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2023年07月11日
COLLISION2023参加レポートーー海外トレンドレポート
KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。
今回は、6/27~6/29の期間で、カナダのトロントにて開催されたテックカンファレンスCollision 2023(以下Collision)についてお届けします!
- 一色 望KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。
Collision概要
Collisionは、毎年6月に開催されるカナダの中では最大の大規模なテクノロジーカンファレンスで、スタートアップ、投資家、イノベーターなどが一堂に会し、最新のテクノロジートレンドやイノベーションについて議論する場として知られます。
今年は北米を中心として世界中から40,000名以上が集まったと見られており、推計で140カ国から700名以上の講演者、2,000社のスタートアップ、1,250名のメディア関係者やジャーナリスト、950名の投資家、100社のユニコーン企業が参加したと見られます。私は今年で2回目の本イベント参加となりますが、昨年と比較しても、参加者は少し増加したようで、会場は大勢の人で賑わっていました。
- 一色
- 昨年のレポートはこちらをご覧ください!
また、テクノロジー領域への女性の積極的進出もサポートしている本イベントでは、全体の41%の参加者が女性となっており、長年にわたって実施している女性向けのテックプログラム「Women In Tech」もイベント開催の数週間前にチケットが完売するほどの盛況ぶりとなりました。
今年のCollisionでは、モビリティやクリエイター、ヘルスケア、暗号通貨、サステナビリティ、SaaSなどの20 以上のトラックが用意され、今話題のGenerative AIについても、例に漏れずCollision内の多数のセッションでテーマに掲げられていました。
注目を浴びたセッション:AIのゴッドファーザー Geoffrey Hinton氏
Collisionの中で最も注目を集めた講演は、40年以上AI研究に携わり、AI研究の権威として知られ、「AIのゴッドファーザー」の異名を持つトロント大学のジェフリー・ヒントン教授によるセッションだったと思います。業界的にはAIに対して肯定的な論調のメディアや企業が多い中、ヒントン氏は講演全体を通してAIに潜むリスクや懸念を提唱しました。
彼の講演の中でのコメントを抜粋していくつか掲載します。
- AIによって創出される、あるいは失われる職業がどの程度あるのかわからないが、家具の修理や配管など、順応性が高く身体的な熟練性が必要な仕事は、AIによって代替するのが困難であり、今後も生き残る。
- 今後5年間でAIに関する最もインパクトの大きい改善は、マルチモーダルな言語モデルになると思う。言語だけでなく映像などあらゆる種類の情報を分析・学習することができるため、我々は言語だけではなくより多くの事柄を理解することができるようになる。ヒントン氏はまさに今GoogleとマルチモーダルAIに関する研究を進めている。
- 良いAIが悪いAIをコントロールできるとは確信できない。AIの倫理性を保つことには大きな代償が発生する可能性がある。非常に心配しているのは戦闘ロボットである。軍事的目的でのAIの販売を禁じるようなことも必要かもしれない。また、雇用の問題にについても社会的政策を考える必要がある。
- AIの進歩は避けられないが、人々によってより良いものにしていくためには、良くない副作用やリスクに注意を払うべきである。
- AI開発者はもちろんのこと、AIを利用する私たちも、メリットとデメリットをよく理解し、倫理的意識を持ち合わせておくことが必要だということを再認識することができました。
- 一色
- 最も盛況だったジェフリー・ヒントン教授のプログラムは、着席エリアの間にも立ち見客がひしめき合って、熱心に講演に耳を傾けていました。
スタートアップピッチ
世界中から70以上のアーリーステージのスタートアップが参加したピッチバトルでは、3社が決勝に残り、最終日のファイナルプレゼンに臨みました。ファイナリストの3社は以下の通りです。
- Syzl
Syzlは、業務用キッチンスペースを時間単位でレンタルできる急成長中のスタートアップです。地元トロントを拠点に、1000以上のユーザー、70以上のキッチンスペースが登録されています。カナダへの移民であるファウンダーらによって立ち上げられたこの企業は、移民にとって最も簡単で迅速に収益を得る方法の一つである食事販売をサポートすることをミッションに掲げ、この事業を始めました。Syzlのプレゼンの様子
- 一色
- 堂々としたプレゼンが印象的でした!
- Fractionum
Fractionumは、カナダで初めて認可された不動産への分割投資を可能にするプラットフォームを提供する、カナダのスタートアップです。ユーザーは、事務手続きもや口座最低額などを気にすることなく、1ドルからでも簡単に不動産投資を始めることができます - NLPatent
AIをベースとする特許検索&分析プラットフォームです。独自に開発されたLLMを利用することにより、弁理士などの専門家による調査よりも早く、正確なプロセスを実現しました。実際に法律事務所でも利用されていることから信頼性の高さがうかがえます。
熱気溢れる展示会場
スタートアップの展示は、28の領域とステージ(ALPHA、BETA、GROWTHの3段階)で区分けされていました。今年はAI&マシーンラーニング、エンタープライズSaaSソフトウェアの出展が多くなっており、それぞれ合計で240社程度の出展があったようです。
Collisionの展示は1日ごとに出展企業が入れ替わりますので、重点的に見ておきたい領域や企業が定まっている場合は、アプリで事前にコンタクトを取っておくなどの対策を打っておくと効率的に会場を回ることができます。
スタートアップ展示コーナー
- 一色
- 1社ごとのスペースはかなりコンパクトで、一日ごとに展示企業が目まぐるしく入れ替わります。
全体の展示の中で最も行列ができていたブースはGoogleだったように思います。Googleが提供する会話型の生成AI「Bard」の体験コーナーや、GoogleLensを利用してメニュー翻訳を行い、ドリンクが注文できるコーナーなどが用意されていて、連日多くの人がブースに集まっていました。
Googleのブース。会場の中では最も大きい展示ブースを構えていたと思われます。
ドリンクコーナーには行列も。ドリンク受け取り時にはGoogleのロゴカラーにちなんだ色とりどりのマカロンももらえました。
ドリンク時のメニューはなんと日本語のみ。Google Lensで翻訳して、オーダーすることができます。
サイドイベント
昨年は日程的にもほとんど参加できなかったサイドイベントですが、今年はカナダ領事館の方のご厚意もあって、多くのサイドイベントにも参加することができ、現地のVCやインキュベーター、スタートアップとのよい交流の機会を持つことができました。また、JETROが主催するイベントでは、会場ではあまりお見かけすることのなかった日本人駐在員や出張者の方々ともお会いすることができました。
最後に
今回はCollisionについてお届けしました。昨年の印象と変わらず、B2CよりもB2B向けのソリューションが多く出展されていて、期間中にカナダを拠点とするスタートアップ十数社とも面会することができました。Collision以降、夏の間はテックイベントは例年少なくなるのですが、また面白いイベントに参加しましたら、レポートしたいと思います。
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