これまでもレストランチェーンやファストフードの宣伝の一環としてインフルエンサーが起用されることはありましたが、より個人の影響力が高まることによって、インフルエンサーがコスメやアパレルなどを中心に自身の得意とする領域でブランドを立ち上げる事例は日本でもかなり増えてきました。

今回のインフルエンサーやSNSのフード領域への進出は、このインフルエンサーの収益多様化の一環であると言えると思います。インフルエンサーはブランドコンセプトとレシピのみ考えれば、あとはそのメニューを扱いたいレストランあるいはゴーストキッチンを募れば、非常にアセットライトに自身のフードをフランチャイズ的に展開できます。一方で、参画するレストラン側にとっては、影響力のあるインフルエンサーの力を借りて、店舗のリソースを有効活用し、収益の一部を得ることができます。


TikTokキッチン 出典:https://tiktokdelivered.com/

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プレスリリースによると2022年末までに1,000店舗まで拡大するとのことですが、まだその進捗は見えません…

アメリカでの成功事例

このモデルの先駆けとなったのがMrBeastBurgerです。このハンバーガー店舗のオーナーとなるMrBeastのYouTubeの登録者数はなんと1億人を超えており、世界で5番目に登録者を多く持つれっきとしたインフルエンサーです。MrBeastは、13歳からYouTubeを始めたそうで、弱冠24歳にして世界的YouTuberとして活躍しています。


ハンバーガーを手にしているMrBeast

2020年後半のローンチ以来、MrBeastBurgerは全米で1,700以上の拠点で展開されているそうで、先日9月4日についにニュージャージー州に初の実店舗をオープンさせましたが、ショッピングモールには10,000人以上の人が押し寄せ、大盛況となりました。中には前日から徹夜でオープンを待つ人や、車で半日以上かけて店舗に来た人もいたそうで、その影響力の大きさがうかがえます。
バーチャルあるいはオンラインのみでブランドを展開し、一定の認知が取れたタイミングでオフラインの実店舗をローンチするやり方はD2Cブランドではかなりメジャーなやり方なので、今後もリアルでの出店に追随するバーチャルレストランやインフルエンサー発ブランドは増えてきそうです。
また、MrBeast Burgerの立ち上げに際しMrBeastとタッグを組んでいるVirtual Dining Conceptsは昨年末20億ドルの資金調達にも成功しており、MrBeastBurgerを皮切りに14のブランドをインフルエンサーと立ち上げ事業を拡大しています。


Virtual Dining Conceptsが扱うブランドの一覧。マライアキャリーとのクッキーブランドもあります。
出典:https://joinvdc.com/brands/

日本でも今後、インフルエンサーがレストラン出店する事例や、バーチャルレストラン事業を企図するスタートアップも出てくるかもしれません。

MrBeast Burgerを食べてみた

フランチャイズ展開する際に気になるのはクオリティの担保。その面を考慮してか、現在バーチャルレストランで展開されているメニューはハンバーガーやホットドッグ、クッキーなど品質にばらつきの出ないようなものが多い印象ですが、それでもアメリカでメジャーなレストランレビューの投稿アプリYelpでは、品質に対する辛辣な意見も見られました。
実際にサンフランシスコでもMrBeast BurgerをUberEatsでオーダーすることができたので、試しに実食してみました。
少し広域ですが、サンフランシスコ周辺だけでも9店舗ヒットしました。
デリバリーの配達元となる住所をGoogleマップで検索するとピザ屋さんが出てきました。確かにMrBeastの看板はないために、デリバリー専門でこのレストランのキッチンでハンバーガーを作っているものと思われます。

ピックアップorデリバリーのロケーション選択画面 出典:https://mrbeastburger.com/locations

今回は、一番の看板メニューであると思われるBeast Style Double Burgerとポテトをオーダーしました。届いた商品がこちら。BEAST STYLEのステッカーが目立ちます。Webサイトのポップさから、もうちょっと目を引くパッケージを期待していたのですが想像よりも質素で少し期待外れな感じでした。

オーダーしたBeast Style Double Burgerとポテト

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ポテトは何かシーズニングがかかっていますが、予想に反してかなり薄味でした。こう言っては何ですが、バンズもお肉もそのへんで売っているハンバーガーとそう変わらず、特別おいしい!というよりも、「普通のハンバーガー」という感じでした。逆に言えば、この何の変哲もないハンバーガーがインフルエンサーの力により1,700拠点で展開され、事業として成立していることに改めて驚きました!

開封後のバーガー

今回は、アメリカで注目されるバーチャルレストランについてご紹介しました。アメリカでは、インフルエンサーがフードやアパレルブランドのみならずベンチャーキャピタルを立ち上げることも一般化していて、今後も影響力を活用したビジネスの多角化が進むと考えられます。個人的にはWeb3.0を背景にクリエイターエコノミーはより推進されていくのではないかと思っているので、今後も注目していきたいと思います。

以上

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