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2026年10月20日

設計AIで世界のものづくりを支える。Outerportが描くグローバル成長戦略

アウターポート合同会社
瀧川 永遠希
CEO

設計AIで、産業変革の加速を目指すOuterport。

グローバルに事業を展開する同社は、さらなる成長に向けてKDDI Beyond Borders Acceleratorに参加している。


サンフランシスコに本拠地を置く同社は、電気設計や制御システム設計を支援するAIモデルを開発するスタートアップだ。重要な事業基盤の一つが、日本の製造業との協業。日本の製造業企業と協力し、各社の設計業務の課題解決に取り組みながらプロダクトを磨き上げてきた。


そして今、顧客やパートナーとの接点をさらに広げ、グローバルな事業拡大を加速させようとしている。

なぜ同社は設計という専門性の高い領域に挑み、日本企業との協業でどのような価値を生み出しているのか。KDDI Beyond Borders Acceleratorにかける期待とともに、CEOの瀧川氏に話を伺った。


設計人材不足という世界共通の課題に挑む

Outerportは、生産装置や工場・プラント、データセンターなどの電気・制御設計を支援するAI技術の開発に取り組んでいる。専門性の高い設計業務を対象としており、設計業務の効率化だけでなく、業界全体が抱える人材不足の解決にも挑もうとしている。こうした設計業務は、私たちの暮らしを支える社会インフラの根幹を担っている。

例えば、ごみ焼却施設ではクレーンによる搬送や圧縮設備との連携、焼却設備の制御など、多数の設備が連携しながら稼働している。生産装置や工場、化学プラント、物流設備でも同様に、それぞれの装置や設備を最適に動かすための制御システム設計が必要だ。

しかし、それらの装置や設備は案件ごとに条件も構成も異なるため、多くのケースで個別設計が求められる。結果として高い専門性と膨大な工数が必要となり、設計業務は属人化しやすい環境にある。

さらに近年は、設計エンジニア不足という課題も深刻化している。長年現場を支えてきたベテラン技術者の高齢化や引退が進む一方、その知識やノウハウを引き継ぐ人材は十分ではない。設備投資や新規プロジェクトへの需要があっても、それを支える設計リソースが不足している状況が、日本だけでなく世界各地で発生している。

瀧川氏自身も、これまでのキャリアを通じてそうした課題を数多く目にしてきた。

高校時代には部長としてロボコンのチームを率い、金属加工工房でのアルバイトも経験。大学では市販車を自動運転車へ改造するプロジェクトを主導した。工場DXにも携わり、NVIDIAでは、CADなどで扱う三次元データの研究開発に従事した。

こうした経験を通じて実感したのが、大規模なハードウェア開発に必要な人手と、調整にかかる時間だった。少人数のチームでも、より大きく複雑なものづくりに挑めるようにしたい。その思いが、設計をAIで支援する取り組みにつながっている。

Outerportが目指すのは、人を置き換えるAIではない。熟練技術者が持つ知見や設計思想を活かしながら、技術者一人ひとりが担える仕事の幅を広げ、より多くの企業が高品質な設計を実現できる環境をつくることだ。設計にかかる時間や負担を減らすことで、企業がより多くの案件を受注し、新しいアイデアや技術を製品や生産の現場に取り入れられるようにする。

設計という知的生産活動を支援し、産業全体の生産性向上や新たな技術の実用化につなげていく。そして、ものづくりを支える設計力を次世代へつないでいく。それがOuterportの目指す未来である。

日本の製造業とともに、設計の現場を変える

Outerportの歩みを語る上で欠かせないのが、日本の製造業との協業だ。

サンフランシスコに本社を置き、グローバルに事業を展開する同社にとって、日本は重要な市場の一つだ。日本の製造業企業は、設計業務の変革にともに取り組む重要なパートナーでもある。

その背景にあるのが、日本の製造業への強い敬意である。瀧川氏は、半導体工場が集まる米国オレゴン州の工業地域で育った。身近なものづくりの現場や、アルバイト先の金属加工工房では、日本企業の工具や工作機械が使われていた。日本人が少ない地域で育った瀧川氏にとって、日本企業の技術が現地のものづくりを支えていることは、自らのルーツを誇りに思える経験でもあった。

