- インタビュー
2024年05月13日
Z世代のためのeスポーツ施設「esports Style UENO」が誕生 担当者の林氏に聞いた誕生の背景と展望
- KDDI株式会社
林 晃子 - パーソナル事業本部 パーソナル第1営業本部 営業推進統括2部
KDDIは今年2月、eスポーツ専用施設「esports Style UENO」を東京・上野に開業しました。この施設には、10Gbpsの高速固定回線と最新のハイスペックPCが導入され、ゲームプレイヤーに快適な環境を提供します。
大型LEDビジョンを備えたイベントエリアも用意され、eスポーツの観戦需要にも対応しています。最大140名収容できるパブリックビューイング会場やゲームファン同士が交流できるコミュニティスペースとしても活用できます。
esports Style UENOが生まれた背景や今後の展望について、この施設の担当者である、KDDIパーソナル事業本部の林 晃子(はやし あきこ)氏に話を伺いました。
KDDIが上野にeスポーツ施設を作った理由
esports Style UENO イメージ
携帯の買い替えサイクルの長期化や格安SIMの台頭など市場環境が変わる中で、KDDIでは新たな顧客接点構築を模索しています。特にネットリテラシーが高く、オンラインで自己完結してまうZ世代との接点構築を大きな課題として捉えています。
そこで着目したのが、いまやエンターテインメントの1ジャンルとして確立したeスポーツです。東京・上野に今年2月に誕生したKDDI esports Style UENOでは、Z世代を中心とする新たな顧客との接点獲得と新しいコンテンツ開発への布石となることが期待されています。
目的がないと店頭に足を運んでいただけない、それならば目的自体を作ろうと考えました。プレイや配信だけでなく、観る・応援する文化にまで拡大をみせるeスポーツは、ラグのない通信環境が勝敗を左右するという点も含めて、私たち通信事業者が行う事業としてふさわしいと考えました。
林氏
少子高齢化もあり新規ユーザーの獲得機会が減少する中、本業に軸足を置きながらもピボットの発想で新しい売上をつくる、KDDIがeスポーツに着目したのもそんな理由からでした。
施設の立地として上野が選ばれた最大の理由は、秋葉原に隣接し、そこに根付く濃密なコミュニティ文化を活かせるため。秋葉原はインバウンドも含め多くの人々が行き交う街であり、そこにある熱量の高い”好きを追求する文化”を取り込めれば、集客力は高まると考えました。また、施設内ではコミュニケーションを重視した設計が施されました。仲間同士が近い距離で会話の楽しめる、コミュニティ形成を意識した空間作りがなされています。
仲間と集えるような個室を作ったのが施設の特徴的なところですね。最大6人が入れる個室は、間仕切りを取れば11名用の中部屋にも組み替えができます。誰かの家に集まってゲームをするような感覚で、周囲の目を気にせず仲間と心置きなく楽しめます。
林氏
1人でゲームをするのではなく、仲間と一緒に楽しむことに主眼が置かれているこの施設は、単なるゲーム施設ではなく仲間とつながり周囲に熱を波及していくコミュニティを生み出し支えたい、というKDDIの想いが表れています。
さらに施設の大きな特徴として、通信環境へのこだわりが挙げられます。施設には、通信会社ならではの10Gbpsの専用回線が引かれており、ネットワーク機器からLAN、ゲーミングPC内まですべて10Gbpsに対応した機器を選定しています。
お客さまに高速低遅延な通信環境を体感いただくべく、esports Style UENOだけのために10Gbpsの帯域確保型の専用線を引いています。一瞬の動作が勝敗を決めるeスポーツだからこそ、通信会社としてのこだわりと自負を持って設計しています。この通信環境を気に入って、某プロチームは当施設から大会にも出場されていました。お客さまに満足いただけていることを実感としても感じております。
林氏
高速低遅延な通信環境 イメージ
施設立ち上げの苦労と今後の課題
施設の立ち上げは、苦労の連続でした。eスポーツに関する知見や業界接点が事業部内になかったため、お客さまへ何を提供すれば喜んでいただけるのか、eスポーツ業界のトレンドがどこにあるのか・本音ベースで語れるパートナーは誰なのか、それらを探り洗い出すところからのスタートでした。Webでの情報収集には限界があったため、競合施設に足を運びスタッフに話を聞いたり、eスポーツのビジネス交流会に参加したり、若手新入社員にヒアリングを行ったり。可能な限り生の情報を集め、自分たちのありたい姿と求められるサービスをすり合わせていきました。
特に苦労したのがパートナリングです。誰とどのような形でパートナーシップを結ぶのか、目指す姿に共感し合いながらも忌憚なく意見を言い合えるのか、何度も会話を重ねながらパートナーを増やしていきました。業界のお作法を知らず、時にはパートナー様から叱られる場面も。ただ、お叱りを受けることで理解と絆が深まったことも事実です。今でも立ち上げ当初のパートナー様とは、関係値も深く一緒にeスポーツを盛り上げるべく取り組んでいます。
実況配信に特化したスタジオルーム イメージ
運営は順調に進んでいるかに見えますが、林氏は課題も感じています。その一つは、個人の実況配信に特化したスタジオルームがあるものの、その魅力を十分に引き出せていないことです。今後は専門学校等と連携して配信講座の研修会場として活用するなど、外部パートナーとの協業も視野に利用シーンを創出しながら活用を促そうとしています。
また、Z世代に幅広くアプローチするというテーマを考えると、esports Style UENOを訪れるイベント参加者が男性に偏ってしまっていることも課題です。性別や年齢を問わず幅広い層が参加しやすいイベントを増やすことで、より裾野を広げていきたい、と林氏は言います。
eスポーツはまだ伸びしろの大きい分野です。お客さまの声に耳を傾けながら、新しい取り組みを積極的に打ち出していきたいと思います。日本のeスポーツを盛り上げ、市場の裾野を広げることが、KDDIにとっての新たなビジネスにもつながると考えています。
林氏
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