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2026年03月30日

3,100社超・12万ユーザーが利用——国内ボイスAI領域を牽引する RevComm 会田氏が語る「音声データレイク」という勝ち筋

株式会社RevComm
会田 武史
代表取締役

RevComm が提供する AI 搭載型コミュニケーションプラットフォーム「MiiTel」が、新たなフェーズに入った。2018年10月の提供開始以来、同社は電話解析 AI「MiiTel Phone」を起点に、コールセンター解析の「MiiTel Call Center」、Web 会議解析の「MiiTel Meetings」、対面会話解析の「MiiTel RecPod」と製品群を拡張。電話・Web 会議・対面のすべてのビジネスコミュニケーションを解析対象に収めてきた。


2025年7月には新サービス「MiiTel Synapse」を発表し、2026年1月に「MiiTel Synapse Copilot」のリアルタイムトークアシスト機能を実装。通話中の AI 支援から CRM 自動入力、さらには最大100件の通話を横断分析する機能まで、従来の音声解析の枠を大きく超えた。同月には横断質問機能も追加され、複数の通話データからチャット形式でインサイトを抽出できるようになっている。


同社代表取締役の会田武史氏は、三菱商事を経て RevComm を2017年に創業。Forbes AI 50 2023にアジア企業として唯一選出され、2025年には CES AI 部門イノベーションアワード、日本スタートアップ大賞2025総務大臣賞を受賞するなど、国内外での「ボイス AI」プレーヤーとしての評価を高めてきた。


2026年1月時点で累計約3,100社・12万ユーザー超が利用し、KDDI の法人営業部門では約650名が MiiTel RecPod と MiiTel Meetings を導入。2025年12月時点でインドネシアにおける累計導入社数は400社を突破。ジャカルタでは同年11月から開発体制を立ち上げ、12月に開発拠点設立を公表している。


前回のインタビューでは、a16z のレポートを起点にボイス AI 市場の構造を俯瞰した。会田氏はそこで、a16z が示す3層構造に「データレイヤー」が欠けていると指摘し、RevComm の勝負どころはまさにそこにあると語った。今回は、その戦略がプロダクトとしてどう具現化されたのか、Synapse Copilot のデモを交えながら聞いた。


「超優秀な業務秘書が5人つく」——Synapse Copilot の全貌

MiiTel Synapse は一言で表現するならまさに秘書エージェント、といったところだろう。このサービスは「Copilot」と「Agent」の2層で構成される。

Copilot は電話・Web 会議・対面・ウェアラブルデバイスの全チャネルから会話データを収集・蓄積し、AI がインサイトを抽出して業務を支援する。一方の Agent は、インバウンド・アウトバウンドの顧客対応を自動化する音声 AI エージェントだ。今回のデモで会田氏が見せたのは、Copilot が現場の業務をどう変えるかという具体像だった。

——Synapse Copilot とは何か
会田:超優秀な業務秘書とかコーチが、一人ひとりに全部つきますという話です。経営層であり、中間マネジメント層であり、プレイヤー、それぞれにだいたい5人の業務秘書がついて、それぞれの業務をこなしてくれます。

デモで最初に示されたのは、地方銀行の住宅ローン相談の事例だった。相談者の属性、購入予定物件、住宅ローンの諸条件、次回来店時の必要書類。これらの情報を AI が通話内容から自動抽出し、Salesforce の入力項目に沿ってすべて入力する。Synapse Copilot は Salesforce のほか HubSpot など主要な SFA/CRM との連携に対応しており、業界別のテンプレートも用意されている。会田氏はこの領域を「マイナスを0にする」と位置づけた。

——具体的にどういうことか
会田:たとえば「この会話から、お客様の関心や懸念事項を教えて」と指示すると、Copilot が会話全体を解析して、「お客様は固定金利と変動金利で悩んでいらっしゃるので、返済シミュレーションを明示してあげましょう」といった提案を返してくれます。さらにその懸念事項を踏まえた御礼メールの作成からワンクリックでの送信まで、一連の業務がシームレスにつながるようになっています。

Synapse Copilot のリアルタイムトークアシスト機能が、この支援を商談の最中に行うという点が特に驚くべき点だ。通話中に生成 AI が会話内容を解析し、確認事項や提案を担当者の画面にリアルタイムで表示する。任意のタイミングでヒアリング漏れを自動チェックする仕組みになっている。

——あとからレビューするのではなく、即時でできる?
会田:10分に1回とか、5分に1回とか、リアルタイムの任意で設定したタイミングで、ヒアリング漏れがないかを自動的にチェックしてくれます。たとえば人材系の会社であれば、入社希望時期、応募先決定の約束、他社選考状況を確認していないよ、といった指摘をしてくれるんです。

RevComm は労働人口の減少による採用難と人材育成の課題を、Synapse Copilot の主要な解決対象に据えている。経験の浅い担当者でも、AI コーチのリアルタイム指摘に従えばベテラン水準のヒアリングが可能になる。属人的だった営業スキルを仕組みとして底上げする設計だ。

