代表取締役の山城氏に伺いました

何をしている会社ですか？

山城：量子アニーリング技術をつかった高速な数理最適化計算が注目を浴びていますが、現状では非専門家が扱うことは非常に難しいです。Jijはそのギャップを埋めるミドルウェアJijZept（ジェイアイジェイゼプト）をクラウドサービスとして展開しています。

JijZeptは、数理モデルの構築を行いやすくするためのJijModelingというツールや、各最適化アルゴリズムの性能を引き出すためのハイブリッドアルゴリズム、面倒なパラメータの調整や量子アニーリングマシンから出力される0-1の羅列を見やすくするための分析ツールを提供します。

これらのツール群により非専門家の開発者でも量子アニーリング技術を使った研究開発・アプリケーション開発の支援を行うのがJijZeptです。またJijZeptを使った数理最適化技術の技術開発支援も行っており、企業のDXを数理最適化によって加速する事業をおこなっています。

なぜ会社を立ち上げたのですか？

山城：JijはJST（科学技術振興機構）のSTARTという研究プロジェクトから設立されたスタートアップです。元々私は基礎物理学の研究を行なっていましたが、物理学の技術を社会実装することに興味を持っていました。これまでの科学と技術の社会発展の歴史を振り返ると科学と技術・社会は交互に発展を遂げています。ここで少し、物理学と社会の交互の発展の歴史を振り返ってみます。

産業革命の頃に鉄の温度と色の関係を知りたいという工業的な理由で、量子力学が発見されます。量子力学はそれまでの物理学と大きく異なる理論であり、量子力学の発見で自然への理解が大きく進むことになります。量子力学の発見で次は半導体技術が進み、コンピュータが誕生し、情報革命が起きました。情報処理の発達により次は量子情報科学という新しい量子力学の見方が進んでいきます。そして現代はこの量子情報科学による社会を大きく変えうる技術として量子コンピュータなどの量子技術の開発が進んでいます。

このように歴史と物理学を振り返ると社会と物理学は交互に相互作用しながら発展しています。私は新しい物理学の道を切り開くためにも現在発達している量子情報科学によって社会を次の一歩へ進める必要があると考えており、そのために物理学の技術を社会実装するための会社としてJijを創業しました。

これからの目標はありますか？

山城：現代はインターネット・センサーの浸透によってデータが集まるようになり、機械学習の発達によりデータの分析・予測が行えるようになってきました。しかしデータを使ったビジネスプロセスでは分析・予測の後にその結果を使って意思決定・計画というプロセスが必要です。

例えば物流分野などであれば、予測分析により各店舗での必要な需要量を予測し、その予測量によって必要な配送計画（配送ルートの決定）を構築する必要があります。この最後の計画のプロセスをデジタル化するのが数理最適化技術です。

JijZeptは企業の数理最適化基盤として広まっていくことで社会のOS（オペレーティングシステム）となることを目標としています。JijZeptによって誰でもパワフルな計算能力を持った数理最適化技術を利用できるようになり、さまざまな計画の構築などがより精度高く構築でき、少ないリソースでビジネスを大きくスケールさせることが可能になっていくと考えています。

最後に一言お願いします

山城：数理最適化のための量子技術はこれからのDXの実現のために重要なコア技術となりますが、技術的に解決するべき課題や実際の社会課題と照らしわせて技術を伸ばしていく必要があります。量子技術を用いて新たな価値を創造していく野心的な共創を行っていけるパートナーの方、是非一緒にプロジェクトを行っていきましょう！