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2025年08月08日
食農×宇宙の連携可能性を探る――MUGENLABO UNIVERSE~東京都TIB CATAPULT共催イベントレポート~

2025年7月25日、業界を超えた事業連携の創出を目的に、東京都のイノベーションクラスター創出を目指す事業「TIB CATAPULT 」に参画するMUGENLABO UNIVERSE(代表企業:KDDI)と、Sustainable AgriTech&FoodTech Cluster (代表企業:AgVenture Lab )の共催イベントを実施しました。
当日はアグリテック・フードテック分野およびスペーステック分野の課題解決に取り組む企業によるパネルディスカッションやピッチを通じて、「食農×宇宙」の共創可能性を探りました。本記事では、その内容を抜粋してお届けします!
TIB CATAPULTについて
東京都の強みとなるインダストリーやテクノロジーの領域において、イノベーションを巻き起こすために組成された複数企業からなる「クラスター」と、東京都が協定を締結し、クラスター領域におけるスタートアップとの連携・協働を推進、イノベーション創出を目指します。採択されたクラスターはそれぞれ、グローバルに成長するスタートアップ創出に向け、3カ年で20件以上の大企業などとスタートアップによる協働実績の創出を目指します。
有識者によるパネルディスカッション
本パネルディスカッションは、宇宙空間におけるアグリテック・フードテックの活用について、近未来と中長期的な展望の2フェーズに分けて実施しました。
【パネルディスカッション①】

パネルディスカッション①の様子
パネルディスカッション①では、 有識者として一般社団法人SPACE FOODSPHERE 理事・事業開発部長/株式会社Space Food Lab. 取締役・CMOの菊池 優太氏、インテグリカルチャー株式会社 取締役CTO・COOの川島 一公氏に「宇宙空間における「細胞農業」の可能性」をテーマにお話しいただきました!
< 登壇企業紹介 >
- 一般社団法人SPACE FOODSPHERE
- インテグリカルチャー株式会社
宇宙における食料の生産及び供給並びにそれに関連した地上ビジネスに関わる市場の早期創出に向けて、国内外における産学官の有機的な連携を促進。
細胞培養技術で、食品・化粧品・素材分野で新たな産業を創出し、サステナブル社会に貢献する細胞農業カンパニー。
テーマ:宇宙空間における「細胞農業」の可能性
まず、宇宙での食料生産技術を地球に応用することで、環境問題や食料不足に対処する新たな手段となる可能性があると話されました。特に、月面での食料生産の仕組みづくりは、培養肉や人工土壌を活用した効率的な食料生産技術が重要な役割を果たすと考えられており、これにより宇宙での持続可能な食料供給が実現できると期待されています。
また、動物細胞をタンクで育てる技術には、宇宙における新たなタンパク質源としての可能性があると語られました。加えて、藻類を利用した持続可能なエネルギー源の確保も、宇宙における食料生産の効率化に貢献しうるとされています。さらに、日本の技術力や味へのこだわりは、細胞農業の発展を支える要素であり、日本のフードシステムは世界的にも高い水準にあると言えるようです。
最後には、異業種間のコラボレーションの重要性にも言及されました。宇宙での効率的な食料生産を実現するためには、さまざまな技術や企業との連携が欠かせず、宇宙と地球の食料システムが相互に補完し合う未来が重要と結論づけられました。
【パネルディスカッション②】

パネルディスカッション②の様子
パネルディスカッション②では有識者として宇宙航空研究開発機構(JAXA)の鈴木 智美氏、株式会社TOWING 取締役CTOの西田 亮也氏に「宇宙空間における「植物栽培」の可能性」をテーマにお話しいただきました!
< 登壇企業紹介 >
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
- 株式会社TOWING
日本の宇宙・航空に係る技術開発を行う中核的実施機関と位置付けられ、同分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して実施。
植物の炭等のバイオ炭(多孔体)に微生物を付加した高機能バイオ炭「宙炭」を軸に事業を展開。
テーマ:宇宙空間における「植物栽培」の可能性
まず、月や火星での植物栽培に関する国際的な研究について紹介されました。無重力環境での植物栽培の研究や実験、月面・火星での栽培を目指した技術検討を進められています。月面では2030年代には小規模な植物栽培実証、2040年代には農場規模での栽培を目指されています。特に、少リソース(水や電力)な栽培方法や、土壌の選定、無重力環境に適応した栽培システムの開発が重要な技術課題とされています。
続いて、バイオマスを熱で処理して作る炭と微生物を活用した持続可能な農業技術に関する取り組みが紹介されました。この技術は、地球上での活用に加え、宇宙環境への応用も視野に入れられており、特に月や火星のレゴリス(砂のような物質)を耕作可能な土壌へと変換する研究が進められています。また、持続可能なサプライチェーンの構築や環境負荷の低減を目指した取り組みも行われており、これらの技術が将来的に宇宙での食料生産に貢献できる可能性があると語られました。
最後には、宇宙での植物栽培を実現することで、宇宙探査の持続可能性が高まり、地球外での人類の生活基盤が整う可能性について議論されました。宇宙農場の自動化や人手によるメンテナンスの必要性、企業間の連携の重要性が指摘され、宇宙での植物栽培技術が地球の環境問題の解決にも寄与する可能性があると話されました。
スタートアップピッチ

スタートアップピッチの様子
食農分野と宇宙分野の両方に親和性のある事業を展開するスタートアップが登壇し、各社の会社概要や具体的な取り組み内容を紹介しました。
- 株式会社インターホールディングス
- 輝翠株式会社
手動で真空状態にできる液体用真空容器「shin-ku bottle(真空ボトル)」、中身の味や香りをキープできる試飲・量り売り用真空装置「shin-ku SERVER(真空サーバー)」を開発。
運搬、草刈り、農薬散布、農場データ収集等の主要な農作業を自動化する宇宙技術を取り入れたオフロード果樹園向け自動車両「Adam(アダム)」の開発。
めぇ〜ちゃん
- 会場からの質疑応答では、サービスがもたらす社会的インパクトや、その実現を支える技術について活発な議論が交わされました。
おわりに
今回のイベント開催にあたり、月刊サンデーで「ブループランター 」を連載中の漫画家・笹乃さい先生よりご共感をいただき、応援のイラストとコメントを寄稿していただきました。
「ブループランター」は、宇宙で地球と同じように野菜を育てるという、一見遠い未来に思える宇宙農業をテーマにした物語です。宙野(そらの)園芸高校・宇宙農業科を舞台に、高校1年生の千留(ちる)と実習助手の青星(あおせ)が、宇宙の“食”をめぐって奮闘する様子が描かれています。

MUGENLABO UNIVERSEは、今後も領域を越えた交流の場をつくり、皆様とともに日本の宇宙ビジネスをさらに盛り上げていきます!
めぇ〜ちゃん
- 次回は9/2「宇宙×エネルギー」をテーマにイベント開催予定です!ぜひご参加ください!