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2023年01月26日

グリースピンアウト「QUANT」が社内を巻き込んだ方法 【キーマンインタビュー#2】

QUANT株式会社
山﨑陽平
2014年慶應義塾大学総合政策学部卒業後、グリー株式会社に新卒入社。デジタル広告の営業からスタートし、2016年1月から営業マネージャー、4月から新規事業責任者、2018年10月には営業本部長に就任。2021年4月からQUANT事業の責任者となり、2022年10月にQUANT株式会社の代表取締役社長に就任。

グリーは1月4日、企業のデジタル化支援事業を手掛けるGlossomのソーシャルコマース事業を承継させる形で新たな100%子会社、QUANT(クアント)を2023年1月1日付で設立しました。同社は個人のインフルエンサーやクリエイターが活躍する「クリエイターエコノミー」を基盤とするデジタルマーケティング事業を柱としており、グリーに新卒入社し、デジタル広告や新規事業の責任者を務めた山﨑陽平氏が代表取締役社長に就任しています。


記事の前半では社内事業がどのようにして立ち上がっていったのか、その経緯をQUANT代表取締役社長の山﨑氏にお伺いしました。後半では事業をスピンアウトし、子会社化していった流れを伺います。(質問は全てMUGENLABO Magazine編集部、回答は山﨑陽平氏)

前編はこちら:グリー新卒から新会社代表へ、インフルエンサーマーケ「QUANT」はどう生まれた?【キーマンインタビュー#1】

前半に続いて、子会社化に至るまでの流れを教えてください。

山﨑:スピンアウトの背景で(事業が成長したこととは別に)もうひとつ重要なものとして、グリーグループで若手の経営者層を育成していくというものがあります。私自身が2014年の4月にグリーに新卒で入社して、ちょうど今年の4月から10年目に入るという年になります。

さらに若い人も含めて経営層としてのレベル感に押し上げていくためにも、若い段階で子会社経営の部分から入ってもらって学びを深めて、ゆくゆくはグリー全体の経営を担える人材となるように育てたいという狙いもあります。その両軸の掛け合わせでスピンアウトしたというところが背景になっています。

社内で事業を立ち上げる、またスピンアウトに至るまでどのように社内を巻き込んでいったのか伺います。まず、逆境たくさんあったと思いますがどのように乗り越えられましたか?

山﨑:我々は2021年7月からこのサービスをリリースしているのですが、それよりも前に同じような事業形態をされている会社が何社かありました。その中でも最近上場した会社でtoridori(トリドリ)さんは東証グロースに上場しているのですが、まさに先行して我々のビジネスと同じようなことをやっていて、当時、我々の売り上げの何倍もあったのです。

これはよく私の上司とかと話すのですが、他人ができて我々ができない理由が1個もない。もしあるとしたら根性がないとか、気合が足りないとかそういう話になってきます(笑)。

グリーグループのメンバーはやはり優秀な人がすごく多くて理解も早く、人間性も良いメンバーがいる中で、ベンチマークにしている会社にどうやったら追いつき、追い越せるのか。頭をひねりまくってあらゆる手を尽くしていけば、必ずや国内のシェアを取っていけるという、精神論ではないですがそのあたりは逆境の乗り越え方でしょうか。

気合い的な話で恐縮なのですが諦めるという言葉はあまりなく、これが他社も全然うまくいっていなければまた話は変わってくるのですが、他社は上場するなど僕らがうまくいかないという言い訳を逆に出すことが難しいという前提で進めていました。もっと細かい乗り越え方は、例えばフォーメーションを変えたり役職を変えたりなど、そのような『How』に取り組んでいった感じです。

そもそも会社のカルチャーとして根付いているのですね

山﨑:グリーという会社はチャレンジには寛容だと思います。それをやってる僕に怒る人はいないですね。ちゃんと真面目にクライアント様の課題に向き合ったり、インフルエンサーのことを思った上で取り組んでいることは大前提としてすごく重要ですが、利己的であったり、変に肩入れすることで全体のバランスを崩すようなことがなければ、そのチャレンジを止める人はそもそも存在しない文化だと思ってます。


QUANTチームの皆さん

新規事業を立ち上げるにあたってどうすればいいかわからない方もいらっしゃると思うのですが、山﨑さんは手弁当で動かれたとお話されていました。そのあたり少し具体的に教えていただけますか?

