- インタビュー
2024年05月23日
KDDIとSchooが豊田市のデジタル人材育成で連携ーー出資先との協業そのウラ側を聞いた
- 株式会社Schoo
円谷幸子 - 社長室
- KDDI株式会社
全詠九(じょんよんぐ) - 経営戦略本部 地域共創推進部 事業推進1G
愛知県豊田市は2023年12月から3カ月間、デジタルスキルの習得意欲のある市民向けに『「オンライン×みんな」で学ぶデジタルスキルアッププログラム』を実施しました。KDDIは本案件の受託にあたって、2019年に資本を含めた業務提携を締結した、オンライン学習サービスを提供する株式会社Schoo(以下、スクー)と協業し、市民の中でデジタルスキルの習得意欲のある求職者向けに学びの機会をしました。
本案件を受託したKDDIでは、デジタルスキル研修や地域での導入実績もあるスクーと協業し、このプログラム内容の構築から研修の実施までを手がけました。本稿ではKDDIで本件を担当した地域共創推進部の全詠九(じょんよんぐ)氏と、スクー社長室の円谷幸子氏のインタビューを中心に、出資先でもある同社との協業のウラ側についてお伺いしました。
スクーのウェブページ
地域の人材不足解消に向けた取り組み
元々この取り組みは、豊田市における育成にかかわる人材不足の課題が背景にありました。スクーは社会人向けのオンライン動画学習サービス「schoo」を提供しており、8,500本以上学びコンテンツを提供しています。また法人向けには、従業員の学習状況を管理し、オリジナルの研修を作成できる機能も用意されており、地域での採用も進んでいるそうです。
これまでに43の自治体との実績があるということで、地域における人材育成、研修のニーズの高まりについて円谷氏は次のように語ります。
自治体さんからは市民の方向けに、こういった学びの場を提供されたいというお問い合わせが本当に増えてきていて、今回の豊田市さんと似たような取り組みも実施していました。ただ現状、社内のリソースが十分でないこともあり、KDDIとの連携で確実に推進できたのかなと感じています。
円谷氏
今回の豊田市での取り組みは、自治体が主体となってスクーのIDを市民のみなさんに配布し、学習の機会を提供するというものでした。
特に特徴的だったのが「メンター」の存在です。各コースにメンターを付け、受講者の学習状況を確認しながら学習のフォローまで実施したそうです。効率を考えればオンライン完結が理想ですが、参加者はこれから新しい一歩を踏み出そうという市民の方です。この「リアルの場での顔合わせ」が受講した市民のみなさんに好評だったのだとか。このアイデアを生み出した背景には両社の連携プレーがありました。
日頃の情報交換が結果につながる
研修の概要
KDDIとスクーは2019年から資本を含めた業務提携を実施しており、今回の連携にもやはりこの業務提携がプラスに働いたようです。実際に事業会社とスタートアップが資本業務提携するケースも増えていますが、具体的にどのような連携が実施されているのでしょうか。
円谷氏は「それぞれが持つ『良さ』を補完できる体制にメリットがある」と明かしてくれました。
全氏はじめ、実は定期的に会合を設けさせてもらっていて、何かお困りごとないですかというお声掛けを本当にたくさんしていただいてます。私たちも自治体さんとの取り組みを立ち上げてまだ実績も少ない中だったので、やりながら協働できる部分はしていきましょうというお話はずっとしていました。
今回、豊田市さんの話が浮上したとき、うちには学習コンテンツがある一方、KDDIさんには実績や信頼、あとは人材や地場に根付いた事業所があるため、この二つが組み合わせることで双方を補完し合いながら、いいものが提供できるイメージが湧いたんです。
円谷氏
スタートアップとの協業で重要なのは、こうしたチャンスが巡ってきた時、スピード感を持って「具体的な協業のカタチを作れるか」という点です。全氏は受託後の企画検討でシンプルにスクーのプロダクトを市民の方に使ってもらって自主的に学習してもらうことを考えていたそうです。
しかし、相手はこれからデジタルの学び直しをしようという市民の方々。オンライン完結型の自己学習だけで、果たして市民の方のスキルアップを実現できるのか、全氏はふと立ち止まります。
我々の会社の中でも、eラーニングで学習をする際誰かのご支援や伴走があった方がより効果的にスキルアップできる方って結構いらっしゃるなと思ったんです。また、我々は部としても地域の課題解決を掲げていて、そこに『エルダー人材』という、これまでKDDIのいろんな事業部で経験をしてきたベテランの社員の方々に来ていただいているんです。
そういう方たちって本当に地域の取り組みにとても向いていて、これまでの豊富な経験や社会人としてのノウハウはもちろん、通信会社の社員ですのでITリテラシーも申し分なし。そんなところをメンタリングに還元できないかなと思いついたんです。
全氏
今回の企画によって、オンライン学習にとどまらない、リアルなメンタリングを提供する学び直しの枠組みが生まれることになります。
地域で新たな仕事を探すために「学び直し」を考える人とそれを支える自治体、必要なコンテンツをもったスタートアップと、デジタル支援だけではなく「伴走する人」という形でサポートする企業。スタートアップと大手企業では文化の違いから温度差が生まれやすいですが、このような形で日頃から情報交換することで、課題に対して迅速に成果が生み出せる、今回の件はその一例と言えるかもしれません。
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