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2022年10月05日

【Web3起業家シリーズ】〝聴いて稼げる〟プレーヤー「PENTA」を正式公開、堤氏が創る分散型音楽ビジネスの世界

PENTA
堤 真聖
Founder,Executor and Engineer

MUGENLABO Magazine では、ブロックチェーン技術をもとにした NFT や 仮想通貨をはじめとする、いわゆる Web3 ビジネスの起業家にシリーズで話を伺います。Web3 についてはまだバズワードな要素も含んでいるため、人によってはその定義や理解も微妙に異なりますが、敢えていろいろな方々の話を伺うことで、その輪郭を明らかにしていこうと考えました。


8回目は、10月5日に web3 音楽 NFT プレーヤー「PENTA」を正式ローンチされたPENTAの堤真聖氏です。堤氏は現在、早稲田大学創造理工学部の4年生。大学に入学された頃からスタートアップ数社でソフトウェアエンジニアとしてインターンを経験し、2021年に起業されました。以来、音楽ファンとアーティストやミュージシャンをつなぐサービスを複数立ち上げられています。

Play and Earn(または Play to Earn)、Move and Earn(または Move to Earn)など、労働ではなく好きなことをして対価が得られるモデルが、ブロックチェーンを使った Dapp(分散型アプリ)の分野でいくつか実現されています。PENTA はこの考えを音楽に持ち込むことで何を実現しようとしているのか、堤氏に伺ってみました。

PENTA について、教えてください。

堤:PENTAは一言で言うと「Listen and Earn Music Player」と呼んでいるんですが、音楽プレイヤーを分散型で提供するというものです。基本的には、ミュージシャンの方々に対するオープンな課題がいくつかあると考えていて、例えば著作権の保護や、クリエイティブな音楽制作活動に関するジレンマやマーケティングといったものがあると思うのですが、それを解決することにフォーカスしたプロダクトです。そのために2つのユーティリティを提供する手段があって、それが「Listen and Earn」と「Compose and Earn」という2つの部分になってます。

「Listen and Earn」は、ファンに対して、音楽を聴いたら聴いた時間に応じてPENTAという我々のトークンを報酬として渡すよというものです。そこからまずブロックチェーンというフルで誰もが見られ、信頼できるデータの場所に、誰がどの音楽を聴いたかというアドレスに紐づくデータを載せることによって、ミュージシャンや音楽活動をしている方々にとってマーケティングがしやすくなります。また、それにトークンインセンティブを載せることによって、自分たちの音楽をより聴いてもらいやすくなるというところを意識しています。

「Compose and Earn」は、ミュージシャンの方々に対してベーシックインカムのようなものを提供します。音楽をアップロードしてくれたらそれに対してPENTAのトークンを配布するよっていうことをやろうと考えています。

この2つを掛け合わせることによって、PENTA上にミュージシャンが載せた音楽のデータが溜まってくると、ファンも音楽がより聴きやすくなる。音楽を聴いたらもっとトークンをもらえるということでサービスが循環していくようにできたらいいなと考えています。

起業されたきっかけは何でしたか。

堤:起業したきっかけに「これ」といったものがあったかはちょっと曖昧なんですけど、中学生の時にはなんかの社長になりたいって言ってたり、僕はもともとエジソンみたいな発明家の伝記を読みあさったりとか、どこでもドアとか宇宙工学みたいな変な研究にすごく興味があって、そういうのを読んでワクワクするのが好きだったりしたので、自分もそういうのを作りたいなという思いはずっとありました。

あとは家庭環境的な部分で母親にすごくお世話になってますので、自分が成功してお金である程度返したいなと。母親が18歳で僕のことを産んでるんですけど、もう人生の半分以上を僕たちに費やしてくれているので、僕ら、兄と弟もいるんですけど、母の人生の半分を奪った分、自分がやりたいことをやってるよとか、それで活躍してるよっていう姿を見せたいなと。

いろんな書籍を読みあさったりされて、興味の領域が広くお持ちだと思ったのですが、その中でも Web3 がはまったっていう感じだったんですか。

堤:そうですね、高校の時ですが、なんかビットコインがすごい有名になってて。僕がたまたま読んだ本がビットコインの暗号通貨の部分よりもブロックチェーンという技術にフォーカスした本だったからかもしれませんが、ただ僕はすごく好きだなと思って。

ブロックチェーンという技術で、デジタルで資産を証明することに挑戦されてるとか、あとはスマートコントラクトで人とお金とシステムを完全に制御できるという構造。僕はその時まだプログラミングとかもやったことがなかったんですけど、これは世界を変えるなって信じて、そこからプログラミングを始めたと思っています。

PENTAサービスロゴ

消費者にとっては、CD を買うにせよ、ストリーミングをサブスクするにせよ、音楽を聞くことに対して、お金を支払う習慣は以前からあったと思います。しかし、音楽を聞くことで、お金がもらえる(稼げる)という発想は、これまでとは逆です。何がきっかけで、生まれたアイデアですか。

堤:このサービスを始めたきっかけは、どちらかと言うと音楽を中心に考えたというよりは、トークノミクスの仕組み自体に価値があると僕は考えていて、そこに音楽を当てはめたっていう方が近いです。「X to Earn」、要はX(データ)をオンチェーンに溜めるっていうことが、ブロックチェーンの先にある技術の発展にあたって必要なことだと僕は考えています。「X to Earn」はデータを載せるためのインセンティブを配布するっていうことで有用な手段だと考えたんですよね。

