- インタビュー
2022年10月21日
【Web3起業家シリーズ】NFT真贋判定「eagis」を開発、woorth中野氏が目指す誰もが使えるWeb3の世界
- 株式会社woorth
中野泰輔 - 代表取締役社長
MUGENLABO Magazine では、ブロックチェーン技術をもとにし NFTや仮想通貨をはじめとする、いわゆるWeb3ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えていろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。
9回目は、大阪を拠点にNFT真贋サービス「eagis」などを開発するwoorthの中野泰輔氏です。中野さんは、自分なりにWeb3に詳しくない人々もアクセスしやすいWeb3の世界を実現したいと考えていて、そのために非常に多岐にわたってWeb3の事業を計画されていますが、その皮切りとなるのがeagisです。
NFTの流通ではブロックチェーン上でデータを保存するオンチェーンデータが使われ、これにより、コピーが容易なデジタルデータに唯一無二の性質を持たせ、NFTに資産価値を生み出しています。ただ、オンチェーンにデータを記録することで耐改竄性を持たせることはできますが、そのデータが他者の権利を侵害していない本物のコンテンツかどうかは判断できません。
こうしたNFTが現在抱える課題を解決しようとするのがeagisです。中野さんが手掛けられているeagisのこと、実現したいWeb3サービスの世界観、Web3のスタートアップを始められたきっかけなどについて話を聞きました。
中野さんが起業した理由を教えてください。
中野:自分が今生活してて、不便なところとか、課題感を感じるところって、いろいろあるなと思ってて、それを個人レベルで解決するのはすごく難しいと思うところがあったんです。起業して、会社という単位で社会に働きかけたり、プロダクトを出したりすることで、変えていけるところがあるんじゃないかな思ったのが起業のきっかけです。
中学2年生の頃から、仮想通貨やブロックチェーンに興味を持ち始めたんですけど、それから web3 を見てきている中で、利便性の欠如がすごくあるなっていうのを感じています。利便性とインフラのところですね。そして、基礎的なところが使いにくかったり、不便に感じたりするところ、すごく多く、そういったところを変えたいというのはありましたね。
元々、親からはニュースを見た方がいいよというのは日頃から言われていたので、いろんな情報のキャッチアップは小さい頃からやっていたんですけど、そこで最初に興味を持ったのが、金融とか経済とか、お金の流れってどうなってるんだろう、というところ。そこで法定通貨の仕組みなどいろいろ調べていくうちに、既存の金融の枠組みに当てはまらない、仮想通貨・暗号資産というものに行き着いて、それがどういう仕組みで価値がついて流通してるんだろうと、深掘りしていったのが2015年〜2016年くらいです。
起業を通じて、どのような世界を実現したいですか。
中野:今提供されているサービスを、Web3 や ブロックチェーンで置き換えることで便利なものは、すごくあると思うんですね。でも、それを使い始める入口の部分をハードルがすごく高い。例えば仮想通貨を持つためのウォレットとかは、PayPay や LINE Pay のような既存の決済サービスのような簡単さでは使えない、というのをすごく感じます。専門用語が多く難しかったり。
せっかく便利なものがあるのに、使い始める難しさから使ってもらえなかったり、利便性を知ってもらえなかったり、選択肢の1つにも入れてもらえなかったりする状態なので、そこのハードルを低くすることを会社としてはやっていきたいです。仮想通貨とか暗号資産に限らず、ブロックチェーンを活用した NFT といった入口から、こういうことにも活用できるというのを伝えていきたいです。
いくつかサービスを出されようとしていますが、既に提供を始めている「eagis」は、NFT の真贋判定をするサービスですね。
中野:はい。例えば、 OpenSeaで本物のNFTを開いた場合は「本物だよ」、偽物のNFTを開いた場合は「偽物だよ」というポップアップが出てきて、偽物を買ってしまうことを未然に防ぐというものです。当社で、ホワイトリストとブラックリストのデータベースを持っていて、それと照合して判断しています。完全に無料で使えます。
NFTで作品を売り出したクリエイターさんとかにヒアリングすると、ちゃんと「本物だよ」と出てくるのでうれしいと喜ばれています。クリエイターさんの中でも、2〜3割くらいの人が NFT に対して(悪用されるという)悪いイメージを持っています。Twitterにアップロードした画を第三者にそのまま出品されて、それが1ETH以上で売れちゃったとか、NFTで盗作されたんだよねとか、彼らは周りのクリエイターさんとかから話を聞いているというんです。
そういう情報だけ聞くと、「NFT=悪」と捉えてしまう人も一定数いて、悪いイメージがついてしまっている。それをとにかく防ぎたいというのと、クリエイターさんは NFT 化してファンに届けることでキャッシュポイントを作ることができるので、そこをしっかりサポートできたいという思いがあります。
将来的には、ステーブルコインやウォレットとかも立ち上げたいと思っています。海外だと、USDC や USDT とか複数の選択肢があるんですが、日本はまだ JPYC 一社しかいない。自分達がやれれば、選択肢を増やすという意味でも有用だと思っています。今すでに使っている人は多分、現在あるもので充足していると思うんですが、新しく使い始める人たちに使いやすいものを出していきたいです。
woorth が展開しているのはコンシューマ向けのサービスだと思いますが、企業との取引もあるんですか?
中野:最近は増えてきました。NFTを活用したプロジェクトやイベント、研修などを実施する話をいただいています。お願いをされたらやってるような感じだったんですが、最近ボツボツ増えてきたんで、一事業として取り組んでいこうかなと思っています。こういった活動はWeb3 やブロックチェーンを広げていく上でも必要なものですね。
大企業が最初にそういった潮流を捉えて、その後、中小企業がその方向に追随していく、という流れは、世の中でよくあることですし。少し前にも、マーケットプレイスの分野でも、似たようなことがあったように思いますので。企業にもWeb3 やブロックチェーンを活用してほしいという思いがあるので、教育や啓蒙活動には力を入れてやっていきたいと思っています。法人向けのサービスに関しては近々良い発表ができそうです。