椛沢:手弁当で言うと、アサインに関してなどは私自身がInstagramでインフルエンサーを見つけてダイレクトメッセージを送ってという話なので、完全に自分だけでできるため(社外に支払う)お金はかかりません。開発周りで言うと、アフィリエイトのシステムになるので計測が必要です。

例えばインフルエンサーAさん、Bさん、Cさんそれぞれにパラメータを分けるっていう作業が必要になります。さすがにシステムなしでは出来ませんが、元々グリーで持っていた別の広告サービスの応用でいけるのではないかと思いつきまして、すぐエンジニアさんを飲みに誘って熱く語りました。

まるでチームメンバーを集めているスタートアップのようですね

山﨑:今こういうこと考えてるけれど(外注する)資金はない。今はまだ会社に対して出してくれと言いたくない。今言ってしまうとあらゆる理由で難しいと言われてしまうかもしれないから、結果を出してから資金を欲しいと言いたい。今はお金はないけれど、今あなたがやっているこのサービスのこのシステムのこの部分は使えると思う。こんな感じで組み合わせると、ちょっと無理やり感は否めないけれど計測ができる。その計測した結果のレポートは全部、Excelでいい。Excelを毎日手でポチポチと更新してくれたらクライアント様に渡すから、既存のシステムのここの部分を仲の良いエンジニアさんにお願いして作ってもらう。そういうことをやってました。

リソースが足りないと嘆く前に自分で動く。社内には仲間がいる、ということですね

山﨑:そこはもうボランティアぐらいの感じです(笑)。一番のポイントはクライアント様が理解してくれてビジネスとして成立するかどうかですが、前述の製薬会社さんからOKいただけました。当時0円の状況から売り上げを数千万円程度までは持っていきました。数千万円を達成するまでは、既存システムの応用で無理やり作ったものとExcelやスプレッドシート1枚でやってました。

そこまでやると営業利益も結構出るので、ようやくそこで少人数ですが人をアサインしたりシステム作ってみようといった話になりますし、そこまでのレベルが出ていれば、グリーの上層部に話を持っていったとしても予算化の話ができます。そこまでは元々グリーで積み上げてきた自分の人脈をフルに活用してやってみたというのが今回のチャレンジでした。

企業内起業もやることは外のスタートアップと同じですね

山﨑:行動力があるのか自分自身では分からないですが、やはり一緒に動いてくれる仲間がいることが一番大きいですね。僕のよく分からない話を信じて、エンジニアが快く自分のプライベートな時間を割いてでもやってみましょうと言ってくれるかどうかは、やはり信頼の積み上げだったり過去からのリレーションだったりするので、そこありきだった気がします。

その製薬会社さんにはずっとお付き合いいただいていて、そこまで言うならやってみるかという感じで、現在もすごくご贔屓にしていただいています。その辺の関係構築が一番大きかったかなと思います。

山﨑さんの後に続く人も出てくるのではないでしょうか?

山﨑:私は32歳になるのですが、できれば希望としてはもう少し若く、26、27、28ぐらいからこういうチャレンジができるとより経験値を深めて強い経営者候補が出せると思います。あと、やはりIT業界は転職がすごく多いんです。私はご縁もあって10年いますが、同期には辞めてしまった人も多くて、それはもったいないなと思っていて。

グリーグループだからできるみたいなことだったりとか、長くいるからできるリレーションとかこういったものもあるので、そういうチャレンジ、そういう可能性を早い段階で見出してもらって、より長くいい意味で働いてもらって、本人としてのキャリアも強く太くする、そういう経験を積んで欲しいです。僕の背中を見て20〜25ぐらいの子たちから目標にしてもらえたら一番いいなと思ってやっています。

大企業の新規事業とも違い、自分で立ち上げるスタートアップともまた違う、新しいタイプの起業のカタチかもしれませんね

山﨑:おっしゃった通り、トップの田中(良和氏・グリー代表取締役会長兼社長)からも先程お話したグリー役員の足立からもすごく言われてることが、思い切って振り抜いてくれと。それが空振りでもホームランでもヒットでも、まずは打席に立って思い切りやってくれと。

その経験が最終的にグリーの糧になるから。もちろん失敗してくれとは言わないし、成功するように頑張ってほしいけれども、あんまり失敗を恐れるよりも振り抜いてもらって大きく打ってほしいということはすごく言ってもらっています。

その辺の懐の深さはグリーグループが裾野広く、かつ体力があるからこそ言える話かなと思うので、そこは本当にあやかってるところかなと思います。

ありがとうございました

前編はこちら:グリー新卒から新会社代表へ、インフルエンサーマーケ「QUANT」はどう生まれた?【キーマンインタビュー#1】

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