- インタビュー
2024年03月07日
リコーがCVCを設立、担当者に聞いた50億円新ファンドが目指すもの
新設される株式会社リコー CVCのメンバー3名。中央が経営企画部 経営企画センター事業開発室室長の伴野仁治氏。
リコーは2023年11月、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンド「RICOH Innovation Fund」を設立しました。リコーのミッションである「“はたらく”に歓びを」の実現にむけてBtoB領域での最新のデジタルサービスを牽引するスタートアップへの戦略的な投資を実行するとしています。
リコーはこれまでにも、業界特化CVCやアクセラレータプログラムを運営してきましたが、今回の新たなCVC設立を受け、何を目指そうとしているのか。このファンドの運用を担当する、リコー経営企画部 経営企画センター事業開発室室長の伴野仁治さんに話を聞きました。
今回のリコーイノベーションファンド設立の経緯について伺えますか?
伴野:弊社は元々、メーカーとして、コピー機やプリンターといった製品が主力の事業でしたが、2020年にデジタルサービスの会社への変革を宣言し、当社の価値創造のモデルが変わってきています。
従来は、本社で価値を作り、それを各地域に展開していく方法でしたが、顧客接点や地域ごとにソリューションを開発し提供する、より顧客中心の価値創造へと変化しています。この変化に伴いR&D領域においても、自社で培った技術を活かすという自前主義からオープンイノベーションによる外部連携での事業創出の必要性が浮かび上がり、今回のCVC設立に至りました。
当社ではこれまでも、オープンイノベーションに取り組んできました。インキュベーター/アクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」は2019年から活動していますし、ベンチャーキャピタルへも5社くらいLP出資させていただいています。またCVCとしてもこれまで複数の経験はあります。創薬系のリコーバイオメディカルスタートアップファンドや、オムロンさんやSMBCベンチャーキャピタルさんとは技術視点での投資を行うテックアクセルベンチャーズを立ち上げております。
今回のリコーイノベーションファンドではこれらの経験、知見を活かしながらスタートアップへの投資と弊社アセット活用による成長支援・連携により事業を創出していきます。
新ファンド「リコーイノベーションファンド」の投資領域や投資方針を教えてください。
Vision
伴野:ファンドの話をする前に、まずビジョンの話をさせていただければと思います。リコーでは、「“はたらく”に歓びを」を企業理念であるリコーウェイの使命と目指す姿に掲げていますが、CVCとしてもこれを提唱しています。
リコーは今から約半世紀前の1977年、オフィスオートメーションを提案・提唱し機械でできることは機械に任せて、人はより創造的な仕事に集中するというコンセプトを掲げました。初期の頃はコピー機など、直近ではロボットやAIなど、機械に任せられる仕事が増えてきました。
2020年には、デジタルサービスの変革を宣言し、その想像力を支援することではたらく歓びを生み出すことを目指しています。その後、はたらく歓びを支えるために、働く場の変革や創造性の高め方を掲げ、それに基づいて投資探索領域をいくつかにに分けることができます。
投資探索領域
伴野:テーマ1は創造性の支援。①個人とチームの創造性 ②創造性を発揮するための環境、または直接創造性を支援という2つの軸で投資探索を行っています。例えば個人の創造性を引き出す生成AIアプリケーションや、チームでの創造性の土台となるデジタルウェルネスなどが含まれます。
テーマ2は、デジタル・ワークプレイス。いつでもどこでも同じ効率で働ける環境を提供し、オフィス以外の場所でも同じような効率性と生産性を実現し、働き方の多様化に対応しています。
テーマ3は、デジタル・インクルージョン。デジタルリテラシーや使いやすさなどに重点を置き、全ての人がデジタルツールを使いこなし、効率化と自動化を実現することを目指しています。
テーマ4は、脱炭素/循環型社会に向けた取り組みとなります。サステナブルな社会へと移行する中で排出量の管理など新たに生まれるタスクが発生します。これらの効率化を実現できるソリューションを探索し脱炭素/循環型社会の実現の加速を目指しています。
大企業で新規事業を立ち上げたいと考えている皆さん、スタートアップの皆さん、オープンイノベーションに興味がある皆さんへのメッセージをお願いします。
伴野:今回の投資探索領域は大企業一社だけでは実現できないことも多いので、オープンイノベーションをやっている方々、CVC周辺の方々で、より交流・協力をしなければいけないと思っています。
リコーとしてだけでなく、社会全体で、スタートアップの活躍により新しい市場を作っていくことは絶対に必要だと思っています。弊社に興味を持っていただいたり、一緒に協業できそうなことがあれば、積極的にお声がけいただけたらと思っています。
ありがとうございました。
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