
2026年07月09日
MUGENLABO UNIVERSE 5月イベントレポート ~研究と事業の連なりが拓く、宇宙領域の可能性~
2026年5月26日、宇宙共創プログラム「MUGENLABO UNIVERSE」の定例イベントがKDDI高輪オフィス「TSUNAGU BASE」にて開催された。
本イベントでは、宇宙領域に取り組むスタートアップによるピッチに加え、防衛装備庁 防衛イノベーション科学技術研究所による特別講演、ならびにMUGENLABO UNIVERSE の25年度活動報告を行った。
目次

登壇スタートアップ紹介
本イベントでは、日本の宇宙産業を牽引するスタートアップ3社が登壇し、それぞれの取り組みが紹介された。
- AstroX株式会社
独自の「Rockoon(気球からの空中発射)」方式による超小型人工衛星用の打上げロケットを開発する福島発の宇宙スタートアップ。
地上からではなく、気球で成層圏までロケットを運んでから点火・発射することで、低コスト化と、天候に左右されにくい柔軟な打上げの実現を目指す。現在、日本国内で深刻化しているロケット(打上げ手段)不足というボトルネックを解消し、国内初の空中発射成功へ向け、技術実証を着実に進める大注目の企業。
- Space BD株式会社
JAXAの公式パートナーとして、国内外の人工衛星の打上げ支援やISSを活用した実証実験など、宇宙空間の商業利用をワンストップで支援する宇宙スタートアップ。
宇宙ビジネスのコンサルティングだけでなく、宇宙を活用した地方創生や教育事業、アート事業など、非宇宙企業の参入ハードルを下げる多様なプロジェクトを主導。あらゆる産業と宇宙を繋ぐハブとして、新産業の創出に貢献する。
- 株式会社ワープスペース
民間による衛星間光通信ネットワークサービス(WarpHub InterSat)の実現を目指す筑波大学発の宇宙スタートアップ。
地球観測衛星が取得する膨大なデータは、従来の電波通信では地上へ送信できるタイミングが限られるという課題があるため、中継衛星とレーザー光を活用した高速・大容量の通信ネットワークを構築することで、そのボトルネックの解消を目指す。
有識者による特別講演
~防衛イノベーション科学技術研究所の取り組みと、スタートアップとの共創可能性~
特別講演では、防衛装備庁 防衛イノベーション科学技術研究所の方針策定ユニット長を務める藥師寺氏が登壇した。
「防衛装備品の研究開発」という一見クローズドに見える領域においても、スタートアップ等との共創を通じたオープンイノベーションの動きが広がりつつある現状が語られた。
「防衛イノベーション科学技術研究所」とは
防衛装備庁は、防衛イノベーションや画期的な装備品等を生み出す機能を抜本的に強化するため、2024年10月、防衛イノベーション科学技術研究所を、恵比寿ガーデンプレイスに創設した。
同研究所は、米国のDARPA (国防高等研究計画局)やDIU (国防イノベーションユニット)の取組を参考としたブレークスルー研究により、変化の早い様々な技術を活用し、防衛省・自衛隊の新たな機能、能力の獲得や防衛イノベーション創出を目指している。
3つのプログラムを通じた技術実装の加速
現在、同研究所では主に以下の3つのプログラムを柱として活動している。
- 安全保障技術研究推進制度
先進的な基礎研究を公募により委託する制度で、令和7年度からは研究者による主体的な活動を支援する補助金を新設し、応募件数も増加している。
研究成果は、論文等の公表を制限することはせず、広く民生で活用されることも期待している。HAPS(成層圏通信プラットフォーム)向け蓄電池材料の研究などの研究も進行中である。 - 革新型ブレークスルー研究
米国のDARPAの研究方式を参考に、外部有識者をプログラムマネージャ(PM)として採用し、PMが革新的なチャレンジ研究を管理し、防衛省・自衛隊の活動や社会を大きく変える新たな技術の創出を目指している。 - 実証型ブレークスルー研究
