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2022年05月19日

SXSW2022参加レポートVol.3ーーSXSW Pitch

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。3/11~20にアメリカテキサス州オースティンにて開催された大型テックイベントSXSW2022(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト、以下SXSW)のレポート記事第三部をお届けいたします。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

SXSW Pitch概要

SXSW Pitchは初めて開催された2009年から数えて今回で14回目の開催であり、米国のPitchイベントの中では非常に歴史あるものです。過去の出場者としては、Apple買収前の音声認識システム「Siri」や、B向けのオンラインレンディングプラットフォーム「Kabbage」などが代表的な事例として挙げられます。今年は9つの領域から、45社のイノベーティブなテクノロジーを持つスタートアップがファイナリストとして選出され、2日間にかけてプレゼンテーションを行いました。そのうち2社は日本人の起業家のものです。本記事では、分野ごとの優勝企業と、個人的に注目したスタートアップにフィーチャーして紹介したいと思います。


会場の様子

一色一色
2日間かけての開催でかなり長丁場なのですが、会場内はいつ見ても満席でとても盛り上がっていました!

部門ごとの優勝企業

  1. Hume AI(AI、ロボティクス部門優勝企業)
    Hume AIは元Googleのリサーチャーが2021年に立ち上げた感情分析AIです。彼らは表情や声によって表される感情が、人種や文化的背景によって異なることに着目し、国ごとにサンプルを集めてより精緻な分析を行ことができます。例えば、嬉しい時や感情が高ぶっている時の口の開け方一つ取っても、アジア圏の人と欧米圏の人ではその大きさが異なるそうです。
    このように多様性のあるデータを世界中から集めることにより、AIのバイアスを取り除くことができ、感情分析は従来の3倍になると彼らは述べています。
    まだプロダクトはリリースされていませんが、すでにウェイティングリストには米国の有名大手を含む多くの企業が登録しており、期待の大きさが窺えます。
  2. Action Face(エンターテインメント、ゲーム、コンテンツ部門優勝企業)
    Action Faceは、iPhoneで撮影したセルフィーから素早く簡単に自分そっくりなフィギュアを生成できる技術を持ったスタートアップです。リアルのフィギュアだけでなく、3Dデジタルタルアバターも作成することができます。申請後2週間でフィギュアが自宅に届き、スタンダードモデルは99.99ドル、ミニフィギュアは49.99ドルと値段も比較的お手頃です。C向けのみならず、スポーツチームなどと提携し選手のアバター化などにも取り組んでいます。
    日本でも3Dフィギュアを作成できるサービスはありますが、基本的にはスキャニングマシンを利用するケースが多い中、写真から手軽に作成できる点が面白いと感じました。また、ピッチを聴いていた知人らと話していても印象的な企業としてよく名前が挙がっており、Pitch後のMeetupでは最も人が集まっていたと思います。
  3. Sonavi Labs(ヘルスケア、ウェアラブル、ウェルビーイング部門優勝企業)
    Sonavi Labsは、AI技術を活用したスマート聴診器を開発するスタートアップです。呼吸音や心音をリアルタイムで分析し、90%以上の精度で異常心音を検出することができます。この精度は、医師が聴取できる平均的な精度を約20%ほど上回るそうです。分析された内容はクラウドとモバイルアプリに記録され、さらにEMR(Electronic Medical Record、電子カルテの略)システムと連携することもできます。医師だけでなく持病がある患者も自宅で簡単に心音を聴取して医師や病院側に共有することができます。Sonavi Labsも部門優勝を果たしており、今回のPitchで注目を集めた企業の一つです。
  4. Hilos(Innovative World Technology部門優勝企業)
    Hilosは、3Dプリンティングの技術を活用して、一人ひとりの足に合った履き心地のよい靴を制作するスタートアップです。面白いことに、この企業はサーキュラーエコノミーにも着目しており、無駄な在庫や材料の使用を減らすだけでなく、靴の寿命が来た時に返送すると、材料を分解してリサイクルすることができます。水の利用も通常の制作プロセスと比較して99%も減らすことができるそうです。AllbirdsやRothy'sなど靴のスタートアップが次々にユニコーン化していますが、Hilosは今年のSXSWでBest in Showにも選出されており、今後の動向も是非ウォッチしていきたいです。
  5. Syrup Tech(エンタープライズ&スマートデータ部門優勝企業)
    Syrup Techは、主にアパレル業者やブランドに対して、在庫状況を確認し、何千通りもある色やサイズの中から必要な商品を正確に判断することができるAI技術を提供しているスタートアップです。天気や曜日などの外部環境も含めて正確な需要予測をすることができるそうです。
  6. MATSUKO(拡張現実テクノロジー部門優勝企業)
    MATSUKOは、スマートフォンやPCのカメラを使って3Dホログラムを作成することができるスタートアップです。ヘッドセットやARグラスを持っていなくても、スマホやPCで自分のホログラムがリアルタイムにストリーミングされ、さらに他の人のホログラムも見ることができます。リモートワークが一般化する現代において、ビデオ会議を一歩前進させる技術として注目されます。
  7. Anthril(Future of Work部門優勝企業)
    Anthrilは、デスクワークでない従業員のために、テキストベースのコミュニケーションツールを提供するスタートアップです。工場やレストランのスタッフなどデスクワークでPCに向き合わない人の現場の声を拾うソリューションとしての活用が期待できます。余談ですが、このFuture of Workというカテゴリは米国現地ではどのテックカンファレンスに行ってもよく聞かれ、メディアでも多用されており、Withコロナ時代の注目産業の一つとしてポジションをすっかり確立したように思います。
  8. JusticeText(スマートシティ、輸送、ロジスティクス部門優勝企業)
    JusticeTextは、刑事事件の弁護人向けに、証拠動画を見つけやすくするソリューションを提供するスタートアップです。裁判前に動画から証拠を探す作業は非常に労力のかかる作業だそうで、そのほとんどが膨大な量の映像を弁護士たちが目視で行っているそうです。このソリューションを使うことで30~50%の労働時間削減に繋がるそうです。日本に比較してアメリカは裁判実施回数も多いので、このソリューション導入の効果は大きいかもしれません。このようなケース特化型のSaaSはまだまだ需要がありそうです。
  9. MOGL(Social&Culutre部門優勝企業)
    MOGLは、大学生アスリートと企業とを、マーケティング目的で結びつけることのできるマーケットプレイスを展開するスタートアップです。無料で参加でき、商品やサービスをアピールしたいブランドや企業にとって需要のある、マーケットプレイスです。

