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2024年01月23日

中国スタートアップイベント「S創」ーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundの中国 上海拠点では、中国のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナーでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDI中国の熊よりお送りします。今回は、2023年9月に上海、12月に厦門にて開催された中国スタートアップイベント「S創」の参加レポートをお届けいたします。


熊 雨(Xiong Yula)KDDI中国
本誌の記者。KDDI Open Innovation Fundの中国 上海拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。

中国スタートアップイベント「S創」について

「S創」とは、元々「Slush」という名前のもとで知られていた組織ですが、2022年からは「S創」という名称に変更し、活動を再開しました。本家のSlushはフィンランドのAalto大学から始まった欧州最大級のスタートアップイベントで、2008年に始まった時は参加者が250人でしたが、15年後の2023年には1.3万人規模にまで拡大しました。中国では、Slushのライセンスと指導のもと、独立して運営されています。

2015年に中国に進出したSlushは、北京、上海、南京、深圳などで複数の国際イノベーション大会を開催し、合計来場者数は3.5万人以上に達しました。2022年10月にブランド名を「S創」に変更してからは、2023年9月と12月に上海と厦門で2回のフラグシップイベントを開催しました。

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
2023年11/30~12/1にフィンランドの首都ヘルシンキにて開催された北欧最大のテックカンファレンスSlush 2023の参加レポートは、こちらをご覧ください。

2023年9月上海イベント

2023年9月の上海イベントでは、投資家1,400人以上、企業2,500社以上、メディア600社以上の計9,500人が来場しました。このうち、2割は海外からの参加者でした。本イベントでは、製造業の先進事例、SaaS、生成AI、グリーンテック、バイオテック、エンタテインメント、ソーシャルインパクトの6つのテーマでパネルディスカッション、講演、およびピッチコンテストが行われました。

ピッチコンテストに応募したスタートアップ600社以上のうち、審査に通過したのは120社。更に15社がセミファイナルに進出し、5社が決勝戦に進出しました。決勝戦は高さ4メートル以上の「時空舞台」と呼ばれるステージにて、大型パネルにて資料が投影され、まるでロックスターのコンサートのような雰囲気が演出がされました。

決勝戦の審査は、DuPont中国の投資責任者、Fosun CapitalのCEO、そして地元ファンドMD、3人の投資家によって行われました。3人ともカウボーイの帽子をかぶっていたため、緊張した決勝戦の雰囲気が和やかに感じました。


ピッチコンテストの様子

それでは、決勝戦に進出したスタートアップ5社について、紹介します。

  1. OXYZ3
    OXYZ3社は、BtoBおよびBtoG向けのデジタルコンテンツを運営。また、当社は音楽とファン文化を中心に"新武林"という仮想世界を構築し、メタバースを運営。現在、中国の若者に人気な伝統的な要素とサイバーパンクの要素を融合した世界で、ユーザーは自由に音楽やアートの鑑賞・政策が可能。
  2. Simright(数巧科技)
    Simright社は、クラウドネイティブのCAE(コンピュータ支援工学)シミュレーションソフトウェアおよび共同開発プラットフォームの研究開発に取り組む。数値シミュレーション技術、最適化アルゴリズム、クラウドベースの共同システムを通じて、企業の製品設計と開発サイクルの短縮を実現。2016年の設立以来、パブリッククラウドのSaaSプラットフォームを利用する世界中のクライアントを抱え、またプライベートクラウドのクライアントには、中国商用飛行機、上海電気、中国第一汽車、三一重工、中船702研究所などの有名企業を含む。
  3. Stereye
    Stereye社は、2019年に設立され、大規模な空間知能技術ソリューション(Spatial AI)に注力し、高速3Dモデリングソリューションを提供。同社は多次元の合成SLAM(同時位置推定および地図作成)と空間知能計算技術を使用し、より速く、より低コストな3Dデジタルツイン生成技術を実現。単一の人物やセンチメートル単位の室内大規模シーン(100平方メートルから100万平方メートル)までのリアルタイムデジタルツインの構築が可能。
  4. Passive Edge
    Passive Edge社は、2022年に、米国から帰国した博士チームによって設立。高い安定性かつ、低コストでの製造を実現。当社製品は理論上、冷却液の熱流密度を4倍に向上させ、効果的な容積内で熱交換総量を増加させ、ポンプの消費電力と熱交換コストを低減することが可能。
  5. DeepKinase
    DeepKinase社は、精密医療と革新的な医薬品開発に貢献する企業。2019年に科学者、ベテラン専門家、連続起業家によって共同設立され、中核チームは強力な研究力と事業経験を兼ね備えている。特異な先進的なプロテオミクス技術により、より深いターゲットに作用するプロテオミクス技術製品化を実現し、自己所有の特殊技術を保有。

審査の結果、最終的にDeepKinase社が優勝しました。優勝スタートアップには、HiPhi自動車、Wework China、デロイト、アマゾンクラウドサービス、Agoraなどからイノベーション支援パッケージが贈呈されました。最後に、DJがパフォーマンスを披露し、優勝の雰囲気を一層盛り上げました。


優勝者の授賞式

2023年12月厦門イベント

上海イベントのほか、2023年12月に開催されたもう一つのフラグシップイベントである厦門イベントには、200人以上の投資家、400社を超えるスタートアップが集まり、計7,000人以上が参加しました。2日間のイベントでは、製造業の先進事例、AI、グリーンテック、バイオテック、エンタテインメント、6テーマに焦点を当て、パネルディスカッションや講演が行われました。

スタートアップの展示ブースでは、ドローンを手掛ける企業が多く、注目を集めていました。参加者はゴーグルをつけて超小型ドローンを操縦し、いくつかの障害物と輪をくぐり、AR空間上のレースが楽しめるようになっていました。


超小型ドローンの操縦体験の様子

2つの「S創」イベントを振り返って

S創のイベントは他のスタートアップイベントとは異なり、若い世代が多く参加しており、特に厦門でのイベントでは半数近くが大学生でした。また、会場は近未来的な設計になっており、上海イベントの「Quantumステージ」と厦門イベントの「潮ステージ」では、複数の大型スクリーンを使用し、遠くからでもゲストをクローズアップできるようになっていました。また、上海と厦門の両イベントで見られた「砂浜ステージ」では、実際の砂浜が用意され、観客はビーチチェアに座りながら講演を聞くことができました。


潮ステージ


砂浜ステージ

主要イベント以外にも、ファウンダー向けのネットワーキングイベント「Founders Day」や、各分野の投資イベント、スピーカーやゲストを招いたディナーなど、さまざまなサイドイベントがありました。今回は参加できませんでしたが、次回はサイドイベントのレポートもお届けしたいと思います!

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