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2023年01月06日

アメリカで話題の完全無人自動運転車「Cruise」に乗ってみたーー海外トレンドレポート

KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、北米や欧州のスタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動しています。このコーナでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどをKDDIアメリカの一色よりお送りします。

今回は、サンフランシスコ市内で正式運用が開始されている、ドライバーレスの完全自動運転車「Cruise」に試乗した感想などについてレポートしました。


一色 望KDDIアメリカ
本誌の記者。KDDIオープンイノベーションファンドのアメリカ サンフランシスコ拠点でスタートアップとKDDIの事業創造を目指し、ディールソーシング(投資先探し)と投資評価に取り組み、既存の投資先企業もサポートしながらMUGENLABO Magazineの制作に携わる。趣味は世の中のトレンドサーチと、美味しいお店巡り、旅行、ジム通い。

サンフランシスコの自動運転車事情

私が米国に赴任して最初に驚いたことの一つに、自動運転車の多さが挙げられます。サンフランシスコは、テック企業やスタートアップの中心地として知られるだけあって、市内のあちこちでカメラをたくさん搭載したテスト車両を見つけることができます。

よく見かけるテスト車両はGoogle傘下のWaymo、ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のCruiseで、2022年後半ごろからAmazon傘下のZooxもよく見かけるようになりました。

ただし、そのうちの大半の車両にはドライバーが乗っていて、有事の際には手動運転もできるようになっているので、特に日中は完全な(=無人の)自動運転車を見つけるのは難しいですが、ついに今回、念願の自動走行車に乗ることができました。

Cruiseの概要

Cruiseは2013年に創業された、米国サンフランシスコを拠点とする自動運転技術を開発するスタートアップです。アメリカの有名アクセラレーターY combinatorを卒業後、2016年に米国最大の自動車メーカーであるGMに買収されました。その後、2018年にソフトバンクやホンダが同社に投資しています。

そのような大企業のサポートを受け、2021年9月にカリフォルニア州のDMV(=Department of Motor Vehiclesの略称で、自動車局を指す)から無人自動運転車提供の認可を受け、2022年2月にはサンフランシスコ市内での一般公開が発表されました。

ちょうど同じタイミングで私も事前登録を済ませていたのですが、待てど暮らせどその後連絡が来ず、事前登録したことも忘れかけていた今年12月、ようやく招待コードを受け取ることができ、先日、念願の乗車に成功しました。


2022年12月6日に受け取ったCruiseからのメール

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同年2月に事前登録したので、実に10か月かかりました。周りの友人や先輩も同じタイミングで招待コードを受け取っていたので、このタイミングで一般公開枠が拡大されたのかもしれません。

いざ、乗車体験

Cruiseに乗れる時間は夜の10時から朝の5時半まで、エリアもサンフランシスコ市内の一部までと限られています。夜のサンフランシスコの街は物騒なので、日本にいた頃のように遅くまで飲み歩いたり、街を歩くことすらめっきりしなくなってしまったのですが、幸いにも先日、Cruiseの提供エリア内に住む知り合いの方からホームパーティーに誘っていただいたので、その帰りにCruiseを予約しました。

予約方法はごく簡単で、Cruiseのアプリ経由でピックアップ場所と目的地を入力してリクエストを出せば、数秒後に近くの車両がマッチングされます。そのUIUXはUberやLyftに非常に似ているので、普段からUberを使い慣れている人であれば事前のレクチャーなしですぐに利用することができると思います。

アプリ内のマップには提供エリア内を走行中の車両が表示されるのですが、この時も10台ほどのCruiseが走行していることが確認できました。


乗車までの操作画面と実際の予約車

①マップ表示:やたらとジャパンタウンあたりに車両が密集しています。

②予約後:ピックアップは6分後とのことで、待ち時間もUberやLyftと遜色ないように感じました。ちなみにCruiseには一台一台Matcha、Crepeなどの固有名称がつけられており、私が乗車した車両はAmber(=琥珀糖)でした。