    これまで大学生アスリートは、NCAA(National Collegiate Athletic Association、全米大学体育協会)の規定により自分の名前や画像、肖像権を使ってビジネスすることを許可されていませんでしたが、法律の変更によってそれが可能となりました。さらに、この規制緩和により、学生アスリートは企業とスポンサー契約をしたり、マーケティング活動を通じてお金を稼ぐことができるようになりました。大学生アスリートのこのような取引はNIL(Name,Image,Likenessの頭文字で、名前、画像、肖像権を指す)と呼ばれ、MOGLもNILのマーケットプレイスとして知られています。

    1. その他個人的に注目した企業

      1. ZeBRAND
        ZeBRANDは、企業ブランド構築のためのオールインワンプラットフォームを提供するスタートアップです。ブランドイメージ構築において重視されるストーリーテリングからデザイン、イメージ素材などのダウンロード可能なアセットやスライドテンプレートまで、ブランド戦略に必要なすべてを提供しています。迅速なブランド戦略決定を必要とするスタートアップ企業をメインカスタマーとしており、そのほとんどが日本以外の海外企業だそうです。この企業は日本の伝統的なフォントベンダーのスピンオフで、ニューヨークで設立されています。日本から世界に羽ばたく企業として、強く応援していきたいと思える企業です。
      2. I'm beside you
        I'm beside youは「社会全体を学校にする=すべての人がリスペクトしあい学びあう社会を創る」というビジョンのもと、オンライン上の個人の感情や特性を表情や音声からAIで解析し、心理的安全性を見える化したり、コミュニケーションの改善を図ることができるスタートアップです。オンラインセールスや企業の人材採用、メンタルヘルスの予防などへの活用が想定されます。こちらの創業者は日本の通信企業出身で、日本登記の純粋な日本初スタートアップです。
      3. BOTANISOL ANALYTICS
        BOTANISOL ANALYTICSは、特殊なレーザー技術を活用して、たったの1分で97%の精度でコロナ検査ができる機械を開発しているスタートアップです。ソフトウェアのアップデートによってコロナ以外の感染症の検知も可能になるそうで、空港や公共機関などで需要がありそうだと思いました。こうした感染症関連の技術もアフターコロナ時代にこうしたテックカンファレンスで必ず見かけるトレンドの一つとなりました。
        1. 最後に

          2日間のピッチが終了した翌日の午前中には、ファイナリストと投資家たちのミートアップが開催されました。ミートアップ会場も非常に盛況で熱気が感じられました。この記事では細かく紹介しきれませんでしたが、ミートアップで出会ったNailbot(パーソナライズドされたネイルができるキット)や、Feelbelt(メタバース空間内の体験や音楽による振動を体に伝えることができるベルト型のウェアラブルデバイス)なども非常に興味深いものでした。優勝者も含めたすべてのファイナリストはこちらの記事で紹介されていますので、もし興味のある方は見てみてください。


          ピッチ終了翌日のミートアップ会場の様子

          一色一色
          次回はSXSWの最終章となるCreative Industries Expoの記事をお届けします。

          (第四部に続く)

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