人材業界での活用事例も印象的だった。転職希望者との面談でキャリアの棚卸しをヒアリングした内容から、その場で職務経歴書を自動生成できるという。

——即時の効果はどのようなところにでてくる
会田:転職希望者にヒアリングしていくと、もう人生相談になるんです。すっきりして終わって、その後連絡がつかなくなるのが7割です。残り3割も、レジュメを作るのに3カ月、6カ月かかります。でも、ヒアリングした内容をもとにその場で職務経歴書を作ると、「私、こんな魅力的なキャリアだったんだ」と気づいて、転職マーケットにすぐ出てくるんです。7割の音信不通が減りますし、3カ月かかっていたものが5秒になります。

会田氏はこの思想を「Artificial Intelligence ではなく Augmented Intelligence」と定義する。
人間を置き換えるのではなく、人間の能力を拡張する知性だ。

「超優秀な業務秘書が5人つく」——Synapse Copilot の全貌

Synapse のもうひとつの柱は、個別の商談支援を超えた「組織横断のインテリジェンス」だ。2026年1月に実装された横断質問機能は、最大100件の通話データを AI が読み解き、個別の録音や文字起こしを確認することなく、知りたい情報をチャット形式で抽出・分析できる。

新製品発売時の顧客反応の一括抽出、トップ営業の成功パターンの言語化、重要案件の時系列要約など、従来は人手で行っていた分析業務を AI が代替する。

——元々、データが集まれば AI によりビジネスの可能性が格段に広がる
会田:1つの商談に対して1人にフルカスタムで支援するのは、プレイヤーやマネージャー向けの話です。経営層にとっての価値は違います。たとえば「関西地域に住む世帯年収1,000万円以上の女性が、金融商品にどんなことを求めているのか」を知りたいとします。電話、Web 会議、対面でのデバイスで交わされたすべての会話を AI がクローリングして、インサイトを抽出してくれるようになっています。これがまさに MiiTel Synapse です。

会田氏はこの機能を「戦略コンサルタント20人のチームが全国津々浦々の営業を回って、レポートを作ってくれるイメージ」だと表現した。実際に KDDI の法人営業部門では、約650名の営業チームが MiiTel RecPod と MiiTel Meetings を導入し、対面とオンラインの両方の商談データを一気通貫で社内システムに取り込んでいる。

商談内容の自動要約、Voice of Customerの集約、営業品質の向上がその目的だ。このデータの規模は想像以上だ。

——どれぐらいのデータが集まるのか
会田:ある銀行さんが300人で半年ご利用いただくと、約30万時間の営業データが集まります。これがどれくらいのデータ量かというと約65億トークンです。Google の Gemini が世界で一番長いコンテキストウィンドウとして100万トークンを持っていますが、その6,500倍のデータがたった半年、数百人で集まります。

会田氏の構想はさらに先を見据えている。たとえば企業がこの音声データレイクをもとに独自の LLM を構築し、自動営業 AI や自動顧客対応に活用。MiiTel Synapse の「Agent」側は、まさにそうした自動化の受け皿として設計されている。例え話として、会田氏はこうしたサービスの輸出の可能性にも触れてくれた。

日本企業の営業・顧客対応には、顧客の懸念を先回りして汲み取り、きめ細かく対応する「おもてなし」型のコミュニケーションが根づいている。

コールセンターにこうした丁寧な対応をする音声データレイクがあれば、国内で蓄積された成功パターンを構造化し、独自の LLM モデルとして各国のコールセンターで日本品質の顧客対応を再現できる、というのだ。まさに「おもてなし」文化の輸出と言えるだろう。

音声が起点になる——会話型ワークフローの未来

デモの中で印象的だったのは、会田氏がすべての操作を音声で行っていたことだ。「お客様の懸念事項を教えて」「御礼メールを作って」。キーボードやマウスではなく、話しかけるだけで AI が動く。これから世界で起こる新たなパラダイムのひとつ、それは音声を起点にした業務ワークフローそのものの転換だ。

ChatGPTの登場以降、大きく注目されるようになったのが Model Context Protocolの考え方だ。

MCP の本質は、自然言語でコンピューティングリソースを操作できることにある。音声で指示を出し、AI がデータレイクから情報を抽出し、CRM や基幹システムに書き込み、その結果を計測・検証する。従来はシステムごとに画面を開き、手入力していた一連の業務が、ひとつの会話の中で完結する世界だ。

RevComm の話題で「音声」は企業に蓄積されるナレッジ・データレイクとしての側面と、こうしたコンピューターリソースを操作するためのコマンドとしての役割の両面があることを整理しなければならない。

しかし今、彼らはその両方を手にしようとしている。

——こうなってくると「声」を通じて企業を変革できるビジョンがみえてくる。そのコアとなる既存のシステムなどとのつなぎ込みはどう進んでいるのか
会田:すでに API 連携でさまざまなツールを使い込んでいるので、業務を全部やってくれるようになっています。各社でもプロジェクトが動き始めていて、おそらく個社名でプロジェクトを共有できる日は数カ月以内に来るんじゃないかと思います。

たとえばとある金融機関さんであれば、商談中にお客様が住宅を購入していて、ローン残高がこれだけ残っている。保険もこれを契約している。実は昨年にお子さんが生まれていて、学資ローンのニーズがありそうだ、というところまで全部パッと出してくれるわけです。

音声で命令し、データレイクに蓄積し、基幹システムに反映し、結果を検証する。この一連のループが会話の中で回り始めたとき、業務のあり方は根本から変わる。

RevComm が構築しているのは、単なる音声解析ツールではない。
音声を起点とした、企業の業務基盤そのものだ。

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