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2023年03月10日

【Web3起業家シリーズ】企業のWeb3ビジネスを包括支援、東証やイラストレーター専門学校とも協業——モノバンドル 原沢陽水氏

モノバンドル株式会社 代表取締役 / Monobundle Netherlands B.V CEO
原沢陽水
大学在学中から3年間、ブロックチェーンリサーチャーとして活動。 その後、日本初の日本円連動ステーブルコイン「JPYC」を取り扱う JPYC 株式会社に立ち上げ期から参画し、COO として事業成長を牽引。 2021年6月にモノバンドル株式会社を設立。 事業者向けのNFT総合インフラサービス「Hokusai」、デジタル資産の監査・認証プロバイダー事業「SuperAudit」、web3特化のM&Aプラットフォーム「MergePad」をリリースし、ブロックチェーン領域の総合ソリューションカンパニーとして事業を展開している。

スタートアップの経営にもさまざまなスタイルがありますが、投資家や外部のエクイティを積極的に取り入れて最初は「赤字を掘る」ことを覚悟し、その後Jカーブを描いて成長するスタートアップは多いと思います。それと対照的に、一定の時期まで、または、永遠に自己資金のみで成長を続けるスタートアップのことを、「ブートストラップモードのスタートアップ」と呼んだりします。


今回紹介するモノバンドルは、そんなブートストラップモードのスタートアップの一つです。一般論として、ブートストラップで経営が持続できるということは黒字経営が成立しているということですから、詳細は不明なのですが、創業から2年を経過していないモノバンドルが、この変化の激しいWeb3業界でそんな健全な成長を続けられているとしたら、賞賛に値することだと思います。


しかし、モノバンドルは決して保守的で堅実なスタイルを貫いているわけではなく、昨年11月にはオランダに子会社を設立し、日欧のプロジェクト連携を念頭に置いたファンドや研究開発への注力を表明するなど、新サービスの開発にもアグレッシブです。インキュベーション事業を展開するなど、Web3コミュニティの醸成にも関わっています。モノバンドルの現在と今後の展望について、創業者で代表取締役の原沢陽水さんにお伺いしました。


モノバンドルについて教えてください。

原沢:モノバンドル 代表取締役の原沢です。2017年からブロックチェーン業界にいまして、当初はリサーチャーとしてさまざまなプロジェクトをリサーチしたり、自分でメディアを作ったりしていました。その後JPYCに入社し、COOとして前払式支払手段形式のステーブルコインプロジェクト「JPYC」の立ち上げやシリーズAラウンドの資金調達に携わりました。

2021年の6月に現在のモノバンドルを設立しました。弊社は主に事業者向けのWeb3周りのインフラサービスを提供しています。最近、オランダに子会社を設立して、日本とオランダの2拠点という形で、日本でやれることは日本で、グローバルでやれることはグローバルでやろうとしています。

事業者向けのWeb3のサービスと伺いました。今のところWeb3の中でもNFT系が多いですか?

原沢:そうですね。最初にNFTの総合インフラ「Hokusai」をリリースしました。その後に立ち上げたコード監査の「SuperAudit」というサービスはNFTに限らずにやっています。さらに最近、Web3特化のM&Aプラットフォーム「MergePad」をリリースしました。最初はNFTが多かったんですが、徐々にNFTに限らずブロックチェーン技術を活用した横断的なサービスをリリースしていく予定です。

事業者向けのWeb3のサービスを提供する上で、御社が特に強みとする部分や他社と違う部分は何ですか。

原沢:特に「Hokusai」で顕著ですが、弊社のサービスは、大企業がNFT関連のプロジェクトを立ち上げる際に暗号資産を持たなくてもプロジェクトを進められるというのが第一のメリットです。私たちはNFTプロジェクトを成功させるために必要な最小限の機能しか提供していませんが、既存のWeb2領域でインフラを提供している会社とアライアンスを組み、連携しながらWeb3の新規事業を立ち上げることができるのが弊社の強みとなっています。

具体例では、決済代行事業者のSBペイメントサービスと連携して、NFTプロジェクトをやりたい事業者がこれから立ち上げるNFTプロジェクトの決済手段としてクレジットカード決済を導入できるようにした例があります。よく「こういうアセットがあるんだけれども」という話をいただくんですが、そういったものと組み合わせたパッケージを私たちと一緒に作っていただき、それを販売していく。そういったストラクチャーを組めることが強みになっています。


Image credit: モノバンドル

Web3全般に渡って言えることですが、特にNFTには大企業は及び腰だったり、NFTをやろうとしたときに、秘密鍵をどちら側で持つかといった問題が生じたりします。そういう面倒な部分を御社が大企業に代わって対応できるわけですか

原沢:まさにおっしゃる通りです。大企業が上場しているからこそできないことを弊社のプロダクトを通じて問題解決しています。基本的にスタートアップというのは、大企業に取れないリスクを取りに行くのが社会的な存在意義だと思っています。特にクリプトやWeb3領域において、大企業が取れないリスクを積極的に取りにいくことによって、私たちの存在意義が成立するような領域をやっています。

企業との協業事例としては、他にはどういうものがありますか。

原沢:話が進んでいるところは金融機関を含めていろいろありますが、パートナーというより実際にお取引をさせていただいた例としましては東京証券取引所があります。東京証券取引所が投資家向けの金融データサービスの新しいアクセス権のような形でNFTを活用する際に、NFT発行に必要となるスマートコントラクトのコードレビューを行いました。