ただこれって課題がひとつあるなと思っていて、よりリアルに近いデータを載せるのはすごく難しい。データを載せること自体は可能なんですけど、ちゃんと証明された上で載せるっていうのが難しいので、僕はそこにアプローチしたいなと考えています。音楽を聴くって一種リアルな行動なので、本当にこの人が音楽を聴いているっていうのをシステマチックに定義するのはすごく難しいことなんですね。なので、そこをまず解決したいなということで、僕は音楽にフォーカスしています。

聴いているという行為は、例えば、チャンネルを合わせて、音が耳まで届いている状態を指すんでしょうか。それとも、さらに集中して、その音を楽しんでいるという状態を証明するところまで進めるんでしょうか。

堤:僕たちはどの程度聴いてるかっていうのもある程度可視化したいなと思っています。今おっしゃっていただいた二者の中だとより後者に近い方を実現したいと考えています。

これは最初からは難しいので、後々実装していく前提なんですけど、イヤホンのカバー部分に脳波のセンサーと音波のセンサーを同時に取り付ける。音波の方はイヤホンから音が出てるよねっていうのが分かり、脳波の方はどの周波数の脳波、またはどこの部分の脳波が活性化しているかがリアルタイムで取れるので、それを元に音楽を聴いている時に反応する脳波だったり、またはリラックスしているのか、興奮しているのかっていう状態を同時に取ることで証明できないかなと考えています。

PENTAのエコシステム

今までのテレビの視聴率や、ラジオの聴取率といったものより、それを超えた計測方法ということですね。作曲するユーザは PENTA で稼げることでモチベーションが高まりますが、PENTA の仕組みで、すでに生活できている人はいますか。

堤:まず最初はインディーズだったり、自分たち個人でMVの制作にお金を出すことが難しいようなミュージシャンが多いかなと。数で言うとそちらの方が圧倒的に多いので、そっちにフォーカスしようというイメージです。

PENTA が扱うのは、必ずしも音楽でなくてもよかったという話もされていました。でも、結局のところ、音楽を選んだのはなぜですか。

堤:まず、やりやすいなっていうのは圧倒的に感じてたんですよね。リアルをオンチェーンに載せるっていうので、例えば食べるとか寝るとかいろんなアプローチがあるんですけど、音楽を聴くことが僕には一番イメージがあってやりやすいなって感じました。

デジタルでも、例えば Apple Music で再生されているステータスを取るなど、デバイスからアプローチできるなと思ったので、グロースさせやすいなと感じました。

僕はもともと音楽テックのサービスをずっとやってたので、たぶん自分的に認知にバイアスがあって音楽っていうものをすごくイメージしやすかったのかなとは思います。

事業やプロダクトの進捗はどのような感じですか。

堤:プロトタイプ版をローンチしたのが今年5月で、現在は、iOSや Android のモバイル版の開発を進めている段階です。クローズドで運用しているので、一部のユーザの方々から意見を頂きながら、UI/UXを磨いているという段階ですね。

現在はウォールオブデスという会社で開発を進めていますが、今、海外の方に法人を設立しようとしているので、PENTA を正式に出すときは、ウェールオブデスとは別の会社で出すことになります。

PENTAのエコシスロードマップ

まだクローズドで運用されている段階ですが、リスナー側、コンポーザ側、双方のユーザから寄せられている声はいかがですか。

堤:ファン側の方からは、普段すごく音楽を聴く人であっても、ちょっと体験が変わっているね、とか、聴いている時間に合わせ、時間が1分、2分と増えていくにつれて、トークンがリアルタイムで増えてくみたいな体験がワクワクするとか、言ってくれています。

まだプロトタイプ版でシンプルな設計になっているのでそのぐらいの声なんですけど、ミュージシャンの方へはまだ機能を提供できていないので、より自分たちが活動しやすくなればいいなっていう期待の声をいただいています。

このサービスは最初にヘッドホンという NFT のデジタルアセットを購入する必要があって、その売上や、ユーザの二次流通の手数料が原資になります。ただそれだけでは不足していて、トークンを配布する分にはお金は減らないんですけど、イーサリアムなど他のコインに変えるときに減っていくんです。そこの流動性が原資になっています。

PENTA というサービスを通じて、どういう課題を解決したいですか。

堤:そもそもアーティストの今の流れとして、インディーズがすごく増えています。グローバルマーケットの60%がインディーズで、レーベルに所属していないミュージシャンが増えている。で、SpotifyやSoundCloudを通じて個人で音楽を作って配布してっていうのが出てきているんですけど、それに伴ってミュージシャンがより壮大な音楽とか、人を集めてMVを撮影するとかっていうのは、ある種やりづらくなっていると感じています。

さらに、自分でマーケティングしなきゃいけないし、自分でTwitterで配信してとか、そこがけっこう大変だなというのはすごくよく聞きますし、あとは単純に個人でやるのって著作権の観点がずれちゃって、自分がどんどん有名になるにつれパクってくるやつが現れるみたいなことも増えています。

ブロックチェーンの世界だとそういうのがより増えると感じていて、匿名な世界でなんでもコピーできてしまうので、僕たちはより個人にフォーカスが当たっていく中でそれが安全にできて、より作曲と演奏という部分に集中してフォーカスしてやっていきたいなと思っています。

ありがとうございました。

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