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2023年08月14日

大手テック系メディア36Krによるスタートアップイベント「 Waves」ー参加レポートー

2023年6月、北京の金海湖国際会議展覧センターで、大手テック系メディア36Krによるスタートアップイベント Wavesが開催されました。 今回のイベントでは、「The Wave Favours the Young」をテーマに、メイン会場に加え、アウトドアキャンプ場、出店マーケット、ベンチャーサロン、バンド、野外映画、キャンプパネルなどの新たなアクティビティが設置され、若い創業者や投資家に焦点を当てた新しいビジネスイベントが開催されました。


熊 雨(Xiong Yula)KDDI中国
本誌の記者。KDDI Open Innovation Fundの中国 上海拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。

イベント概要

36Krは月間5億PVを誇る、中国最大級のテック、スタートアップ専門メディアです(日本版はこちら)。2017年から、36Krは毎年「36Under36」(36歳以下の素晴らしい投資家シリーズ)の選出と発表を行っています。2018年からは、36歳以下の創業者リストも発表され、当時35歳だったByteDance創業者の張一鳴を筆頭に、その後業界を代表することとなる経営者を多く選出してきました。

当時はByteDanceの評価額がまだ750億ドル、曲芳と毛文超が一緒に創業したRed Bookのユーザー数も5000万人を突破したばかりの頃であり、「36Under36」は中国のスタートアップ業界の次のスターを発見できるリストと認知されると共に、中国国内のベンチャーキャピタル市場において若手ベンチャーキャピタリストと創業者に最も影響力のある賞の一つになりました。

今回のイベント「WAVES」は、「36Under36」と従来から行っていた起業家向けイベントを統合し、特に若い世代の起業家、投資家のオープンなコミュニケーションを実現することを目的に開催されました。著名な投資家、起業家によるスピーチ、パネルディスカッション、特別対談等が行われ、会場は賑わいを見せていました。

会場の様子

セッション

現地では「人工知能」「生命科学」「新エネルギー」「スマート製造」といったトピックでそれぞれ多くのセッションが行われました。新しい1対1の特別対談で、DCM中国創業パートナーの林氏とTiamat創業者兼CEOの毛氏は、それぞれの起業する時の話を語りました。DCMの林氏は、1995年スタンフォード大学の同級生と一緒に中国語ポータルサイトHuayuan.comを立ち上げた後、このサイトはポータルサイトの四通利方と合併し、今日の新浪(Sina)となっています。 新浪(Sina)傘下のWeiboは月間ユーザー数は5.9億を誇る中国版のTwitterです。

Tiamatは、2021年に設立された中国初の生成AIプラットフォームです。 自社開発したMorpherVLMは、概念融合パラダイムに基づき、中国で最初のクロスモーダルAIGC(AI Generated Content)です。Tiamat創業者兼CEOの毛氏は2000年以降に生まれた若い創業者で、大学在学時にTiamatを設立しました。現在中国の地下鉄内、商業施設内など、多くの場所でTiamatで生成した画像が利用されています。


筆者がTiamatを使って生成した画像

ピッチイベント

他の会場では、36Kr社のアクセラレータープログラム参加企業を中心としたピッチイベントが行われました。KDDI Open Innovation Fund上海拠点の笠井と私も審査員として参加させていただきました。本ピッチ参加企業の中で、特に注目を集めたのは新しい風力発電に取り組むスタートアップでした。

  • Sawes
    Sawesは成層圏浮体式風力発電システムの開発を行う企業です。風力の強い1万メートルの高空に浮かぶ飛行船型の発電装置を用いることで、kWhあたりのコストは火力発電(最も安価な一般的エネルギー源)の約10分の1となります。当社は2024年8月に3000m高空でテスト、2025年4月に 1万mでの商用化飛行の開始を予定しています。


    Sawes風力発電イメージ図

ネットワーキング

36under36の授賞式並びにネットワーキングはアウトドアで行われました。会場は北京郊外の金海湖の碧波島に設営され、芝生での野外映画上映、テントでのミーティングなど、中国の昨今のキャンプブームを取り入れ、若いベンチャーキャピタリストと起業家のコミュニティを作ろうという意図が見えるものとなりました。美しい風景と自由な雰囲気の中での新しい体験は、大会を参加した人に強い印象を残しました。

碧波島会場の様子

今年の「36Under36」は500人以上の起業家と200人の投資家を対象とした二次審査を経て、合計120人の起業家と36人の投資家を選出しました。このリストに掲載された120人の起業家には、最先端テクノロジー、先端製造業、スマート・ハードウェア、新エネルギー、産業向上、SaaS、ヘルスケア、地域生活など、様々な事業領域の経営者が含まれています。 受賞者のうち41人が海外の有名大学で学位を取得し、34%が博士号以上、35%が修士号以上を取得しており、 60%以上が研究開発をバックグラウンドとしていることも大きな特徴となっています。

また、2000年代以降に産まれた経営者の増加も目立ちます。 今回のリストに選出された起業家の平均年齢は32.9歳ですが、半導体パッケージング材料の研究開発メーカーであるゴールデン・ダイヤモンド・テクノロジー会社の創業者兼CEOの潘远志氏は、2001年生まれで、最も若い受賞者となりました。先に紹介したTiamat創業者兼CEOの毛氏も受賞者の一人です。

リストはこちらをご参照:https://mp.weixin.qq.com/s/39p1FBjkXLv9izl9eny48Q


授賞式


授賞者のトロフィー

これら授賞者の中から、多くの新しいユニコーン企業が生まれることが期待されます!引き続き、中国のスタートアップ業界の動きをお届けしていきたいと思います。

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