- インタビュー
2023年09月13日
大企業や世界的ブランドとの共創で注目のseamint.、Z世代に刺さる商品を生み出す極意とは
- 株式会社seamint.
戎光璃(えびす・ひかり) - CEO
- 株式会社seamint.
赤峰沙枝 - 企画・マーケター
seamint.(シーミント)は、Z世代をターゲットにした企画・コンサルティング会社です。自らもZ世代である戎光璃(えびす・ひかり)さんが高校3年生の時に活動を始め、大学に通う傍ら企画やマーケティングについて学び、大学3年生の2019年に seamint. の前身となるネオレアを設立しました。
seamint. は、毎年6月と12月に、その年の上半期・下半期のZ世代におけるトレンドをまとめた「トレンド大賞」と次半期のトレンドを予測する「トレンド予測」を発表しています。2023年上半期のトレンド大賞では「NewJeans」や「むくえなちっく。」、2023年下半期トレンド予測では「AIインフルエンサー」や「MINAMI」がランクインしました。
最近のZ世代におけるトレンドの動向や、ビジネスへの影響などについて、seamint. CEOの戎光璃(えびす・ひかり)氏と企画・マーケターの赤峰沙枝氏に話を伺いました。
トレンド大賞やトレンド予測は、どのように選定しているのですか
戎:弊社創業メンバーである赤峰および現役女子大生であるインターン生がトレンド調査を担当しています。弊社内で次に何が流行るかの仮説を立て、約5.7万人の中高生のフォロワーに対してアンケートを実施し、定量的に調査します。そのデータを参考にトレンド大賞とトレンド予測をそれぞれ10個選定しています。
CEO 戎光璃さん(左)企画・マーケター 赤峰沙枝さん(右)
約5.7万人の中高生のフォロワーには、どういった形でリーチしているのですか
戎:勉強や文房具の情報を発信する自社アカウントを活用しています。2020年のコロナ禍になるタイミングで、弊社メンバーが女子大生として高校生や中学生向けに勉強方法を発信するInstagramアカウント「スタチャ」の運用を開始しました。運用開始2ヶ月でフォロワー1万人を達成し、今では中高生を中心に約5.7万人のフォロワーがいます。
seamint.の前身であるネオレアの創業メンバーが全員女子大生であったため、Z世代のマーケティングを行う上で、等身大のインサイトを伝えることができるという強みを持っていました。ただ、企業からのご依頼でもう少し下の年代である中高生の意見も聞きたいというお声をいただき、より中高生の声を直接聞ける場を設けるために中高生向けのInstagramアカウントを開始しました。
トレンド予測は何人のメンバーで行っていますか。seamint.のメンバーは、やはりトレンドにアンテナを張っている方が多いですか
戎:赤峰をはじめ、トレンド大賞やトレンド予測を担当するメンバーが約5人います。特に赤峰は、早起きしてTikTok、Twitter(現在の X)をチェックし、弊社Slack上のトレンドチャンネルで「これが流行っています」と積極的に発信してくれます。
例えば、2023年上半期トレンド大賞では「推しの子」を一位としました。選定理由は、「鬼滅の刃」の流行以降、漫画やアニメがさらに一般化して、流行りが見えやすくなりました。例えば、「鬼滅の刃」が流行った後に、「呪術廻戦」が流行って、その後「東京卍リベンジャーズ」、「SPY×FAMILY」が流行りました。この流れを加味して、次にジャンプ作品でバズりそうな「推しの子」を選ぼうという流れで選定しています。
過去の例も踏まえて、トレンド予測を進めているんですね。予測に関しても、Instagramでアンケート(どのくらい知っているかを尋ねる)を取るのですか
戎:Instagramでのアンケートでは、今の時点で知っているか、注目しているかを主に調査しますね。アンケート用の候補の選定する段階は、周りで流行っているものや自分がハマっているものをリストアップして、なぜその人がそれが好きなのかを深掘りして候補を選定します。
先ごろ発表された2023年上半期のトレンド大賞や2023年下半期のトレンド予測について、直近のトレンドの傾向や示唆があれば教えていただきたいです
2023年上半期トレンド大賞、2023年下期トレンド予測
赤峰:ここ1、2年で爆発的なトレンドがほとんどなくなりました。Z世代や若年層は、みんなで同じものを好きになるのではなく、それぞれの個性や趣味嗜好を大切にしていることが影響していると思います。
例えば、私たちが小学生の頃は学校ではクラス全員がAKBの話をして、AKBの音楽が放送で流れて、女子は嵐が好きでという時代でした。今はK-POP一つをとっても、New Jeans など新しいタイプが好きな子もいれば、TWICEやBLACKPINK、ボーイズグループが好きな子がおり、幅が広がっています。
もちろんコンテンツ自体の幅が増えたことも要因の一つですが、SNSを通して自分が好きなものを表現する人が増えたため、以前のように「これが今年のトレンドだ」というような大きなトレンドがほとんどなくなってきました。
大企業の方が、若者に向けた新規事業を考えるにあたって意識すべきことや、トレンドを踏まえて、こういうことをやると良いみたいなものはありますか
戎:メディアで「最近の若者はこういう傾向にある」と取り上げられたり、Z世代についての本も多数出版されたりなど、Z世代の消費動向の情報が世の中にたくさん出ています。しかし、実際にコミュニケーションを取らないとわからないことが本当に多いなと思っています。
例えば、Z世代はサステナビリティの意識が高いと言われますが、サステナビリティの意識が高いだけではなくて、どのようにサステナビリティの意識が高いのか、何をきっかけに高くなったのか、他の世代とどういう部分が違うのかは、実際にZ世代とコミュニケーションすることで一気に理解が深まります。
大企業の中には、若者との接点を直接持っている企業はあまり多くないと思います。seamint. さんが大企業とZ世代を繋いでいるプロジェクトには、どのようなものがありますか
Coachtopia
戎:ファッションブランドのCOACHさんが、Z世代と一緒に作っていくサステナブルファッションブランド「Coachtopia」を立ち上げました。「Coachtopia」のZ世代のコミュニティは世界各国にあり、日本では弊社がZ世代コミュニティの運営を担当しています。そこには、サステナブルに興味があったり、サステナブルに活動しているクリエイターさんやモデルさんなどが集まったりしています。
また、コンビニ大手のセブンイレブン・ジャパンさんのオープンイノベーションのプロジェクトにも参画しました。今年の6月20日に「Cycle.me(サイクルミー)」という時間栄養学に基づいた食品ブランドの新商品を発売されました。弊社にて、この商品を通じてセブンイレブンさんがZ世代にアプローチするためにはどうしたらいいのか、意見を出してもらうため、Z世代を30名集めた座談会を行いました。
Z世代にアプローチするためには、Z世代と直接コミュニケーションを取ることが大事だと感じています。ユーザヒアリングのような形で3〜5人に簡単に話を聞く方法ももちろんいいですが、ある程度まとまった人数から様々な意見を集めることでZ世代への理解が深まります。今後は自社でZ世代を集め、日常的にZ世代の意見を聞いていく企業が増えていくと思います。
ありがとうございました
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