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2024年07月03日

COLLISION2024参加レポートーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、6/17~6/20の期間で、カナダのトロントにて開催されたテックカンファレンスCollision 2024(以下Collision)についてお届けします!


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

Collisionとは

Collisionは、Web Summitが主催し、毎年6月ごろにカナダ(トロント)にて開催されるテックイベントです。北米で最も急成長しているテックカンファレンスとして知られ、開催期間中は130か国以上から、ユニコーン企業の創業者、投資家、スタートアップ、メディアなど約4万人の参加者が集まります。今年の来場者は約3.8万人、展示社数は約1,600社となり、いずれもイベント史上最高記録となりました。

また、参加スタートアップの45%が女性起業家、約23%は黒人または先住民による起業、約12%はClimate Tech、Healthcare Tech、Deep Techなどのインパクト企業となっており、非常に多様性に富んだ顔ぶれでした。トロントは「北のシリコンバレー」と呼ばれ、カナダ最大、北米で 3 番目に大きいテクノロジー拠点を擁しており、過去5年間にわたってCollision開催の地となっていましたが、本イベントは今年でトロントを離れ、2025年はバンクーバーで後継イベントとなるWeb Summit Vancouverの開催が決まっています。

一色一色
昨年のレポートはこちらをご覧ください!

注目を浴びたセッション:The real world impact of AI

登壇者:Geoffrey Hinton(University of Toronto), Stephen Marche

元Googleで、AIのゴッドファーザーの異名を持つHinton氏は、昨年から連続してメインステージに登壇し、AIが人類にもたらすリスクについて警鐘を鳴らしました。Hinton氏は先述したCohere CEOのGomez氏とは対照的で、AIの普及に伴うリスクや課題などのネガティブな点に目を向けています。Hinton氏は、AIに関する問題として、殺傷能力を持つ自律走行型兵器、選挙の際に使用されるフェイクビデオ、AI代替による雇用機会損失、所得格差の拡大、サイバー犯罪、バイオテロ、アラインメント問題(AIが人間の価値観に従って行動することへの保証)、AIが人間のコントロールを超えるという現実的脅威(AIによる人間の奴隷化)などを挙げており、最も大きな懸念事項は最後に述べた現実的脅威であると述べました。

現在の技術開発競争と十分な安全対策の欠如を考慮すると、AI開発が最終的に人間からコントロールを奪い、AIが人間を支配する可能性があるといいます。Hinton氏がGoogleを離れた一因として、この現実的脅威に対処したいという考えもあったと説明した上で、この脅威への対策として大企業が現実的脅威に関する研究に投資すること、ディープフェイクに対抗するための公的キャンペーンを実施することであると述べました。AI開発における潜在的利点については、特に過疎地域での医療診断や生産性の向上に触れ、これらによって得られる利益の不平等な分配への懸念について発言しました。今後、AIの開発と使用については、倫理的な議論を深め、適切な規制を策定していくことが重要であると聴衆に訴えました。

スタートアップピッチ

今年のCollisionのPitchコンペティションに応募した企業は累計560社であり、プレゼンテーションに選ばれたのはわずか70社でした。セミファイナルで10社まで絞られた上で、最終日のファイナルピッチには3社がそれぞれ熱いプレゼンを行いました。ファイナリスト3社について以下ご紹介します。

  1. VoxCell BioInnovation(優勝企業)
    「ユニバーサルバイオインクキット」を使用した複雑な3Dバイオプリンティング技術によって、模擬的な天然の軟組織(imitation natural softtissue、筋肉や脂肪、血管などの体の支持組織)を作成します。この技術によって、製薬会社の化学療法薬の成功率を高め、新薬テストのプロセスを短縮することができます。現在は、ヒト型がん組織モデルのプリンティングに注力しており、10のパイロットプロジェクトを推進しています。シードの資金調達ラウンドはオーバーサブスクライブと、注目を集めています。                     

    会場の様子

  2. 一色一色
    堂々としたプレゼンが印象的でした!
  3. Biofect Innovations
    微生物を発酵させる伝統的な技術を用いて、サステナビリティに配慮した植物ベースのタンパク質原料の生産を行います。シュガーフリーで、フレーバーつきの甘いプロテインを生成することができる独自の技術を持ちます。今後は食品、飲料系ブランドと提携し、クライアントの商品にフィットするタンパク質原料を提供する予定です。
  4. Proceve
    エンタープライズ向けのプロジェクトマネジメントツールを開発しています。目標管理からタスクの振り分け、関連ドキュメントの管理や課題管理などすべての機能をAll-in-oneで一元的に利用が可能です。このツールによって、300行を超えるコードを約30秒で生成できます。

面会したスタートアップ企業

会期中に個別面会したスタートアップは10社程度で、AI、リテールテックを中心に面会を行いました。シードステージの企業が多く、投資観点では少しアーリーだが、プロダクトの進捗については引き続きウォッチしていきたいです。印書的な企業を以下3社ご紹介します。

  1. VoxCell BioInnovation
    LLMベースのAIチャットボット向けの、分析&評価ソリューションを提供しています。実際の会話内容を分析して回答の適正化や、学習内容をレビューしてより安全な回答生成ができるようにします。ChatGPTなどのLLMのためのGoogle Analyticsというイメージで、PwCがディストリビューションパートナーを務めています。 
  2. AutoAlign AI
    安全で、効果的かつ信頼性の高い生成AIの導入を可能とするAIダイナミックファイアウォールの開発や、生成AI向けの保険などを提供しています。まだシードステージの企業だが、KPMG、NVIDIAとのパートナーシップが進んでいるとのことで、Collisionの中でも単独でのステージ登壇をしており、業界でも注目度の高そうな企業である印象でした。
  3. Arkeo Ai
    SalesforceやHubspotなどの既存CRMと統合可能なAICopilotを提供しています。営業パイプラインの最新情報からクロージングの優先順位付けを行い、ディール獲得までの期間短縮及び合理化することができます。

最後に

今回のCollisionは、昨年にも増してAIに関連するトピックが多くのセッションで取り上げられ、VC、スタートアップ、エンタープライズのどの業界においても最も注目されている技術領域であるということを改めて認識できました。また全体的にAIに対してポジティブな考えを持つスピーカーが多く、逆にAI技術に対して牽制の姿勢を取るEUの法規制に対してストレートに否定的な発言をする登壇が目立ちました。

トロントにベースを置くCohereなど、カナダ発のユニコーンスタートアップも複数出てきており、この背景にはトロント大学や政府がリーダーシップを持って推進してきたスタートアップエコシステムの形成支援の成果だと感じました!来年からはバンクーバーでの開催となりますが、カナダ西海岸におけるスタートアップエコシステムや地域特性などをキャッチアップした上で、有益な参加に結び付けていきたいです。

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