- 海外トレンドレポート
2025年04月15日
SXSW2025参加レポートVol.2ーー注目のキーノート・セッション

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。
今回は、3/7~15にアメリカテキサス州オースティンにて開催された大型テックイベントSXSW 2025(South by Southwest / サウス・バイ・サウスウエスト、以下SXSW)について、2部作でお伝えします。
- 一色 望KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。
めぇ〜ちゃん
- Vol.1の記事についてはこちらをご確認ください!
注目のキーノート、セッション
主なキーノートやセッションの内容をご紹介します。
最も注目されたキーノートはBlueskyのCEOのセッションであり、SXSWがB2Cサービスやクリエイターに焦点を置いたイベントであることを想起させる内容となりました。
・新たなソーシャルメディアの躍進と行方 by Bluesky CEO
BlueskyのCEOであるJay Graber氏は、Blueskyをオープンなソーシャルメディアと表現し、米大統領選挙後にはユーザー数が昨年比10倍の3,000万人にまで成長したことを明らかにしました。Jay氏は、オープンプロトコルを活用することにより、ユーザーの自由な選択と開発者の自由を促進することを強調しました。Blueskyではカスタムフィードなど、ユーザー自身がソーシャル体験をカスタマイズできることが特徴であり、コミュニティ主導であることが他社にはないユニークな戦術となっています。
セッションの様子
・2025テックトレンドレポート by Amy Webb
Futurist(未来学者)のAmy Webb氏が、毎年恒例のテックトレンドを予測しました。Amy Webb氏は、AIなど最先端技術が急速に進む現代を、「テクノロジーが社会のルールを超える」時代に突入したと表現しました。キーノート終了後、1,000枚にも及ぶレポートが参加者に配布されました。サマリは以下の通りです。
- AI、センサー、バイオテックは融合され、人間の思考を超えて進化
- 行動モデルが言語モデルを凌駕し、AIは会話からアクションへ移行
- ロボット技術の進歩により、現実世界での適用が開始
- エージェンティックAIは目標の自己設定、複雑な意思決定の実行、人間の専門性の拡張を実現
- メタマテリアル(人工的材料)は物理的限界を超え、建築や製造業界を改革
- Tech GiantsはAIの需要によって計算資源やデータを共有するなど、予想外の提携を実行
- 気候変動・異常気象が急速な技術革新をさらに加速
- AIのエネルギー確保のためTech Giantsは小型モジュールへの巨額投資を進め、核発電が復活
- 量子コンピューティングはエラー訂正のブレイクスルーが実用的ユースケースとなり、変化点に到達
- 民間企業が宇宙空間を植民地化し、宇宙空間上での経済が誕生
・人間の感覚とAIの調和 by Archetype AI Co-founder
Archetype AIは、イノベーションアワードのファイナリストに選出されたアメリカのPhysical AI領域のスタートアップです。SXSW会場では、物理的空間におけるセンサーデータを理解するための基盤モデル「Newton」のデモを行いました。また、共同創設者はSXSWのセッションにも登壇し、「AIが解決すべき課題はデジタルの世界ではなくフィジカルの世界に多数存在する」と主張し、自社プロダクトの有用性を強調しました。
・PoCを超えてAIをビジネスに活用する方法 by You.com CEO
You.comは、複数のLLMをクロスオーバーして利用できるパーソナライズド次世代検索エンジンを提供する注目のスタートアップです。AIエージェントをビジネスの場で活用するにあたり、必要なマネジメントスキルとして、ワークフローと意思決定プロセスを明確に伝える必要性が強調されました。また、マルチエージェントシステムにおけるデータガバナンスや、企業のデータ分析にAIリサーチ・ツールを使用する利点についても語られました。
最後に
今年は、例年と比較して、スポンサー数や参加人数、展示社数が少し減少したように感じました。SXSWの特徴として、コンベンションセンターやホテルのイベント会場以外にも、街中にスポンサー企業の大規模なブースが設置されるのですが、そのような光景も今回はあまり見られませんでした。
要因としては、CESやWeb Summitなど他のテックイベントとの競争が激化していることや、SXSWが幅広いテクノロジーイノベーションの発信場所というより、クリエイティブな人々やインフルエンサーにとっての重要な拠点として認知される傾向が強くなっていることが考えられます。SXSWは今後、原点回帰し、よりコンシューマやアートに関連するテクノロジーにフォーカスした場所になっていくのかもしれません。
またイベント中に用意されたセッション約1,500のうち、AIをテーマにした内容が191あり、全体の12.7%がAI関連のものでした。他のテックイベントと比較して、AI一色というよりは、モビリティやXR、サステナビリティなど、コンシューマの関心も満たすような幅広いテーマが扱われていたように思いました。
毎年雰囲気が変わるSXSWですが、来年のテーマは何になるのか、予測しながら来年の開催を待ちたいと思います。
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