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2023年12月22日

北欧最大のテックカンファレンスSlush 2023ーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、11/30~12/1にフィンランドの首都ヘルシンキにて開催された北欧最大のテックカンファレンスSlush 2023の参加レポートをお届けいたします。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

Slush概要

Slushは、フィンランドの首都ヘルシンキにて開催される世界最大級の年次テックカンファレンスです。ヨーロッパ内ではWeb Summitに次ぐ大規模イベントとして知られており、「世界で最も起業家にフォーカスしたイベント」と言われています。今年は、北欧を中心に約5000人のスタートアップ創業者、3000人の投資家、300のメディアが集まり、2日間で約2万件のミーティングと300件以上のサイドイベントが実施されたそうです。

イベントチケットは約1か月前には完売。世界中から起業家や投資家が集まるため、フィンランドに向かうフライトは軒並み満席で、私たちもフライトの確保は少し苦労しました。Slush期間中は、入場に必要なバッジの受取所にも、タクシーの停留所にも、長蛇の列ができていて、氷点下のフィンランドの寒さとは対照的に、イベントの熱気で街は活気づいていました。

会場も多くの人で賑わっていましたが、昨年と比較してスタートアップの展示ブースは少し減っていたように感じました。しかしミーティングスペースは多くの人が集まっていたので、Slushでは展示よりも投資家やスタートアップとのミーティングに注力する参加者が多いのかもしれません。


▲よく見るとSlushの文字になっています。エントランスに設置。

ダイバーシティに富む登壇者

ジェンダーギャップ指数が世界2位で、女性の社会進出が他国に比して目立つフィンランドですが、イベントの中でも女性躍進を大いに感じることができました。

イベントの中で注目の集まるコンテンツの1つであるオープニングショーでは、SlushのCEO、President、COO兼CFOが登壇したのですが、3人全員が女性でした。実際、Slushの運営チームをWebサイトで見てみると、女性が多く驚きました。


▲オープニングイベントで話すSlushのCEO。登壇者3名全員がSlushのボランティア出身だそうです。

また、フィンランドの元首相Sanna Marinもセッションに登壇し、彼女のリーダーシップの経験や起業家へのアドバイス、男女平等やワークバランスの重要性について語りました。
“Women are good leaders and good in their jobs, just go for it!” という言葉に、私だけでなく多くの女性参加者が励まされたに違いありません。

やはり注目のテーマは「AI」

Slushでは4つのステージが用意されているのですが、そこで語られるテーマを見るとその多くが「AI」に関連するテーマでした。やはりどのイベントでも、今年はAIがトップのトピックとなっていると感じました。


▲PicsartのCEOは、クリエイティブやデザインにおける生成AIの影響について語りました。

一色一色
メインステージではないにも関わらず超満員でした!

イベントの中で最も多く関心が寄せられたのは、Thrive Capitalによる、OpenAIのディベロッパーエクスペリエンス責任者Romain Huet氏へのインタビューでした。Huet氏は、OpenAIの進歩、ヨーロッパへの進出、そして将来の方向性について話しました。

Open AIはヨーロッパだけでも3400万人ものユーザーがおり、フィンランドだけでも60万人のユーザーがいるそうです。これは、ヘルシンキの人口とほぼ同じだけのユーザーがいるという計算になります。ちょうどこのセッションの少し前にSam Altmanの退任騒動などがあったのですが、 Open AIはユーザーからの強い支持を受け、カスタマーやパートナーへの影響はほぼなかったと語りました。

彼はディベロッパーエクスペリエンスの責任者の立場から、プロダクトにAIを導入する際の摩擦を減らしシンプル化することに重点を置いており、カスタマーからのフィードバックによりコストや体験などのさらなる向上を図っていることについても話しました。最後に、彼はOpen AIの技術を活用したプロダクトの開発について期待していると語りました。


▲OpenAIのディベロッパーエクスペリエンス責任者Huet氏の講演の様子。Open AIのポジティブな発展可能性について述べました。

既にOpen AIをベースとするプロダクトは多く生まれていますが、Open AI自体の競合も出てきている中で、今後の彼らの展開や戦略からも目が離せません。

Slush 100 Startup Competition

Slushの中で開催されるスタートアップコンペティション「Slush 100」では、今年は1100の応募企業の中から20社が選出され、Slushの会場でライブピッチを行いました。出場企業の20社のうち、AI関連の企業は少なくとも8社あり、この点からも今年のAIに対する注目度を感じることができました。


▲Slushのセミファイナルにも多くの観客が集まりました。

20社からさらに勝ち残って最終日にピッチを行った企業は以下3社です。

  1. Faircado(ドイツ)
    Faircadoは、中古品の検索ソリューションを提供するスタートアップです。AIを搭載したブラウザプラグインを無料で提供しており、ユーザーがオンラインショッピングをする際に自動で中古の代替品を提案します。eBayなど中古品を販売する50以上のプラットフォームと連携していて、主にサステナビリティや中古品に関心のあるZ世代から強く支持されるプロダクトです。
  2. Congrify(イタリア)
    Cognifyは加盟店向けのノーコード決済分析SaaSソリューションです。決済データを収集し、インサイトを提供することで、加盟店は売上を増やし、オペレーションコストを減らすことができます。
  3. Lifeyear(タリン)
    Lifeyearは、デジタルファーストな次世代型の心臓病ケアクリニックを提供しています。心臓病のない世界を作ることをミッションとしており、2030年までに 100万人の患者がデジタルファーストの心臓病関連ケアを受けられるようにすることを目指しています。

最後に

昨年に続き2回目の参加となりましたが、今回もSlushを通して多くのスタートアップと出会うことができました。日本人も過去最多と言われるほど多くの参加者がいたようで、サイドイベントなどを通じて多くの日系VCやスタートアップ界隈の方々ともお会いすることができました。外は凍えるような寒さでしたが、イベント参加者の熱量は他のイベントと比較しても高く、私はとても好きなイベントです。多くの刺激を受けることができました。

一色一色
また海外レポートをお届けしますのでお楽しみに!

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