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2026年03月31日

AI 事業を加速させる3つのカギ——現場データ、課題解像度、そして変革者の存在

MODE , Inc.
三苫 周平
Allganize Japan株式会社
佐藤 康雄
Deeping Source Inc.
金 敬東

3月に開催された「KDDI Business AI Fes 2026」において、「新進気鋭のスタートアップ3社と語り合うAIと事業の新たな関係性」と題したパネルディスカッションが開催された。

登壇したのは、現場向け IoT プラットフォームを提供する MODEの三苫周平氏、自然言語理解 AI を展開する Allganize Japanの佐藤康雄氏、フィジカル AI を手がける Deeping Source の金敬東氏の3名。

モデレーターは KDDI オープンイノベーション推進本部 副本部長の舘林俊平。議論は、急速に進化する生成 AI との向き合い方から、事業を加速させるための重要なピースまで多岐にわたった。


進化のスピードにどう向き合う

日々進化を続ける生成 AI。そのスピードに対して、各社はどのように向き合っているのだろうか。
映像分析を軸とした AI ソリューションを提供するDeeping Sourceの金氏は「早すぎて付いていけない」と率直に認める。同社はカメラから取得した映像を分析し、従来は人が行っていた解析作業をエージェントが担うことで、店舗運営などにおける PDCA サイクルを自動化している。
金氏は意識的にニュースをチェックしつつも、「勉強だけに偏ると意味がない。新しく出たものを見るだけでなく、使ってみて差分を見ていくのが一番体感しやすい」と実践重視の姿勢だ。
一方、ノーコード・ローコードの生成 AI プラットフォームで国内シェアトップの評価を得る Allganize Japanの佐藤氏は、「旬なもの」と「土台的なもの」を切り分けて考えることの重要性を説く。
同社が提供する「Alli LLM App Market」は100を超えるアプリやエージェントがデフォルトで搭載されており、契約したその日から業務効率化が実現できるプラットフォームだ。LLM の能力向上という「旬なもの」ばかりに目を奪われていると、事業化には至らないと指摘する。

佐藤:お客様の課題に立ち返って、ユースケースの成熟をしていくところを起点として AI を使う発想が重要です。変わらない部分と進化で変わっていく部分を切り分けておければ、それをベースに事業化していけます。
製造業や建設業など OT(Operational Technology)系のデータに特化したプラットフォームを展開する MODEの三苫氏は「来年には自社サービスが陳腐化するのではないか」という危機意識を常に持っていると明かす。

しかし、スタートアップが技術の進化を追いかける消耗戦では勝てないと割り切り、別の価値に目を向けている。
現場ではさまざまなツールが乱立し「スパゲッティ化現象」が進んでいますが、工場の騒音データや異常時の対応ノウハウなど、現場のデータはまだ生成 AI の世界に取り込まれていない。
三苫氏は「そういったものをきちんと構造化して持つ。ここはまだ唯一無二の価値が出せるところ」と、データの希少性に活路を見出している。

AI 活用を社内に浸透させる秘訣

3社に共通するのは、社内での生成 AI 活用が徹底されている点だ。その浸透の仕方には、各社の特色が表れている。
MODE では、役職によって使い方が異なるという。エンジニアは当然のように活用しており、現場でセンサーやカメラが繋がらないトラブルが発生した際には、生成 AI なくして問題解決は成り立たないとのこと。
営業メンバーもGenSparkなどのツールを活用して資料を手早く仕上げるケースが増えている。興味深いのは経営層の活用方法で、「この方向性でいいのかな」といった経営判断の壁打ち相手として生成 AI を活用しているそうだ。

三苫:経営層自身が壁打ちに使っていると、自分も使ってみようかなという風になります。経営層が触っているというのが、社内で浸透してきている要因ですね。

Allganize Japan も同じく「自分たちで使わないと説得力が出ない」という考えから、自社ソリューションを社内で徹底的に活用している。
Slack や Teams といった普段の導線上で自然言語を入力すればエージェントがすぐに作れる環境を整備しており、これは商品としても提供している。エンジニアだけでなく経理部門でも消し込み作業を AI で自動化するなど、全社的に活用が進んでいるのだとか。
佐藤氏は経営陣が「使わないことはリスクであり、競争力に直結する」と発信し続けることで、カルチャーとして浸透してきたと語る。その結果、採用面にも効果が表れている。

