1. TOP
  2. インタビュー
  3. 低コストで環境に優しい素材を開発できる新技術! - ファーメランタ
  • インタビュー

2024年05月17日

低コストで環境に優しい素材を開発できる新技術! - ファーメランタ

ファーメランタ株式会社
増田 直之
事業開発マネージャー

2024年5月9日、KDDI ∞ Laboの月次全体会において、スタートアップ4社が大企業に向けてピッチを行いました。登壇されたスタートアップにMUGENLABO Magazine編集部のめぇ〜ちゃんがインタビューをしたので皆様にお届けいたします。


2社目はファーメランタです。合成生物学を応用し、微生物発酵の過程で作られる植物二次代謝産物(PSM:plant secondary metabolites)を用いた製品の開発をするスタートアップです。今回は、ファーメランタの事業開発マネージャー 増田 直之氏にお話を伺いました。


めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
ファーメランタでは希少で高価な天然由来成分を発酵生産出来る微生物を独自技術で作り出します。

事業開発マネージャーの増田氏に伺いました

何をしている会社ですか?

増田:ファーメランタ株式会社は2022年に石川県立大発ベンチャーとして設立された合成生物学領域のスタートアップです。これまでにアルカロイドやテルペノイド、フラボノイドなどの多様な物質の発酵生産に成功しており、さらには人工生合成経路のデザインにより天然に存在しない化合物についても合成が可能となりました。弊社の技術の強みはアカデミア研究から培われた経験による独自のデザイン技術です。

独自の「生合成経路設計技術」、「多段階生合成遺伝子のバランス制御技術」、「長鎖遺伝子の効率的導入法」、「機能発現のための各種酵素改変技術」、「大量タンパク質発現耐性株」などの組み合わせにより、実用的生産菌株を構築することに成功しました。


サービスイメージ

なぜこの会社を立ち上げたのですか?

増田:我々の研究チームは、2008年に世界で初めて植物二次代謝産物であるアルカロイドを微生物で発酵生産することに成功しました。以来、2011年に多様なアルカロイド化合物のプラットフォームとなる中間体を、2016年にWHO指定必須医薬品の原料をグルコースから発酵生産することに成功するなど、研究成果を積み上げてきました。

こうしたアカデミアにおいて長年積み上げた様々な成果は、正に「合成生物学による微生物発酵を通じて、有用物質生産手法に産業革命」を引き起こすことのできるインパクトを有していると考えております。アカデミアにより生み出された画期的な技術を通じ、我々は「自然の潜在能力を最大化し、人類と地球の健康に貢献する」ことをミッションとして、ファーメランタ株式会社を設立し事業をスタートしました。

また代表取締役CEOの柊崎は、申請者の技術シーズを確立した研究チームを率いて、2022年10月、法人を設立しCEOとして着任しました。同社を創業する原体験は、学生時代、ケニアでJICAの青年海外協力隊としてボランティア活動に参加した経験にあります。ケニアは年間約350万人のマラリアの患者がいますが、当時、米国の合成生物学のAmyris社がビルゲイツ財団の支援を受け、植物から抽出される抗マラリア薬の原料を効率的に異種の生物である微生物に発酵生産させる実用化に成功したというニュースに衝撃を受けました。

熱帯地域は農業にも向かず、さまざまな健康・栄養に関する大きな社会課題を抱えているため、これらの解決に資する有用な物質を効率的に生産することができる技術の可能性に関心を持ちました。世界的に合成生物学という分野が盛り上がりを見せる一方、国内ではあまり注目されていないことに危機感を覚え、自分で事業を立ち上げることを決意しました。

これからの目標はありますか?

増田:ファーメランタ株式会社では、多段階の遺伝子導入技術をはじめとする合成生物学による産業用の人工菌株を構築するための技術を保有しています。これら技術を応用し、微生物を工場とする持続可能な物質生産方法により、地球規模の様々な物質生産の課題の根本的な克服を目指しております。

植物の二次代謝産物は、化学合成法による代替生産が難しい複雑な化学構造を持ち、そもそも植物と同じ生産能を保有する微生物は存在しないため、大腸菌に多くの遺伝子を導入して植物と似たような目的物質の代謝経路を構築する必要があります。提案者の技術を用いて、グルコース等の簡素な糖源からそのような有用成分を微生物に発酵生産させることができれば、気候や栽培地域に依存せず、日単位でスケーラブルな生産及び供給が可能になります。

これにより、医薬品、食品、化粧品、農薬などを含め、実用レベルでの利用が難しかった多様な有効成分を用いて産業・製品メーカーにおける製品開発が可能となり、世界中の人々の健康に資する原料を届けることが可能となります。

総じて、微生物による物質生産で問題になる多くは、実用化面での生産コストです。植物の希少成分は非常に高付加価値であるため、生産コスト面では発酵法による実用化を実現しやすいです。更に長期的には、より高度に生命をプログラムし、望んだとおり制御できるようなレベルまで技術を確立し、持続可能な微生物発酵法という手法で、効率的に何でも安く沢山つくることができる世界を実現することを目標としております。

最後に一言お願いします

増田:私たちファーメランタでは持続可能な発酵プロセスを通じて、自然の潜在能力を最大化し、人類と地球の健康に貢献することを目指しています。「合成生物学による微生物発酵を通じて、有用物質生産手法に産業革命を起こす」というビジョンに共感いただけるパートナー様との協業を望んでいます。

めぇ〜ちゃんめぇ〜ちゃん
植物性由来の商品を安価で大量生産できる「産業革命」が起こるのもすぐそこなのかもしれませんね!それでは次回もお楽しみに!

ファーメランタ株式会社
https://fermelanta.com/
微生物発酵の過程で作られる植物二次代謝産物を用いた製品の開発

関連記事

インタビューの記事

すべての記事を見る記事一覧を見る

Contactお問い合わせ

掲載記事および、
KDDI Open Innovation Program
に関する お問い合わせはこちらを
ご覧ください。