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2023年04月11日

KDDI×アクアビットスパイラルズ(前編)——先端技術を駆使し、地方向け交通キャッシュレスを開発した理由

QRコードやNFC技術を使って、ユーザのスマートフォンを特定のURLと紐づけるサービスおよびカード型デバイス「スマートプレート」を開発するアクアビットスパイラルズは、その技術を使って、さまざまな派生サービスを生み出しています。


デバイスはそのままでも、設置者がアプリでタッチされた後の挙動を自在に制御できる基本サービスはもとより、これを決済に利用した「PayChoiice(ペイチョイス)」、チケットに利用した「スマプレチケット」、フードメニュー注文などに応用した「スマプレオーダー」などです。


ここ数年は、スマートプレートの技術を交通、特に公共交通機関の乗降客管理や乗車賃決済に応用した実証実験を重ねています。舞台となっているのは、都市部ではなく山間部や地方都市などです。そして、昨秋から今春にかけては、KDDIとともに徳島で新サービスの実証実験を展開しました。公共交通は、運行・案内・安全管理・決済など全てにおいてシステムが完成されているように思えますが、そこに手を入れる理由は何でしょう? プロジェクトを主導した、KDDIの山田さんとアクアビットスパイラルズの萩原さんに伺いました。


アクアビットスパイラルズは2009年3月創業の会社。スタートアップとしては、結構、古株ですね。ここ10年以上にわたって、どういったことに取り組んでおられますか。

萩原:オンラインのサービスがどんどん充実していく中で、あらゆるところでスマホのサービスが便利に使える時代になっていくだろうと思われます。これはオンラインで完結するものではなくて、特にスマートシティという文脈で言うと、都市型だけではないと思うんです。生活シーンの中でいかにオンラインサービスをメインに使っていくのか。それによって生活がどう豊かになるのか。社会問題をどう解決するのか。さまざまなアプローチがあると思います。

多くの場合、「この場でこういう便利なサービスがありますよ」「このアプリを入れてください」というスタイルが多いのかなと思います。あるいは、アプリがないのであればオンラインにコンテンツとして置かれているものを検索して探し出して使う。このようなリアルな接点で、オンラインのサービスを融合させていこうという取り組みはOMO(online merges with offline)という言い方をされています。

こうして世の中が便利になる一方で、さまざまなサービスが乱立していくと、例えばアプリを入れてもホームスクリーンのどこにあるか分からなくて起動できないような利用シーンだったり、オンラインのコンテンツの場合はキーワードを入れて検索することが面倒くさいといったことがあります。最近の世代はググらない世代とも言われる中で、オンラインサービスがリアルな接点と融合して結びついていくのはなかなか難しいというところがあります。

そこで、僕たちは、その場でとにかくスマホを取り出して、その場にある何らかのモノにスマホを近づけると瞬時にサービスが立ち上がるような世界観を作れば面倒くささとか煩わしさから解放されるだろうと考えました。そうすることでモノや場所とオンラインのサービスが有機的に繋がる。まさしくマージして世の中が便利になる。弊社はそういう世界観を作ろうというアプローチを長年にわたってやっている会社です。

こういう取り組みを進めていく中で、その場その場で体験価値を向上させるにはどうしたらいいのかという課題と向き合ってきました。体験価値の向上とは、その場の煩わしさから解放することもありますが、スマホを使うことで情報をリッチにわたしてあげることで体験価値を向上するということもありますし、これまでその場で手動、アナログで行われてきた消費活動をDXしていく上でも活用できるサービスを展開しています。

具体的には、どのような利用シーンで使われているのでしょうか。

萩原:主に一時滞在者が多いような場所で、そのときにちょっと使いたいサービスです。日常的に使うサービスであればアプリでも成立するシーンは多いとは思いますが、観光など一時滞在者が多く訪れる利用シーン、あるいは外国人向けのインバウンドサービスを中心としてやってきました。そういうシーンと向き合う中で、その場その場で求められるサービスがどういうものなのか、どういうサービスにこの技術が適合していのかを探ってきたわけです。

観光シーンでの情報配信というような分かりやすいシーンもあれば、スタンプラリーのような施策もあります。そこから人々の回遊を促進していくような仕組み、地域の経済圏を巻き込んでいくような仕組みに発展させていくと、体験に基づく経済圏が作れるんじゃないか。そういうアプローチも幅広くやってきました。その中で、人の回遊を生み出すきっかけとしてチケットに着目してきたんです。

