- インタビュー
2024年05月31日
流通総額は70億円突破「寄付DX」コングラント、目指すは“届くべき先にお金が行き届く世界”/【KDDI推しスタ】
- コングラント株式会社
佐藤 正隆 - 代表取締役CEO
NPO(非営利団体)向けに寄付の募集から決済、CRMに至るまで一気通貫で支援するオンライン決済システムを提供するのが、2020年設立のコングラントです。IT関連の制作を手掛けるリタワークスの一事業として2017年9月に立ち上がったサービスをスピンオフして、スタートアップされています。
同社は「挑戦するすべての寄付を支える」というミッションを掲げており、サービス開始以降、導入団体は約2,400団体、寄付の流通総額は70億円を突破。また、ライフスタイルブランド「Yogibo(ヨギボー)」のサポートによる決済手数料0%の寄付型クラウドファンディング「GIVING100(ギビングハンドレッド) by Yogibo」などの独自助成プログラムも提供し、多角的に国内寄付に関するデジタル化を進めているのが特徴です。
NPOにフォーカスして事業を展開し始めた理由や、他社の手がけるクラウドファンディングとのちがいなど、代表取締役CEOの佐藤正隆氏にお聞きしました。
寄付版「BASE」
流通総額を大きく伸ばしているコングラントです。コングラントの提供するNPO向け寄付決済システム「congrant(コングラント)」は、各団体がプロジェクトページを作成し、支援者から寄付を募集することが可能になるものです。クレジットカードやペイメントサービスによる決済や領収書発行、支援者のデータ管理やメールの一斉送信といったCRMに至るまで、寄付にまつわるプロセスを効率化する機能が揃っています。
お金を集める仕組みというと、昨今はクラウドファンディングが思い浮かぶかもしれません。CAMPFIREやREADYFORといった大手クラウドファンディングサービスもありますが、コングラントとの違いを、モール型ECの楽天市場と自社サイト型ECのBASEのようなものだと佐藤氏は説明します。
例えば子ども食堂のような活動があったとします。これは単発のキャンペーン的に一時の活動を宣伝するのではなく、地道に賛同していただける企業や個人に丁寧に説明し、継続的なファンを集める必要があります。逆に言えば、賛同してくれる人を集めることができれば、毎年、継続的な支援を期待できるようにもなります。支援者集めは自社でやるため用意したサイトに決済機能や管理機能がついていれば可能になるはずです。
そこでコングラントでは各団体が独自のページを構築し、支援者から寄付を募ることができる仕組みを用意したわけです。寄付は、単発のクラウドファンディング形式と毎月・毎年の定額課金形式を設定可能で、継続的にNPOを支援できる仕組みとなっており、法人からの寄付にも活用されています。
またコングラントが「ECモール」のような形式ではなく決済にフォーカスした結果、手数料にも大きな影響を与えることになりました。モール的な場所での宣伝がない分、手数料は一般的な決済代行と同じ3%台(別途月額で数千円が必要)を実現しています。
佐藤氏のお話によると、NPO、病院、大学、博物館など、佐藤氏たちが今後展開を狙うソーシャルセクター全体で年間約7,000億円の法人寄付がされており、ここを取り込むことでコングラントは持続的な成長が可能で、流通総額も100億円の大台突破が見えてきているということでした。
現在はユーザーの対象となるセクターをどんどん広げています。私たちの取り組む『寄付DX』は、新しいフィンテックの領域だと考えていますね。
佐藤氏
手数料「0円」の仕組み
GIVING100 by Yogiboでは手数料をYogiboが負担する
一方、決済システムだけでなく、コングラントでは寄付の募集をサポートするための助成プログラムも用意されています。なかでもビーズクッションで有名なライフスタイルブランド「Yogibo」のサポートで運営されている寄付型クラウドファンディング「GIVING100 by Yogibo」は、決済手数料をYogiboが負担することで支援者の寄付金が全額届けられるという内容となっています。そのメリットを佐藤氏は次のように説明してくれました。
Yogiboからすると、一つひとつの団体に寄付するよりも、さらに多くの団体に支援を届けられるというメリットがあります。またGIVING100を活用した団体が自ら発信してくれるので、大きなPR効果もあると思いますね。
佐藤氏
コングラントの今後の展開について、佐藤氏は寄付の領域で決済プラットフォーム化を進めていくといいます。NPOにとどまらず、医療や教育といった分野にも進出し、個人寄付だけでも1兆円を超える市場で寄付DXを横展開していきます。
社会で足りていないピースを埋めるために負を解決することが、自分の起業家精神の原点です。対象領域を広げながら、寄付DXでナンバーワンになります。
佐藤氏
届くべき先にお金が行き届く世界に
各社で作成した寄付を呼びかけるページが並ぶ
佐藤氏は2008年に、病院とNPOに特化したWEBサービスやシステム開発を手がけるリタワークスを創業しました。事業を展開するなかで、NPOの抱える資金調達の課題に着目しました。
リソースの不足などの問題から、NPOが上手く資金を集めることができていない状況を目の当たりにしました。ITを駆使して資金を効率よく届けられれば、NPOの活動をさらに活性化できると考え、サービスの開発に取り組み始めたのです。
佐藤氏
この課題設定は多くの事業者に受け入れられ、決済流通総額は順調に積みあがることになります。制作会社の一事業ではなく、より柔軟な拡大を目指しリタワークスから独立するかたちで、コングラントを創業しました。佐藤氏は同社の経営に専念することとなったそうです。
佐藤氏によると、日本でも「募金」という習慣が浸透しており、その金額規模も大きな一方、支援対象に資金を供給するための構造に問題があるといいます。寄付文化の広がっているアメリカでは寄付決済のプロダクトが洗練されており、日本でもそうした決済システムを提供することで、NPOによる導入のハードルが下がり、支援者も寄付が容易になります。その結果、届くべき先にお金が行き届くのです。佐藤氏は改めてこの事業の意義を次のようにコメントしてくれました。
コングラントには、『あらゆる困難に寄付が届く世界を実現する』というビジョンがあります。このビジョン実現に向けて、国内ソーシャルセクターの資金不足と支援者側の寄付ストレスを解消していきます。
佐藤氏