③予約車到着:到着すると通知が来て、5分以内に乗車する必要があります。急いで知り合い宅を後にし、外に出た時には少なくとも3台ほどのCruiseが道路を走っているのを見かけたので、私が乗車したエリアは夜間にCruiseが一際多く走っているエリアなのかなと感じました。車を見つけたら、アプリでアンロックして乗車します。

④乗車:迎えに来てくれた車両とのご対面。写真左側には路上駐車がありましたが、ちゃんと道の脇に停まっていました。

車内の様子

乗車後はシートベルト着用を促され、それが確認できたら出発です。


走行前にシートベルト着用をタブレット・アプリ・音声にてアナウンス

運転は総じて非常にスムーズで、直線走行はもちろんのこと、カーブや車線変更も非常になめらかでした。特に車線変更は、目的地に行くまでのルートを勘案して最適な車線に入るように学習されているなというように感じました。

例えば、1車線の道路から3車線の道路に左折する場合に、通常であればルール上最も手前の車線に入るのですが、あえて真ん中の車線に入るようなことがありました。その後すぐに右折ポイントがあったので、それを見越したレーン選択だったと思います。

ずっと運転席を見ていたのですが、運転スピードは一貫して時速20マイル(=32Km)前後をキープしており、度を超えるほどの安全運転だったと言えます。乗車時刻は深夜12時頃で、この時間は交通量も極めて少ないので道もほとんど開けている状態だったのですが、前に車が走っているときには、車間距離も車1台分ほど開けていて非常に慎重なドライブでした。また、運転席と後部座席の間はアクリル板のようなもので仕切られています。


走行スピードとアクリル板設置

後部座席に設置されたタブレットにはマップが表示されており、現在地と到着までの予測時刻が常時表示されていました。マップの他にも、ラジオやトリビアなどのエンターテイメントが用意されていました。


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トラブル発生!?

目的地間近で1点だけちょっとしたトラブルがありました。目的地に着く直前で、同乗者が誤ってドアを開けてしまったのです(お酒の飲みすぎかもしれません)。その後ただちに車両は運転を停止。その場で立ち往生してしまいました。

焦って車内のHelpコールボタンやアプリ上の運転中断ボタンを押してみるも何も反応がなく、10分ほどの格闘の末に自動車を降りると、車両は何事もなかったかのように運転を再開し、目的地まで向かっていきました。立ち往生中に何度も後続車に抜かされました。

結果的に私達乗客を残して車だけが目的地に向かうということになりましたが、降車した直後にはすぐに動き出しましたし、目的地に向かう姿はとても凛々しく見えました…!何事もなくて本当によかったです。


立ち往生中のCruise

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道路の真ん中だったのでとても焦りました...!

トータルの走行距離は1.5マイル程度、乗車時間は10分ほどで、運賃は10ドルほどでした。運賃は基本料金5ドルに加え、走行距離や時間に応じて料金が加算されていくシステムのようですが、例えば今回と同じ距離でUberと比較した場合、Cruiseのほうが1~2ドル安くなるようです。

残念ながら提供エリアが制限されている関係で私の自宅までは帰れないのですが、Cruiseはまもなく提供エリアを市内全域に拡大する計画を持っており、実現される日を待ち遠しく思います。

最後に

今回はCruiseの乗車体験についてまとめました。過去にドラえもんの映画で、大人になったのび太が飲み会帰りに自動運転タクシーをつかまえて帰宅する未来図が描かれていましたが、その未来が既に実現していることを実感できてとても感慨深い出来事でした。

サンフランシスコ市内では、Cruiseの競合であるWaymoも自動運転車の提供を開始しているので、もし乗車する機会があれば是非乗車体験をそれぞれ比較してみたいと思います。

また、Teslaも普通乗用車に対し自動運転機能の一般提供を開始していて話題となっていますので、アメリカにいる間に一度だけでも乗車してみたいと思います。

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