米国のDIUの取組みを参考に、民生先端技術の取り込みと早期実用化を目指した研究を実施し、スタートアップ等の外部機関が持つ先端技術を組み合わせることで、防衛省・自衛隊に必要な機能、能力の早期実用化を目指している。
「技術への投資」から「ミッションの実現」へ
講演では技術そのものに加え、それをどのように実装・運用につなげていくかという視点の重要性も示された。
昨年度からイベント(通称:エビノベ)を通じて、自衛隊のミッション(任務)を想定した企業の技術提案力向上やコミュニティ作りを推進している。同研究所は、スタートアップや非防衛産業などこれまで防衛とのつながりを持たなかったプレーヤの持つ技術を防衛分野で活用し、防衛イノベーションの創出を目指している。
MUGENLABO UNIVERSE 25年度活動報告
KDDIからはオープンイノベーション推進本部 SUグロース戦略部長の武田氏より、25年度の活動報告について語られた。
KDDIは60年以上前から衛星通信事業に携わっており、近年では「Starlink」の展開により、社内でも宇宙を身近に感じる部署が増えているという。現在は、東京都の「TIB CATAPULT」にも採択され、事務局としてスタートアップと事業会社の協働を伴走支援している。
2年間で生まれた具体的な共創事例
直近2年間の活動を通じて、スタートアップとの接点は300社、事業会社とのマッチングは100件に達し、15件の協働プロジェクトが組成された。その代表的な事例として、以下の2件が紹介された。
- 衛星画像の高解像度化と報道活用
- スマートスーツの共同開発
ロジック・アンド・デザイン社が持つ衛星写真の高解像度変換技術を、日本テレビ放送網社の報道現場で活用する事業連携が実現。
宇宙服を開発するAmateras Space社と、宇宙医療に取り組むSpace Medical Accelerator社がタッグを組み、生体数値を測定できる次世代スマートスーツの共同開発を推進中。
新体制でのさらなる加速
2026年度からは、参画する27社のパートナー企業とともに、さらに共同プロジェクトの数を増やしていく計画だ。
「昨年度から準備を進めてきたプロジェクトも複数あり、近々新しい発表ができる予定である。新体制のもと、宇宙領域でのさらなる共創を推進していく」と締めくくった。
おわりに
MUGENLABO UNIVERSEは、これからも多様な領域のプレイヤーをつなぎ、新しい取り組みが生まれる機会創出を進めていきます!
引き続きよろしくお願いいたします!
「MUGENLABO UNIVERSE」について
「MUGENLABO UNIVERSE」は、KDDIが2024年5月に開始した、宇宙事業に取り組むスタートアップ・異業種スタートアップ・大企業・有識者による、宇宙事業の共創や、宇宙技術を活用した地上の課題解決を目指すプログラムである。
多様な実証環境や企業間のマッチング機会の提供、宇宙領域の有識者によるナレッジシェアなど、企業が宇宙を活用した事業創出に挑戦しやすい環境を整備する。
東京都のグローバルイノベーションに挑戦するクラスター創成事業「TIB CATAPULT」に採択され、スタートアップの事業化を目指した取り組みに対する経済的な支援や、宇宙を活用した事業開発を目指す大企業や他参画事業者との連携支援、東京都のイノベーションプラットフォーム「Tokyo Innovation Base」をベースにした支援などを通じて、スタートアップの事業成長と企業価値向上に対する支援をより強化する。
TIB CATAPULTについて
東京都の強みとなるインダストリーやテクノロジーの領域において、イノベーションを巻き起こすために組成された複数企業からなる「クラスター」と、東京都が協定を締結し、クラスター領域におけるスタートアップとの連携・協働を推進、イノベーション創出を目指す。採択されたクラスターはそれぞれ、グローバルに成長するスタートアップ創出に向け、3カ年で20件以上の大企業などとスタートアップによる協働実績の創出を目指す。
