- インタビュー
2023年01月18日
【Web3起業家シリーズ】都市ARにNFTが必要なワケ(2)——Psychic VR Lab XRアーティストDiscont氏
前回からの続き:【Web3起業家シリーズ】NFTブランドとコラボ、街×ARに新たな体験と価値を創造(1)——Psychic VR Lab XRアーティストDiscont氏
いろいろなNFTプロジェクトと組んでいるわけですが、そこにNFTがさらに足されると何が起こるのでしょうか?
Discont:一例なんですが、これはBonsaiBoyzさんというアーティストの方が作った作品なんですけど、こういったものが都市空間の中にインストールされていて、普段(リアルで)ここ(渋谷の交差点)を行き交う人々はその存在に気がつかないんですけど、スマートフォンでSTYLYを立ち上げて、渋谷の空間を見た時にこれが存在しているというのがまず都市ARです。
NFTのアートピースみたいなものが自然に街の中に紛れ込んでいて、都市全体がギャラリーに変わっていくみたいなことを目指しています。NFTである必要があるかどうかというところで言うと、もう本当に全くその通りで、別にNFTじゃなくても成り立つといえば成り立つものなんですよ。
NEO TOKYO CLASH 上に配置された、BonsaiBoyzさんの作品
では、なぜNFTかということなんですが、それは実在性を担保する意味で、NFT機能を使っています。AR単体で出すと、それはそこに存在してるかもしれないけど、それを証明するものがリアルには存在しないですよね。都市の空間に存在している作品と座標軸を紐付けて、「そこに存在しているよ」というのを証明するための装置としてNFTを使っています。
ちょっとこれは言い過ぎかもしれないんですが、NFTとかどうかというのは本当はどうでもよくて、ストリートをアーティストの遊び場にしたい。ストリートアート文化みたいなことを考えた時に、そこにアート作品が存在するという実在性を担保するためにNFT技術を使っています。あくまで主体はARとか都市ARの方にあるというのが僕たちの考えるところです。
作品を街に並べている人からすると、単純に並べてしまっても空虚な物になってしまうけれど、NFTを重ねることによって実際そこにあるということが少なくとも精神的に担保されるということですね。
Discont:あとはNFTにすることで、ユーザ同士が売買できる可能性もありますね。例えば、「渋谷のスクラブル交差点にあるこの作品は私が所有しています」みたいな主張ができる。誰かが購入するかもしれないし。アートピースを誰が所有しているかが、繋がっていく。都市空間にある ARという実体性のないものを所有できるのはNFTならではかなと思っています。
もうひとつは、今はまだアートピースそのものをNFT化することしかやっていないんですが、将来的には空間そのものをNFTとして切り出して販売するみたいなことも考えています。まだ構想でしかないんですが、渋谷スクランブル交差点の上空のある区画やエリアがNFTで販売されていて、購入した人がそこに好きなものをインストールしたり展示したりできるとか。
広告に使ってもいいというような、デジタル空間への評価がポジティブになった時に、その空間自体を売買するというカルチャーがあふれてくると考えていて、それを担保するためのテクノロジーとしてもNFTを活用しています。今はまだNFTの所有権を持っている人がそのアートピースをどこかへ移動することはできません。ロケーションはそれぞれ早い者勝ちです。
仕様は将来、いろいろ変わっていくと思うんですが、今はまだNFTブランドさんとのコラボにとどまっているんですが、いろいろな問題をクリアにした上で、こういった作品の販売をやていこうとしているところです。
METADIMENSIONS
Discontさん自身アーティストだということですが、どういった経緯で今回の事業を担当されて、アーティストであることは事業にどのように繋がっていますか?
Discont:Psychic VR Lab、そして、パルコさんとロフトワークさんの3社で、VRやARを作るアーティストを積極的に育成・発掘していくプロジェクト「NEWVIEW」を展開しています。僕も先日、NEWVIEWにチームで参加してきました。XRを使ってうまく演劇や音楽やファッションに表現に落とし込んでいく活動をいろんなアーティストと一緒にやっています。
このNEWVIEWは2018 年にしたプロジェクトですが、僕はPsychic VR Labに入る前、NEWVIEWの一参加者でした。2018 年にNEWVIEWがアワードをやっていて、そこに作品を応募したらパルコ賞をいただいて、渋谷パルコに作品を展示させていただき、それがきっかけでPsychic VR LabやNEWVIEWとバイブスが合うねということで、僕も運営側になりたいなと思い、会社にジョインしました。
NEWVIEW AWARDS 2018 でパルコ賞を獲得した、Discont 氏の作品「身体の形状記憶装置 -SHAPE MEMORY OF YOU-」
それ以来ずっとNEWVIEWのプロジェクトをやっていて、僕はその中でもいろんなアーティストとコラボして、渋谷パルコでイベントやったり、アーティストの展示をサポートしたりしていました。アーティストとテクノロジーを繋げることを会社の中では仕事にしています。
Psychic VR Labでは今年8月、 NFTのプロジェクトを立ち上げようということになりました。僕自身がアーティストとコラボしてNEWVIEWを進めてきましたし、また、僕自身もNFTプロジェクトをやっています。全然売れていないNFTプロジェクトですが、渋谷の街で3Dスキャンし、NFTとして永続性を持たせ、インターネットに漂流させるみたいなプロジェクトです。
そんなことから、「Discont がやったら」という話になり、METADIMENSIONSを任されることになりました。
METADIMENSIONSとして、オープンイノベーションの文脈で一緒に組みたい相手やアイデアはありますか?
Discont:いろんな企業さんとか、官民学のいろんなところで皆さんとこうコラボしながら作っていきたいと思っています。というのも、都市ARはまだまだ法整備とかもなされていない中で、ユーザーが安全に街の中にある体験をするにはどうすればいいのか、どういう体験設計が望ましいのか、とか、一緒に考えていければと思っています。
都市に何か AR を重ねて投影した時に権利はどうなるのかとか、ビルの所有者の権利はどうなるのかとか。とにかく関係者がものすごく多いというのが都市ARという文脈なんですね。
スタートアップができることはすごく限られていて、テクノロジーを使って何か面白いことをすることはできたとしても、その先でより多くの方に安心して楽しんでいただくとか、行政からも認めていただくとか、一緒に街作りをするとか。それをもっと大きなムーブメントにしていくためにはいろんな企業さんとコラボしていきたいと思っています。
特に一緒にやらせていただきたいなと思っているのは、渋谷にリアルの場所を持っている企業様ですね。例えば、東急さんや渋谷パルコさんもそうなんですけど、ARはリアルのロケーションと結びついて、より価値が高まっていくものだし、ARの存在によって逆に土地の価値とか場所の価値が高まっていくかもしれない。
例えば渋谷パルコでARで何かをすれば、そこにお客さんが集まるとか、そういった形でリアルな場所の価値を高められていくと思うので、土地や建物など、ロケーションを持っている企業さんと一緒にコラボしていければいいなと思っています。
ありがとうございました。
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