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2025年06月30日

起業時から世界に通用する基礎を築く——AI 人材紹介で海外挑戦するクレイ・テクノロジーズ中田CEO

クレイ・テクノロジーズ株式会社
中田 智文
代表取締役 CEO 

全自動 AI 人材紹介プラットフォーム「Qlay」を展開するクレイ・テクノロジーズ株式会社。同社CEOの中田智文氏は、日本市場での PMF (プロダクト・マーケット・フィット)を経てから海外展開するという従来の定石を覆し、創業当初からアメリカ市場をメインターゲットに据えました。

「日本向けの筋肉で海外展開するのは、短距離走の筋肉で長距離を走るようなもの」と語る中田氏に、日本のスタートアップが真にグローバルで成功するための戦略と、日本のスタートアップエコシステムが抱える本質的な課題について聞きました。


世界中から最短1週間でエンジニアを紹介する AI プラットフォーム

Qlayウェブサイトより

クレイ・テクノロジーズが提供する「Qlay」は、 AI を活用して世界中から優秀なソフトウェアエンジニアを発掘・選抜し、企業へ最短1週間で紹介できる採用プラットフォームです。

候補者はプラットフォーム上で AI 主導の会話型インタビューとライブコーディングテストを受け、スキルとコミットメントが事前に検証された上で企業側に共有されます。採用企業は2週間のリスクフリートライアル期間を経て本採用を決定できるため、スピードと人材の質を両立できる点が最大の特徴となっています。

同社の AI リクルーターエージェントは、候補者探索からコンタクト、技術面接、コーディング試験監督、レポート生成まで一連のプロセスを自動で実行します。

これにより、採用企業側はエンジニアリングマネジャーの工数を大幅に削減できます。一方、エンジニア側は世界中の急成長スタートアップ案件にフルリモートで参画する機会を得られます。現在、登録エンジニアはベトナムをはじめとするアジアの新興国や、アフリカ・南アメリカなど、世界中から能力値ベースで集まっています。

AI 人材紹介で狙う「国境のないビジネス」

Qlayウェブサイトより

Qlayは、主にアメリカのスタートアップ向けに、海外のソフトウェアエンジニアを紹介するビジネスです。候補者のソーシング、スクリーニング面接、コーディング、空きポジションのマッチングまで、既存の人材紹介が手作業で行っていたプロセスを全て AI で自動化します。これにより、より早く、より多くの候補者にリーチでき、質が高く、人的コストも抑えられるため、リーズナブルな価格で提供できます。

中田氏

クレイ・テクノロジーズが展開する全自動人材紹介プラットフォーム「Qlay」は、従来の人材紹介業界に AI による効率化革命をもたらしています。特に注目すべきは、候補者の一次面接を一括で AI 面接システムが実施し、通過者のみを企業に紹介する仕組みです。

同社は主にスタートアップ向けに始めましたが、最近では大手企業やメガベンチャーとの取引も拡大しています。これらの企業が共通して抱える課題が、優秀なエンジニア採用のジレンマです。

質の高いソフトウェアエンジニアを採用するには、社内で最も優秀なエンジニアに面接を担当してもらう必要がありますが、これにより貴重な開発リソースが面接業務に割かれてしまいます。

「30人の応募者がいれば、1人1時間として30時間が吹き飛んでしまう。そして採用が決まったら大きな紹介料も発生する。これはスタートアップにとって大きなコスト」と中田氏は説明します。Qlayは、この構造的な課題を AI による一次スクリーニングで解決しています。

具体的には、履歴書の記載内容と応募ポジションの募集要項をベースに、 AI がマッチ度と記載内容の真偽をインタラクティブに掘り下げます。プロファイルで虚偽の記載をする候補者が多い中、本当にスキルや経験があるのかを AI 面接で確認するという課題を解決しています。AI 面接では、候補者のレジュメ内容と募集要項に基づいて個別にカスタマイズされた質問が行われ、応募者のスキルと経験の真偽を詳細に検証します。

中田氏が創業当初から意識していたのは、国の文化の特性にあまり依存しない事業を展開することでした。クロスボーダー採用という現象は、アメリカ企業に限らず世界中で起きている普遍的な動きであり、国境をまたぐ採用市場に着目したのが同社の戦略的出発点となっています。

採用という行為は世界共通であり、できるだけ国境にとらわれないビジネスを選んだのが大きな戦略的判断でした。現在の顧客構成はアメリカを中心に、日本、ヨーロッパのメガベンチャーやグローバルなスタートアップとの関係も深めています。

なぜ最初からアメリカ市場を狙ったのか

中田氏たちは国内でプロダクト・マーケット・フィットを達成してから海外展開という定石をとらず、最初から世界展開を狙いました。その意図を次のように語ります。

日本市場でプロダクト・マーケット・フィットを達成してから海外に進出しようとすると、単に準備が不足しているのではなく、まったく異なるスキルや戦略が必要になります。これは、短距離走のために鍛えた筋肉を使って長距離走をするようなもので、そもそも違う筋肉を使うことになります。つまり、最初から海外進出できる筋肉を身につける必要があるということです。

中田氏

この「筋肉の違い」は、事業運営のあらゆる側面に及びます。人材採用の手法、営業アプローチ、マーケティング戦略、ネットワーキングの方法、そしてクライアントとの関係構築まで、国によって求められるスキルセットが根本的に異なるのです。

中田氏が最初からアメリカ市場を狙った背景には、組織としてアメリカ向けの能力を最初から身につけたかったという明確な意図があります。特にスタートアップにとって、限られたリソースの中で複数の「筋肉」を並行して鍛えることは現実的ではありません。であれば、最初から狙うべき市場に特化した組織能力の構築に注力する方が合理的だという考えがあります。

同社の現在の成果は、この戦略の正しさを証明しています。顧客構成はアメリカが中心になりつつも、日本やヨーロッパにもあり、最初からアメリカ市場に焦点を当てたことで、グローバルなメガベンチャーやスタートアップとの関係構築に成功しています。

採用工数やコストを出来るだけ抑えつつ、自社と合うトップレベルの人を採用したい企業のニーズを解決し、最近では大手企業との取引も拡大しています。

大学時から米国で過ごしていますが、日本人ファウンダーとしてのアイデンティティはあるので、国境を越えたビジネスをやりたいという気持ちはとても大きいです。

中田氏

同社はクロスボーダー採用を通じて日本企業のエンジニア採用も支援しており、日本企業がより自社で開発組織を内製化し、アプリや社内システムの装備を自力で実施し、知見の蓄積やそれによるイノベーションの先取りを積極的に進めていける環境の構築にも取り組んでいます。

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