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2023年01月16日
-CES2023- オランダのOneThird、光の照射で生鮮食品の熟成度を判定できるAIチェッカーを公開
食べ物が発酵しているのか、熟成しているのか、それとも腐敗しているのかを科学のレベルで明確に線引きするのは難しい。これらの言葉は、食品の状態を人間が自分たちにとって都合がいいかどうかで定義しているに過ぎないからだ。
実際のところ、腐る直前の肉が美味いというのはよく聞く話だし、日が経ってしまった食品でも口に入れてお腹を壊すかどうかは結構、個人差がある。ただ、それが売り物や自分以外の誰かが食べるものであれば、神経質になってしまう。加工食品でなければ、消費期限も表示されていない。
オランダのフードテックスタートアップOneThirdは、食料品店やスーパーの買い物客向けに設計された「熟成度チェッカー」をCESで公開した。生鮮食品の熟成度を測ることができる。例えば、アボカドを素早くスキャンして、食べごろの正確な情報を得ることができる。(CESレポートはこちら)
世界では、生産される食品の3分の1が腐敗によって無駄になっており、そのコストは1兆米ドル(約128兆円)以上にも上る。OneThirdのソリューションは、消費者のみならず、生産者、食品流通業者、食料品店が賞味期限を予測することを可能にする。
この製品の主なターゲットは食料品店や流通業者だ。食料品店は、この装置を店頭に置くことで、買い物客に農産物の鮮度について確信も持ってもらうことができる。例えば、八百屋なら、消費者は手にしたアボカドを今日食べるべきか、数日待ってワカモレ(ディップソース)に入れるべきかを考える手立てになる。
今のところ、この製品はイチゴ、ブルーベリー、トマト、アボカド、マンゴーなど、比較的鮮度を評価しにくいものを検査できる。バナナも鮮度が落ちやすいので、近々追加する予定だという。
Image credit: OneThird
OneThirdは食品のデータベースを構築し、AIのアルゴリズムに改良を加えることで、年中通して農産物の変化をモニターできるようにした。チェッカーデバイスには、赤外線分光法が使われている。この仕組みでは、測定対象の物質に赤外線を照射し、透過光を分光することでスペクトルを得て対象物の特性を知ることができる。
生鮮食品は、時間の経過と共に糖分や水分など分子バランスが変化するので、それらの比率とデータベースの情報からAIが正確な賞味期限を予測するというわけだ。
OneThirdは、FTSE100に名を連ねる世界的救命技術企業Halmaのグループ企業の一つであるOcean Insightのデジタルイノベーションプロジェクトとして4年前にスタート、その後、生鮮食品の技術に特化した事業として2020年にスピンオフした。
2021年4月には、地元オランダのベンチャーキャピタルなどからシードラウンドで150万ユーロ(約2.1億円)を調達している。同社はこのソリューションを、収穫した食品の熟成度に応じて出荷先を検討できるソリューションとして、農業生産者などにも販売したい考えだ。