人のリアル世界での行動のきっかけになることが多いのがいわゆるチケットの技術ですので、情報を渡すだけではなく、またイベントごとだけではなく、電子チケットそのものを体験の中に組み込んであげることで、人の回遊が生み出されたり経済効果が生まれるだろうと考え、チケットに着目しました。すると、当初はそういう用途に使われるとは思ってなかったんですけど、乗車券の領域と向き合うことができたんです。

乗車券として、まず一番最初に手掛けたのは滋賀県大津市です。自動運転バスの乗車券というものをやらせていただきました。乗車券に向き合っていくと、さまざまな新しい課題が見えてきました。都市部に住んでいると日常的にICカードを使ってピッと乗車していますが、そういった技術がなかなか浸透していないエリアがまだまだあるんだなということが地方経済と向き合っていく中で見えてきました。

今回、徳島の地域公共交通のプロジェクトでKDDIと協業されました。これはどのような経緯からですか。

萩原:僕たちが電子チケットに携わるようになった流れから、2020年頃、KDDIさんとの取り組みの中で南予地方(愛媛県南部)で乗車券を軸にした観光型MaaSプロジェクトでご一緒させていただきました。観光型MaaSはチケットを起点として地域経済圏での消費活動を促進していこうというものですが、ICカードを使えば便利だけれどもスマホと繋がっているわけではないので、それ以上の消費活動を促進しにくいといった課題がありました。

これらは特に地方都市において顕著な課題です。なぜならICカードの機器がなかなかに高額だということもありますし、よくできた仕組みですので非常に日常生活の中で便利に使われるわけですが、じゃあそれを僕たちの仕組みで実現するにはどうしたらいいのかというようなところで向き合っていくと、「区間乗車」というものを実現する必要があるんです。区間乗車とは、乗車区間というものを適切に判断した上でリアルタイムに精算していくというものです。

鉄道は比較的駅の改札の場所が動かない、つまり接点として場所が確定していますので、スマホをかざすアクションをきっかけに算出することが比較的やりやすい。しかし、地方都市では、駅が最寄りになくて路線バスが日常の中心になっていることが多いんです。でも、バスで鉄道でやっていたことをやろうとすると正確な位置情報がない。バスは移動しているので、バスの乗車口で(鉄道駅の改札でやるように)スマホをかざしてもバス停が判定できない。

そこで、(KDDIの)山田さんに「こういうところに市場性があるような気がするんですが、位置情報端末を僕たちは持ってませんし、KDDIさんはお持ちじゃないでしょうか」と、僕も最初はよく分からずに相談したんです。すると、「こういった端末の組み合わせで、こういうことができるんじゃないか」ということがディスカッションの中で出てきました。2年ぐらい前ですが、そこに取り組んでいけば地域課題の解決に繋がるだろうという話になったんです。

そこから開発を進めて、KDDIとアクアビットスパイラルズによるチケッティングの仕組みが、徳島交通の路線バスを中心とした地域MaaSの仕組みに本格実装されたということですね。

萩原:KDDIさんの端末経由で取得した位置情報に基づいてリアルタイムに料金を算出する。スマホを近づけるだけで、さまざまなIDを特定してチケッティングもできる技術と移動しているバスの位置情報を組み合わせることで、瞬時に精算ができるだろうということでシステム開発に着手しました。南予と徳島でのPoCを経て、さまざまな効果や課題が浮かび上がってきました。これを地方経済の問題解決に向けて、事業としてさらに推進していこうと思っています。

昨年12月、PoCを実施している中で、徳島でこの技術の体験会を開催しました。バスのチケットがこういう方向に進化してきたよ、ということをメディアや自治体、交通事業者の皆様に体験していただきたかったんです。これまでPoCを繰り返してきましたが、2年目の徳島の実証実験が無事に終わり、新たな課題や手応えが確認できました。そして今回、事業として地方課題を解決していくという発表を共同でできたわけです。

後編へ続く:KDDI×アクアビットスパイラルズ(後編)——独自開発のキャッシュレスで、徳島から広がる地域MaaSの可能性

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