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2022年04月13日

SXSW2022参加レポートVol.2 ー注目のNFTコレクションブース

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。3/11~20にアメリカテキサス州オースティンにて開催された大型テックイベントSXSW2022(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト、以下SXSW)のレポート記事第二部をお届けしたいと思います。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

前回の記事でも少し触れた通り、今回のSXSWではどこもかしこもNFTというワードで溢れ、NFTというワードがタイトルに含まれるパネルディスカッションが全体の3分の1を占めると言われていたほどでした。私もNFTが配布されるセッションや、NFT関連のブースをいくつか見て回ったのですが、ここでは特に注目を集めていたNFTコレクションのブースを紹介したいと思います。

Doodles

1つめはDoodlesのブース。メイン会場であるオースティン・コンベンション・センターからワンブロック離れたところに作られたブースは、オープン前からそのカラフルな色彩の外観でひときわ存在感を示しており、ブース内部の期待感を煽りました。


Doodles出展ブースのイメージ 出典:https://sxsw.doodles.app/

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このイラストのようなカラフルでポップな世界観が実現されていました!


Doodles出展ブース入口

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人の小ささから、ブースの壮大さがお分かりいただけるかと思います!(一部のみの写真ですみません…)

人気の秘密は「コミュニティドリブン」

Doodlesは、カラフルな独特の色調で有名な1万点のNFTアートコレクションです。2021年10月にカナダのアーティストらによってリリースされて以降、北米を中心に瞬く間に人気のコレクションへと成長し、OpenSeaのランキングでも上位の常連となっています(※2022年3月現在)。

他の人気のNFTコレクションと同様、Snoop DogやSteve Aokiなどのセレブが所有していることでも有名です。Doodlesは、コミュニティドリブンなNFTアートとして知られ、このコミュニティをうまく活用することがブランディングにうまく寄与したと言われています。

その具体的な方法ですが、購入したユーザーが1000人に到達したタイミングで、Doodle所有者(Doodlerと呼ばれます)だけが参加できるDiscordを一旦クローズして、新たな参加者の加入を停止しました。そうすることによって、初期ユーザーに特別感を与えることができ、未所有者の間でも非常に話題になったようです。

その後Discordが再開された際に、インフルエンサーや著名人がコレクターとしてコミュニティに参加し、さらに人気のコレクションへと成長しました。(余談ですが、NFT界ではコミュニティ形成やマーケティングにDiscordを活用することが主流です。理由などは長くなるので、また別の記事に書こうと思います。)

Doodlerたちは、このコミュニティの中で、ブランドの方向性を議論したり、投票に参加したりすることができます。またDoodlerだけが参加できるイベントなども開催されているようです。今回のSXSWへの出展や、出展内容についても、Doodlerの投票によって決定されたとのこと。実際にブースの中にあったコーヒーショップ「Coffeedoods」やラーメンショップ「Noodles」はDoodlerからの提案がきっかけだそうです。

そのほかにも、Doodlerは自分が所有しているコレクションをブース展示の一部として表示したり、Doodler限定のアイテムを購入したりというように、このブース内での特別な体験ができる権利を与えられたそうです。NFTはそもそも唯一性が高く、所有していること自体の精神的満足度が高いアート商品との相性が非常によいとされてきましたが、所有するだけでなくこのような特別なコミュニティへの参加権が一種のステータスとなっており、むしろこちらの付加的な価値のほうに魅力を感じてNFTコレクターになる人も増えているそうです。

Shopifyと連携したハイブリッドなグッズ販売

今回のDoodlesのブースはShopifyとのコラボレーションにより実現しました。Shopifyは2021年7月に加盟店向けにNFTの取引を可能とするプラットフォームの提供を開始しており、Doodlesとのコラボもこれに続くものです。

DoodlesはSXSWにあわせて、初めてTシャツやキャップなどのフィジカルなグッズを作り限定販売しました。グッズはShopifyとコラボしたWEBサイトを経由して購入しますが、Doodlesを持っているか持っていないかで購入できるものに差分があったようで、購入者のステータスをShopifyのトークン認証(Token-gated)の仕組みを利用するよって判別していたそうです。

