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2022年10月27日

大型テックカンファレンスTechCrunch Disruptーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。今回は、10/18~10/21にサンフランシスコにて開催された大型テックカンファレンスTechCrunch Disrupt 2022の参加レポートをお届けいたします。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

TechCrunch Disrupt概要

TechCrunch Disruptは、テック系メディア大手のTechCrunchが主催する、スタートアップをテーマとした大規模イベントです。コロナの影響で2020年よりバーチャルでの開催としていたものが、2022年は3年ぶりにリアルでの開催とのことで、多くの期待が寄せられていました。

イベントには、メインスピーカーとして、テニスプレイヤーのセリーナ・ウィリアムズ、NBAトッププレイヤーのドレイモンド・グリーン、先日元サッカー日本代表の本田圭佑氏と共同ファンドを立ち上げた俳優・コメディアンのケヴィン・ハートなど著名人の他、先月約3兆円でアドビに買収されたオンラインデザインツールFigmaの創業者、今春$8b(約1.2兆円)の評価額で$750m(約1,100億円)を資金調達した企業向けクレジットカードRampの創業者など、注目のスタートアップ経営者、そして著名ベンチャーキャピタル各社の名前が並んでいます。


会場の様子

イベントの様子

やはりアスリートのステージはいずれも超満員で、特にセリーナ・ウィリアムズは先月引退したばかりということもあり、大変な注目を集めました。
会場のセリーナ・ウィリアムズはリラックスした雰囲気の中、MasterclassやTonalなど有望スタートアップへの投資を成功させてきた投資家としての顔で様々な質問に答えました。終盤では、「またあなたのプレイを見るチャンスはある?」との問いかけに、「確率は高いわ、私の家に来て一緒にプレイすれば?」とウィットに富んだ答えを返し会場を沸かせていました。

国際情勢や経済環境を受け、「暗号資産の冬をどう乗り越えていくか」、「不況期の資金調達方法」など時勢を反映したテーマのセッションも多く見受けられましたが、全体としてはスタートアップが主役のイベントらしく、イグジットに成功した起業家などからの前向きなメッセージも多く、ポジティブな雰囲気に満ちていました。

しかしながら、会場の規模や来場者数はコロナ前の水準までは回復しておらず、会場も2019年までのMoscone Center Southでなく、別棟のMoscone Center Westに移り、展示スペースのブース数も減少している模様でした。


セリーナ・ウィリアムズのステージ

ピッチイベント最終決戦

TechCrunch’s Startup Battlefieldとして優勝者に10万ドルの賞金が送られるピッチイベントでは、最終決戦に5社が進出しました。

  1. Minerva Lithium
    従来の技術よりも安価で効率的で、環境負荷の低い方法でリチウムを抽出できる素材「Nano Mosaic」を開発する、大学からスピンアウトしたスタートアップ。
    この素材によって、従来は水の必要量が50万ガロン、抽出期間は24~36か月もかかっていたものが、3万ガロンの水で、たったの3日間で実現できるという画期的な技術です。
    素材は一見すると黒い砂利のようなものなのですが、壇上で実際に素材を使ったデモを実施することにより、聴衆の関心を集めていました。
  2. Intropic Materials
    彼らが開発した添加剤をプラスチック材料に加えることによって、従来の使い捨てプラスチックに堆肥後でも生分解性の機能が付与されるという技術を開発するスタートアップ。
    製造前の過程で添加剤を加えるため、製造工程そのものに影響がなく、汎用性の高い技術として着目されています。
  3. Advanced Ionics
    電気分解に必要な電力量を約50%削減することで、グリーン水素(再生可能エネルギーなどを使って、製造工程においてCO2を排出せずに作られた水素のこと)の価格低減を目指すスタートアップ。
    電力使用量と電力コストを最小限にしつつ、グリーン水素を生産を可能とする工業用電解槽を2025年に商用化予定です。
  4. AppMap
    開発者向けのオープンソースの動的ランタイムコード分析ツールを提供するスタートアップ。開発者がコードを書きながら、その挙動を確認することでソフトウェア実行時の問題を特定し、未然に防止することができます。
    コードエディタの拡張機能内でインタラクティブに動作するという直感的な設計にこだわって作られたプロダクトは、現在2万人以上のユーザーに使われており、IBMやNASAなど大手企業のエンジニアにも利用されているそうです。
  5. Swap Robotics
    100%電動の除雪ロボット、除草ロボットを製造するスタートアップ。従来の除雪車や除草車はガソリンを利用しているためCO2排出量が大きいのはもちろんのこと、走行しにくい土地での作業を必要とするため故障が頻繁に起こるそうですが、同社のロボットはソーラーパネルを搭載した電動車であり、かつ部品を減らすことによって故障することがめったにないそうです。
    1. 今年は、二酸化炭素排出量0、コスト1/6の精製技術を開発したMinerva Lithiumが栄冠に輝きました。近年盛り上がる気候テックにも関連するテクノロジーで創業チームは女性科学者という、非常に期待を集めるスタートアップです。


      スタートアップピッチの様子

      最後に

      イベント期間中は、5時ごろに会場でのセッションが終了した後、スポンサーや関連団体が主催するパーティーが街中のレストランやバーで行われ、筆者もいくつか参加したのですが、移動するのも大変な混雑ぶりで、会場の外には長蛇の列ができていました。
      イベント全体ではコロナ以前まで回復していないというものの、サンフランシスコで最大規模のスタートアップ関連イベントの存在感は失われておらず、世界各地から集まった参加者との交流することができました。

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