佐藤:AI がない時代は採用しなければならなかったポジションが不要になった。その分を再投資に回している。
エンジニア、経理、営業のいずれでも同様の効果が出ていると自信を見せる。
Deeping Source では社内の99%が生成 AI を活用しており、定期的に社内セッションを開催して新しい使い方を共有する文化が根付いている。
金氏は「数学は微積分で諦めた」と振り返るが、AI の登場によって答えからトップダウンで学べるようになったことが大きいという。エンジニアではない金氏自身も Claude Code を使って開発に挑戦し、「ここまでやったから次を教えて」とエンジニアに相談できるようになったことで、会話の質そのものが変わってきたと話した。
企画と開発の境目がなだらかになりつつあることを実感しているという。

事業加速のカギ

AI を使った事業を加速させるために何が重要か。最後のテーマで浮かび上がったのは、技術そのものよりも「課題の解像度」と「それを推進できる人」の存在であった。
金氏はまず、問題定義の明確さが成否を分けると指摘します。POC から契約に至った案件を振り返ると、「これがやりたい」という課題と「それを解決できる」という確信の双方が明確だったケースほどスムーズに進んだという。
これは AI エージェントの活用でも同じだと金氏は続ける。「自分の中で何が問題かが明確だと、エージェントにその一言だけ渡しても、勝手にいいものを作ってくれます」。逆に課題が不明確であれば、AI 側からも追加質問が返ってくる。壁打ちになる利点はあるものの、解像度を上げる作業は省略できない。
では課題の解像度を持つのは誰か。

三苫氏は、POC までは早く進むものの、その先の本番運用で「どの部署が担当するのか」が決まらず停滞する企業が少なくないと話す。スムーズに進む企業にはオーナー系や先進的な気質があり、前例がなくてもすぐ動く傾向があるという。
三苫:262の法則でいう上位2割の変革者を探すんです。新しい技術を喜んで触っている人が日の目を見てきて、登場人物として増えてきています。

佐藤氏は、こうした変化をより構造的に捉える。生成 AI によって知識そのものの価値が薄れ、1年目の社員でも10年目と同等のアウトプットが出せるようになった。だからこそ「AI をどう使って事業化するか」を構想できる人材の希少性が増していると語る。
加えて、企業独自のデータの価値も改めて認識されている。佐藤氏によれば、自社データの価値を低く見積もっている企業は多く、「まず AI に聞いてみてください」と勧めると、外部との比較から独自の強みが整理され、議論が一気に前向きになるそうだ。
一方でセキュリティやガバナンスの重要性も再び高まっていると警鐘を鳴らした。

佐藤:自然言語で依頼するとエージェントが出来上がりますが、中身がどうなっているか見えないのに動いてしまう。これは怖いことです。

議論は予定にはなかったグローバル比較にも広がった。
佐藤氏は、感覚として日本は韓国に1年ほど遅れているとみている。1年半前の時点で韓国の金融機関が特定のモデルを指定してオンプレ構築を求めてきた一方、当時の日本企業でそこまでの具体的な要求は見られなかったという。
ただし日本企業は一度使い始めると品質要求が非常に高く、大量のフィードバックが得られるため、そこで磨かれたソリューションはグローバルで十分通用するとも語る。
三苫氏は米国の危機感の違いを肌で感じている。
三苫:前職の友人が、AI でできるからという理由で首になった。

職を失うリスクと隣り合わせだからこそ、最新技術の取り込みが速い。日本との温度差はマインドセットの違いに根ざしているとリアルな話題を共有してくれた。
モデレーターの舘林は、AI による効率化やコスト削減、新規事業創造はもはや無視できない段階に来ていると締めくくった。
解きたい課題の解像度を上げ、それを推進できる人材を見つけ、グローバルのスピード感に負けない体制をつくる。3社の議論が示したのは、AI 時代の事業加速に必要なのは技術の最先端を追うことではなく、足元の課題と向き合う力だということではないだろうか。

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