このグッズショップはShopifyがトークン認証をリアルの店舗で提供した初の試みにあたります。この販売方法もWEB3時代の未来のショッピング体験として注目を集めました。Twitterなどで購入の様子が見られるので興味のある方は見てみてください。
https://twitter.com/shopify/status/1503450539866177536?s=21


OpenSeaのDoodlesコレクションのページ

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私もこのブースを見てからすっかり魅力を感じ、どうにかゲットできないかと調べてみたのですが、Openseaでの購入価格が安いものでも16ETH(約500万円)でやむなく断念… このSXSWの出展効果もあってか、SXSW以降の価値は上昇傾向にあるようです。

FLUF World

2つ目に紹介するのは、FLUF Worldです。FLUF Worldのブースはオースティン・コンベンションセンターの1ブロック隣に存在しており、広大な敷地に特注のFLUF Dome villageを作りました。2日間限定のブースにも関わらずおよそ1200名の来場者を集め大盛況に終わったようです。白く巨大な3つのドームは外観だけでもかなり目立っていました。

私は夜の空いている時間帯に訪れたのですが、球体に映し出される没入型のアートはとても美しく一瞬で魅了されてしまいました。このドームの中で、WEB3やメタバースに関する数十回のセッションと所有者限定のナイトイベントがなされました。最近のアメリカのNFTのイベントではこのような球体のドームが設置されているのをよく見かけます。


FLUF Worldのブース

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ブースの様子。球体の巨大ドームが3つも出現し、内部では美しいデジタルアートが投影されたほか、DJを入れた音楽イベントや、パネルディスカッションもこの中で行われました。

メタバース経済を発展させるNFTコレクション

FLUF worldは、ウサギの3Dアニメーションで有名な、ニュージーランドの
Non Fungible Labsという企業が作成したNFTコレクションです。2021年8月に一般公開されてから約40分後には完売となり話題を集めました。


FLUF World 出典:ttps://www.fluf.world/

FLUF worldプロジェクトもまた、アートや単なるNFTコレクション以上の価値をもたらそうとしています。FLUF worldは自らをNFTコレクションであることに加え、グローバルでクリエイティブなコミュニティのメタバースエコシステムと定義しています。

このコレクションは背景や音楽を自由にカスタマイズすることができます。コレクション同士を交配させて新たなキャラクターを生み出すこともできます。このようにカスタマイズしたものも含め、購入したキャラクターの商業利用も許可されている点がFLUF worldの大きな特徴の一つです。このコレクションを使って所有者は収益を得ることができます。

さらに3D化されているため、購入した後、すぐにメタバース空間上でアバターとして使うことができます。それだけでなく、リアルとメタバース空間で行われるイベントなど、所有者だけが楽しめるオリジナルコンテンツへのアクセス権としても機能します。

SXSWオープンメタバースマニフェストを発表

今回のイベントでは、彼らが提唱するオープンメタバースについて熱い議論が交わされました。WEB3時代のメタバースは、旧来のWEB2時代のプラットフォーム中心のそれとは異なり、柔軟でインタラクティブなものとすべきであり、プラットフォーム間での相互運用性が鍵となる、というのが彼らの主張です。

メタバースがより発展し、誰もがアクセスしやすい環境を整えるために、FLUF worldは有識者やインフルエンサー、業界人を巻き込み、このSXSWの中でメタバースマニフェストを発表しました。Meta(旧Facebook)が考えるメタバースとは異なるものであり、FLUF worldが主張する完全に民主化されたオープンメタバースが来るのか、それともMetaのようなWEB2時代の大企業がビジネスモデルを変革してメタバースを主導するのか、今後の動きから目が離せません。

最後に

今回は世界的にも有名なDoodlesとFLUFのNFTコレクションの出展ブースについて紹介しました。いずれもNFTを持つこと以上の付加価値を提供し、所有者個人に発言権や参加権、商業利用権などを与えることによって、個人をエンパワメントする志向が強いという発見がありました。NFTコレクションが普及することにより、NFT関連のビジネスも多く誕生しています。米国でのNFT関連のトレンドにも注目していきたいと思います。

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SXSWはこれ以外にも街中のいたるところに巨大でかなり作りこまれたブースが出現していたのですが、なんとどのブースもイベント期間中3~4日しか出展をせず、出展期間が終わると容赦なく取り壊しを行っていました。結構壮大なブースなのにもったいないと感じてしまうのでした。

(第三部に続く)

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