- インタビュー
2026年03月19日
韓国発フィジカル AI スタートアップ RLWRLD が示す、日本市場攻略の鍵——KDDI との協業で見えた「ワンチーム」の重要性

- RLWRLD Inc.
李 勲 - 日本代表
- KDDI株式会社
貞光 雅徳 - CVC Capitalist
2月25日、東京・コングレスクエア日本橋で開催された「Open Innovation Summit by KDDI ∞ Labo × Headline Asia/ IVS」。KDDI ∞ Labo の2月全体会として位置づけられたこのイベントは、同社が昨年から掲げる「スタートアップとともに世界へ挑戦」の具現化を目指し、Headline Asia とのコラボレーションで実現した。
会場とオンラインを合わせて約300名が参加したこのサミットの最初のセッションでは、海外スタートアップが日本市場に参入する際の成功要因が語られた。ロボット基盤モデルを開発するRLWRLD と KDDI の協業事例をもとに、ジャパンエントリーに必要なマインドセットと具体的な取り組みが明らかになる。
シード段階で累積70億円調達、アジア発のフィジカル AI 企業

登壇したのは、リアルワールド(RLWRLD Inc.) 日本代表の李勲氏、KDDI CVC Capitalist の貞光雅徳、そしてモデレーターを務めた KDDI オープンイノベーション推進本部 BI 推進部の一色望の3名。
RLWRLD は韓国で創業し、現在は米国シリコンバレーに本社を置くフィジカル AI スタートアップ。李氏はボストンコンサルティンググループで AI やディープテック関連のプロジェクトを手がけた後、同社の日本代表に就任した。
李:シードの累積調達金額がだいたい70億円くらいになりまして、これは日本を除いたアジアで、シードの段階でスタートアップ史上一番調達金額とバリュエーションが高い企業として評価されております。
同社が手がけるのは、工場や物流倉庫などで人間の器用さが必要となるタスクをロボット基盤モデルで自動化するソリューション。一般的なフィジカル AI 企業がグリッパーなど自由度の低いロボットハードを使用するのに対し、RLWRLD は人間と同等かそれ以上の器用さを持つ五本指ロボットの基盤モデルを自社開発している。
米国のベンチャーキャピタル Insider Partners が作成したグローバルフィジカル AI マップでは、アジアで唯一ロボット基盤モデルをゼロから開発できる企業として位置付けられているという。
ローソンとの協業——品出し・陳列の自動化に挑む

KDDI からの出資後、RLWRLD の日本展開は急速に進んだ。KDDI サイドの紹介でローソン本社との打ち合わせが実現し、直営店舗での現場視察を経て、品出しと陳列の自動化という具体的な協業テーマが決まったのだ。
李:コンビニって一般的な商品は1日1回、生鮮食品は1日3回必ず品出しをします。商品が到着するとずっと品出しと陳列を続けますので、コストがすごく重いと判断しました。
昨年実施したミニ PoC では、RLWRLD のロボット基盤モデルを用いてカップラーメンの色とロゴの方向を認識し、同じ色で陳列しながらロゴが正面を向くよう配置するデモを成功させました。
さらに10月末には、高輪ゲートウェイ駅で開催されたKDDIのイベントでは、(協業パートナー機体を含む)五本指ハンド搭載ロボットのデモを実施。握手など人との接触を前提にした動作が注目を集め、大手経済紙などのマスメディアで取り上げられました。
今年のターゲットは、ローソンの実店舗での現場実証です。現在は事前準備として、多様なハードと多様なオブジェクトに対するデータを KDDI と協業しながら大量に収集するプロジェクトが進行しています。
事業連携を加速させた CVC 担当者の「伴走」

出資から事業連携まで1年弱というスピード感で進んだ背景には、貞光の徹底した伴走がありました。
貞光:事業部と一緒に走り続けるというのがポイントになります。CVC としては新しい事業を作りたい、スタートアップさんと技術を結びつけたいというところがあるんですけれども、事業部はまだスタートアップさんに関してはノウハウも少ないですし、R&D の部門によってはビジネスを作るのも困難が伴います。
そこで貞光は R&D メンバーやローソンをつなげるだけでなく、技術検証やビジネス構築においても先頭に立ち、必要なスキルを事業部に渡していく役割を担っている。
スタートアップとの信頼関係構築においても独自のアプローチを取っている。李氏が初めて日本を訪れた際、「日本の商社に会いたい」というコメントを受け、商社系の CVC や投資家へのコネクションを全て自らアレンジしたという。
貞光:事業会社ならではだなと思っているのが、産業を一緒に作るというところですね。ロボットはまだディープテックで実装に時間がかかりますが、事業会社の我々がいろんなパートナーを作り、政府に対して様々な取り組みを話すことで、我々が産業を作って、そこをスタートアップさんに入っていただくという作業を進めています。
こうしたサポートもあり、 RLWRLD は KDDI 以外の日系企業とも急速に協業を拡大している。ある大手メーカーの生産技術本部と生産ラインでは自動化実証を進めているほか、物流領域では2年単位の自動化プロジェクトを企画中だ。
事業連携をスムーズに進める上で、李氏が強調したのは2つのポイントである。
李:1つ目がワンチームで働くこと、2つ目がスタートアップが持つ技術に対する理解の解像度です。例えばある企業とは3ヶ月間、論文に対する勉強会をやっていました。打ち合わせでも弊社の提案をするのではなく、フィジカル AI とは何か、そのポテンシャルは何かをセミナーやワークショップで説明することを重視しています
技術の解像度を高めることで、事業会社側も具体的なユースケースを描きやすくなり、結果として協業のスピードが上がるという好循環が生まれています。
海外スタートアップの日本進出において、CVC の役割は単なる出資者にとどまらない。事業部への伴走、スタートアップの日本でのネットワーク構築支援、そして産業そのものを共に作り上げていく姿勢。RLWRLD と KDDI の協業は、ジャパンエントリーの新たなモデルケースを示そうとしている。
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