日本企業の現場には長年積み重ねられた知見やノウハウがあり、現場担当者の業務理解も深い。特に設計領域では、その解像度の高さが際立っていたという。どのような課題を抱えているのか。どのような条件の中で業務を行っているのか。そうした現場の声を踏まえ、顧客の業務に即した設計支援を目指してきた。

設計AIのような専門性の高いプロダクトでは、現場の業務に即した支援が欠かせない。だからこそ、日本企業と向き合いながら、実務で役立つサービスを磨き上げることには大きな意味があった。

サービス概要

グローバルな成長を加速するKDDI Beyond Borders Accelerator

Outerportにとって、KDDI Beyond Borders Acceleratorへの参加は、グローバルな事業拡大を加速するための機会だ。新たな顧客やパートナーとの接点を広げ、設計AIの活用をさらに広げようとしている。

日本の製造業企業やインフラ関連企業との協業では、設計現場の課題に即した支援に取り組んできた。今回のプログラムでも、新たな顧客・パートナーと具体的な課題解決につながる関係を築こうとしている。

しかし、技術が優れていることと、その技術を必要とする顧客に届けられることは別の話だ。スタートアップにとって、営業リソースや顧客接点の獲得は大きな課題になる。特に製造業やインフラ領域では、顧客との信頼関係構築に時間を要するケースも少なくない。そうした中で出会ったのが、KDDI Beyond Borders Acceleratorだった。

瀧川氏は、今回のプログラムの価値を単なる販路開拓にとどまらないものだと考えている。KDDIグループやパートナー企業との接点を得られることはもちろん、新たな顧客との対話を通じて具体的な課題や導入ニーズへの理解を深め、協業につなげられることにも大きな魅力を感じたという。

現在はすでに、これまで接点のなかった企業との対話も始まっている。顧客ごとの具体的な課題や導入要件を捉え、自社技術を活かせる案件や協業機会を広げていく。

KDDI Beyond Borders Acceleratorは、そうした事業拡大を進めるための実践の場となっているのだ。

データセンター市場で、設計AIの活用を広げる

KDDI Beyond Borders Acceleratorを通じて、Outerportが特に注目しているのがデータセンター市場だ。

生成AIの普及を背景に、世界中でデータセンター建設は加速している。一方でその設計には、電力供給、冷却設備、環境負荷、騒音対策、地域との共存など、多数の制約条件が存在する。つまり、極めて複雑な設計が求められる市場である。

瀧川氏は、この複雑性の高さこそが自社技術の価値を発揮できる領域だと考えている。

Outerportが持つ自動設計やGenerative Engineering※の技術を活用することで、複雑な条件下での設計業務を支援できる可能性があるからだ。

設計要件や商習慣は、市場や顧客によって異なる。今回のKDDI Beyond Borders Acceleratorでは、顧客獲得とともに、顧客ごとの課題や導入要件への理解を深めていく。
そうした具体的な検討を進め、事業拡大につなげることが、今回の取り組みの大きなテーマとなっている。

研究から実用化までの距離を、短くする

Outerportの事業の根底には、新しい技術や研究成果を少しでも早く社会に届けたいという、瀧川氏の思いがある。NVIDIAでの研究を通じて、研究成果が実際の製品に組み込まれるまでには長い時間がかかることを実感したという。

瀧川氏は、ハードウェアや製造業では、設備投資や安全性に関わるリスクも大きく、実用化までの時間はさらに長くなりやすいと考えている。例えば、化学メーカーの研究室で新しい素材が開発されても、プラントで安定して量産できるようになるまでには時間がかかる。研究室で確認できた製法を生産規模に合わせて検証し、必要な設備や制御システムを設計して、安全性や品質を確保しなければならないからだ。

AIによる研究の自動化が進むほど、その成果を実用化するまでの時間を短くすることが重要になると瀧川氏は考える一方で、研究成果が現場に届かないままでは、その価値を十分に活かせない。Outerportは、その過程で欠かせない設計をAIで支援することで、技術者が新しい技術を現場に取り入れ、実用化するまでの時間を短くしていくことを目指している。

グローバルに設計AIの活用を広げ、研究から実用化までの距離を縮める。Outerportは、新しい技術が社会に届くスピードを上げていく。

※Generative Engineering:エンジニアが1つの設計案を作るのではなく、AIが数百〜数千の設計案を生成し、その中から最適解を見つける手法

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