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2021年03月12日

伝統メディアを「デジタル化」させるキメラ、凸版印刷とタッグ

凸版印刷株式会社
菅原 健春(左)
情報メディア事業部 事業企画部 課長 2004年凸版印刷入社。出版、新聞、建材、鉄鋼業界の営業を経て、2017年出版事業の企画販促部門に異動。2020年事業企画部が新設され、新規事業の開発に従事。
株式会社キメラ
大東 洋克(中央)
2002年GMOインターネット株式会社入社。Webインフラ事業の統括本部長を経て2009年にGMOドメインレジストリ株式会社を立ち上げ、常務取締役に就任。2013年に独立し、Webコンテンツのデータ分析、機械学習を活用したWebコンテンツ最適化などの事業に参画。2018年株式会社CAMPFIRE入社、2019年に取締役COOに就任。グループの事業統括およびプロダクト、マーケティング部門を主管。2019年株式会社キメラ取締役に就任、同年6月より代表取締役社長。
凸版印刷株式会社
内田 多(右)
事業開発本部 戦略投資センター CVCチーム 主任 2010年凸版印刷入社。法務部門およびデジタルコンテンツの企画部門を経て、2016年より、経営企画本部にて事業投資およびスタートアップとの資本業務提携を担当。 担当先は、キメラのほか、イオレ、サウンドファン、AWL、ナッジなど。

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。


伝統的なメディア・パブリッシャーが抱える悩みのタネはビジネスモデルです。紙をデジタルにするだけでなく、ビジネスモデル・体制からコンテンツを作る考え方、読者との向き合い、あらゆる面で従来の手法を見直さなければならないからです。この課題に取り組もうという共創が、凸版印刷とデジタルパブリッシャー支援を手がけるキメラの提携になります。2019年末には両社の資本を含めた業務提携の取り組みが公表されています。


そこで本稿では両社が手がけるパブリッシャーのデジタル化ソリューション「Ximera Ae」(キメラ・エーイー)を中心に、伝統的なメディアが抱える課題とその解決方法について両社のお話を伺いました。


デジタルメディアのグロース支援

キメラが提供するのは「読者ロイヤルティ」を中心に据えたデジタルメディア事業グロース支援事業「メディアパートナー」で、各メディアが抱える複雑な課題を伴走のスタイルで解決します。海外製ツールである記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール「Chartbeat(チャートビート)」の日本総代理店としても、導入と分析ノウハウの支援でメディアと向き合っています。2019年1月以来、パブリッシャー19社・51媒体(2021年2月末時点)に向けてデジタルメディアの事業評価やグロース支援を手がけた実績を持ちます。


Ximera Aeサービスイメージ

また、こうやって積み上げたメディアへの読者エンゲージメント向上ノウハウを基に、メディアが制作するコンテンツの価値を訴求し、マネタイズするサブスクリプション管理プラットフォーム「Ximera Ae」を自社開発しています。同時に、共創・協業する凸版印刷とは、出版社などのメディア営業網を活用して「Ximera Ae」の販売連携をしています。

キメラは『パブリッシャーの未来を共に創る』企業です。有益な情報を提供することで時代を動かし、⽂化を築いてきたパブリッシャーを深くリスペクトしています。既存のメディアビジネスが苦境にある中で、真摯にコンテンツに向き合う⽅々が報われる世界を作り、今⼀度インターネットの本来の価値を創造したいと考えています。
2021年からは、初の自社開発プロダクトである、サブスクリプション管理プラットフォーム『Ximera Ae』を通じ、デジタルメディアのマネタイズ選択肢を広げていきたいです。

キメラ代表取締役社長 大東さん

伝統メディアの課題

これまでもパブリッシャーのデジタル化は「電子書籍」などでじわじわと進んできた経緯がありました。一方、ここ数年で一気に顕在化してきた課金・サブスクリプションモデルへの対応は、読者数を大きく稼ぐ必要のある広告モデルと相反する部分があります。また、考えるべきポイントも流入経路から読者ロイヤリティなど多岐に渡るため、パブリッシャーが抱える課題や悩みは更に複雑さを増します。大東さんは現状をこう分析します。

Yahoo!ニュースやSmartNewsなどのニュースプラットフォーム、TwitterやFacebookといったソーシャルメディア、はたまたnoteなどの個人によるコンテンツ発信モデルの台頭により、『マスメディア』と呼ばれていた新聞、雑誌、テレビが、インターネットを通じたコンテンツ発信および読者とのコミュニケーションにおいて、相対的に強みが発揮できない状況になりつつあります。

一方、コンテンツの発信手法や形態の多様化により、ユーザーが視聴・閲読できるコンテンツが膨大になっている状況下では、デジタルメディアは、ページビュー数に依存した広告収益(視聴・閲読は無料)モデルのみでは、従来のアナログの事業形態時の収益を補完・置換できる規模・成長性を見込むことが難しくなっているのも事実です。

キメラ代表取締役社長 大東さん

凸版印刷とキメラが特に注目しているのが、大手・中堅の伝統的なメディア企業だそうです。

特にビジネスモデルに直結するテーマでもあることから信頼関係は重要で、その点で凸版印刷の持つ関係性は大手出版社などとの取り組みをする上で大きくプラスに働いているというお話でした。一方、凸版印刷の菅原さんと内田さんはこういった提案先に対し、不足するSaaSプロダクトの営業ノウハウをキメラと協力して補完したことも明かしてくれました。

顧客とのすり合わせを重ねてソリューションを提供する受注産業・営業スタイルの凸版印刷内では、キメラのSaaS型プロダクトの営業経験・ノウハウが不足しており、キメラと凸版印刷、パブリッシャーの3者連携の実現・成果創出に結びつけることができなかったんです。そこでキメラチームの協力を得ながら、凸版印刷内でのセールスファネルの勉強会やヒアリングシートの整備・更新、受け渡し基準の明確化などを積み重ね、改善しながら連携していってます。

パブリッシャーは、サブスクリプションモデルの構築に際し、技術的な開発仕様の検討で手一杯になり、サブスクリプションの事業計画や運用体制構築まで手が回らない状況も多くなりがちです。こうした問題に対して構造的な課題抽出と解決を実現し、メディアの本分としての価値ある情報発信に集中しやすい環境づくりが可能、とお伝えするようにしていますね。

凸版印刷 菅原さん・内田さん

印刷を中心に出版社などのメディア企業と長らく関係を構築してきたのが凸版印刷です。エコシステム全体を考えた際、パブリッシャーのビジネスモデル、デジタル化を推進することは業界全体の下支えになるのは間違いありません。

両社は以前、本メディアでも取材したトッパンCVCのチームのアプローチをきっかけに協業・資本提携の話が始まったそうです。事業部等で協業検討を進め、黒子のようにメディアグロースを支えるという方向性が一致したことでその後の協業が加速したというお話でした。

次回も国内の共創事例をお届けいたします。

株式会社キメラ
https://ximera.com/
「パブリッシャーの未来を共に創る」というテーマのもと、インターネットの本来の価値を創造。
記事コンテンツのエンゲージメント分析ツール『Chartbeat』、サブスクリプション管理プラットフォーム『Ximera Ae』を提供。

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