- インタビュー
2021年10月01日
マイクロ波技術をあらゆる工業へ - マイクロ波化学
- マイクロ波化学株式会社
亀田 孝裕 - 事業開発リーダー
2021年9月17日、KDDI ∞ Laboの月次全体会(完全オンライン実施)において、スタートアップ6社が大企業に向けてピッチを行いました。MUGENLABO Magazine編集部の新米記者めぇ〜ちゃんが登壇企業にインタビューを行いました。
2社目はマイクロ波化学です。マイクロ波化学プロセスの研究を行うスタートアップです。今回はマイクロ波化学株式会社 事業開発リーダーの亀田 孝裕氏に話を聞きました。
- めぇ〜ちゃんMUGENLABO Magazine編集部
- 本誌の新米記者。事業共創やオープンイノベーション、CVCに関する知識を勉強しながら、MUGENLABO Magazineの制作に携わる。
- めぇ〜ちゃん
- マイクロ波とは、空間に生じた電場と磁場の変化によって生まれる電磁波の一種です。周波数が300MHzから300GHz程度の電磁波がマイクロ波と呼ばれています。
事業開発リーダーの亀田氏に伺いました
何をしている会社ですか?
亀田:私たちは大阪大学からスピンアウトしたスタートアップで、マイクロ波技術を基盤とした会社です。マイクロ波は電子レンジでよく知られていますが、物質全体ではなく加熱対象のみを直接的・選択的に加熱することが可能です。
例えばコップに水を入れてレンチンすると、コップは温まらないのに水は温まります。これはマイクロ波により水が選択的に加熱されたからです。鍋で水を温めようとすると、鍋を温めて、その伝熱で水を加熱するのでかなりのエネルギーをロスしていることがわかると思います。一方、マイクロ波では「必要なところに必要な分だけ」エネルギーを供給できるため非常にエネルギー効率がよく、結果として省エネになります。
そんなマイクロ波は、高効率なエネルギー伝達手段として研究論文が数多く報告されてきましたが、工場規模へのスケールアップは困難だと言われていました。私たちはその常識を覆し、2014年にマイクロ波を用いた世界初の化学プラントを建設・稼働させました。2007年の創業から現在に至るまで、国内外の化学メーカーを中心としたものづくり企業と提携し、マイクロ波の特長を生かした高効率・省エネ・コンパクトなプロセス及び設備を開発・社会実装を行なってきています。
マイクロ波の化学プラント
現在も各産業部門におけるお客様のニーズに応じ、医薬品、電子材料からケミカルリサイクルといった幅広い分野において、革新的な製造プロセスや新素材開発のプロジェクトを進めております。
なぜ会社を立ち上げたのですか?
亀田:この100年で産業界は大きく変化しました(例えば、移動手段では馬車が電気自動車に、通信は伝書鳩がインターネットへなど)。しかし化学産業は、19世紀後半の勃興期から100年以上にわたり大きなイノベーションがありません。100年以上「熱と圧力」を使った同じ製法で化学品を製造し続けています。化学産業にイノベーションをもたらすべく、私たちは「マイクロ波技術」を活用することで、独自のテクノロジーを実現することを志しました。
これからの目標はありますか?
亀田:2020年10月に日本政府が発表した「2050年カーボンニュートラル実現」に向けて、産業部門においては製造プロセスの電化が進められていく中、電気を使用するプロセスであるマイクロ波はキーテクノロジーになると考えています。私たちはマイクロ波プロセスの導入による産業部門のCO2排出量削減を通じて、2050年までのカーボンニュートラル実現をリードする構想である“C NEUTRAL 2050 design”を独自で策定しました。
再生可能エネルギーによる「電化」と「マイクロ波プロセス」の2つの要素を掛け合わせた製造プロセスは、石油・石炭など化石燃料由来のエネルギーを利⽤する従来プロセスと⽐較して90%以上のCO2排出削減を可能とします。2050年までに⽇本で30%、世界で10%の⽣産プロセスへ導⼊し、年間1億t、10億tのCO2を削減することを目標にしています。
実際昨年の"2050年カーボン ニュートラル宣言"以降、当社への問い合わせは従来の4倍に増加しました。今後も化学産業全体にマイクロ波プロセスを導入するための技術力をさらに強化し、企業とのパートナーシップを通じて、持続可能な社会の実現に向けて邁進します。
最後に一言お願いします
亀田:私たちは世界をリードするマイクロ波開発・事業化プラットフォームを元に、オープンイノベーションを推進しています。これまで積み上げてきたものを見つめ直し、新たな技術を取り入れることは、どんな企業であっても痛みを伴うことは身に染みて理解しています。その壁を乗り越え、環境負荷の少ない新規プロセスや高品質な製品製造プロセスを私たちと一緒に作り上げていく企業様・担当者様と出会えうことができれば、非常に嬉しく思います。
- めぇ〜ちゃん
- マイクロ波の活用により生産プロセスが省エネになるだけでなく、廃プラスチックのケミカルリサイクルにも活用できるそうです!
それでは次回もお楽しみに!
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