これは、いわゆるユーティリティNFTの一種です。早期アクセス権のようなものでして、APIの アクセス権をNFTで展開しました。これもまた、技術を会社としてどう捉えていくか、使っていくかという前段階の実証実験として取り組んだ例です。この技術を既存の金融機関がやることに価値があると思っています。

他には、アニメーターやイラストレーターを育成する専門学校の事例があります。教育機関がNFTマーケットプレイスをただやるだけでは面白くないということで、授業の一環としてアニメーションやイラストレーションの作品を提出するとともに、マーケットプレイスの出品を一気通貫でやってしまおうということになりました。それにより、作品が実際に価値を持つようになる機会をアニメーターに提供することができるという試みです。

おそらく、これまでの媒体と言えば、最初は紙から始まって、それがデジタルになってポートフォリオサイトになり、ポートフォリオサイトを作って仕事を受け付けるという流れだったと思いますが、それが教育機関と連携して販売するところまでシームレスにできるようになると、学習を実際に生きるための仕事へどんどん繋ぐことができると思うんです。同時に販売している人の行動自体がその人自身のポートフォリオになったりする。販売とポートフォリオと教育機関の育成みたいなところをまとめて解決する。そういったところを繋いで同時に課題を解決する取り組みをさせていただいています。


Image credit: モノバンドル

モノバンドルとしてはインフラの提供だけなんですか?それとも先生みたいな人を派遣して教えたりもするのでしょうか?

原沢:インフラの導入の仕方にはやり方がいくつもございますので、コンサルティングだけではなく開発に入ることもあります。弊社の40名のうち約半数がエンジニアなので、そういったご要望にもお応えできるというのが私たちの強みになっています。

私たちはどの段階からでも伴走することができると思っています。何をするのか分からないフェーズから、具体的なことは決まってないが何かやるということが決まったフェーズ、やることが決まっているが開発のリソースが足りないといったフェーズなど、あらゆる段階の会社さんに対して解決策を提供できる体制になっています。

Web3に興味を持ち、起業したきっかけを教えてください。

原沢:2017年あたりは、AIやIoT、ブロックチェーンなどの先端技術がいくつかあり、その中の何が来るんだろう、次の社会はどうなるんだろうというのがバズワードになった時期でした。AIはGoogleなど情報を持っている会社には勝てないなと思い、IoTはハードウェアつまり実際の製品を作っている会社には勝てないなと思ったんです。

一方でブロックチェーンは、当時はビットコインの思想がいかがわしいものという風に言われていました。でも流入しているお金の額が圧倒的に大きかった。AIとかIoTとかブロックチェーンとかって言われてる中で、唯一世間の評価と実際の数字の伸びの乖離が激しかったのがブロックチェーンだったんです。

インターネットとかも最初はそうだったと思うんですが、本当にコアなエンジニアしか使わないものだったのが、今では世の中にいっぱいになっている。ブロックチェーンはまさにそういう形でいかがわしいものから大物が出てくる可能性があるんじゃないかなと思いまして、2017年からこの領域に最低でも10年は携わろうと決めて、今6年くらいたっていますね。

起業は高校生ぐらいのときからしたいと考えていました。とは言え、当時は何をやるのかとか、ビジネスについては全然知らなかった。でもなんかすごそうな領域を分析している間に、まだ若いし、こういういかがわしい領域から攻めていっても何とかなるだろうと思ったのが正直なところです。

モノバンドルの今後の展望を教えてください。

原沢:クリプトのシステム、いわゆるWeb3のエコシステムは既存の産業と比べるとまだ小さいんですが、この技術がいろんな価値の流動性を上げていく可能性があると思っています。次の課題となるのは、認知は得られたけれども果たして本当に人のためになるのかというところだと思います。

そのためには既存の産業に統合していくことが必要です。例えばインターネットが食の産業に統合されて食べログなどのサービスができたり、個人間のメッセージもそうですし、デジタル上で表現するアニメーターの方が増えたりなど、いろんな産業とインターネットの技術が統合されて初めて世のためになったと言える。

まさにWeb3も次はそういう段階だと思いますので、ブロックチェーン技術の産業への統合を積極的に行いたいです。モノバンドルに相談すれば、あらゆる産業に対して最適なアプローチを提案し、課題を解決するプロダクトを提供してくれると言われるような会社になりたいと思っています。

MUGENLABOには大企業のアライアンスがありますが、大企業と一緒に何かしたいなどの期待感があればお聞かせください。

原沢:ぜひ積極的にいろいろさせていただきたいですね。例えば、既存の会社の認知を高めるためにいイベントを共催させていただくなどの可能性も考えられます。自己資金で事業を回せているのでVCからの資金調達は今のところしていませんが、事業シナジーがあれば、CVCから資金を受け入れるようなことは選択肢としてはあるかもしれません。

最近では、インキュベーションのイベントなどもやっています。渋谷にコワーキングスペースを開設し、国内外のスタートアップを渋谷に集め、大企業と協業できるリアルな空間を作るようなアイデアもあります。イベントの共催の他にも、スタートアップが協業先の企業を見つけるために使えるような活動をやりたいなと思っています。

ありがとうございました。

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