
2026年04月27日
世界最大級のAI・GPU開発者カンファレンス NVIDIA GTC2026-海外トレンドレポート
KDDI Open Innovation Fundのサンフランシスコ拠点では、海外スタートアップ企業への投資や事業連携を目的として活動している。このコーナーでは現地で発見した最新のテクノロジーやサービス、トレンドなどを、KDDIアメリカのメンバーよりお送りする。今回は、2026年3月16日から19日までアメリカのサンノゼで開催された「NVIDIA GTC 2026」の参加レポートをお届け!
目次

- 中川 惇太KDDIアメリカ
- 本誌の記者。KDDI Open Innovation Fund のサンフランシスコ拠点で、日本市場への進出に関心を持つ海外スタートアップとの協業や投資機会の探索に取り組む。また、国内外の投資先のサポートや MUGENLABO Magazine の制作にも携わる。趣味はサッカーや野球などのスポーツ観戦で、最近は米国のノンアルクラフトビールの飲み比べが楽しみ。
NVIDIA GTC 2026概要
NVIDIA GTC 2026は、NVIDIAが主催する世界最大級のAI・GPU開発者カンファレンス。現在のテクノロジー業界で最も注目度の高いイベントとなっており、AIインフラの方向性を決定する重要な場となっている。
2026年の開催では、世界190以上の国と地域から30,000人以上の参加者が集結し、会場では1,000以上のセッションが開催され、2,000人を超える登壇者が最新のAI技術を発表された。

ハイライト -エージェンティックAIとフィジカルAIの進化
「It all starts here(すべてはここから始まる)」というテーマのもと、AI、ロボティクス、自動運転など多岐にわたる分野で革新的な技術が紹介された。「エージェンティックAI(Agentic AI)」と「フィジカルAI(Physical AI)」の進化。エージェンティックAIは、チャットで回答するだけのAIではなく、目的に向けて複数ステップのタスクを自律的に計画・実行し、長時間稼働するAIであり、企業の業務フロー(調査、資料作成、社内調整等)にAIが入り込み、「人が指示して終わり」ではなく「AIが動き続けて成果に到達する」世界観が、各セッションやデモの前提となっていた。
一方のフィジカルAIは、仮想空間で学習したAIが物理法則を理解し、ロボットや自動運転車などのハードウェアを通じて現実世界で行動する領域。重要となるのが、現実世界の試験だけに依存しないための高精度シミュレーションと、環境そのものをモデル化するWorld Models(世界モデル)だ。GTCでは「現場導入」を見据えた“Sim-to-Real(シミュレーションから実環境へ)“の進化が随所で語られた。
また、モデルやツールのオープン化を含むエコシステム形成も加速しており、NVIDIAがすべてを囲い込むというより、各社を巻き込みながら業界標準を取りにいく動きが目立った。
注目展示|スタートアップブース

Inception Startupの展示会場では、以下の次世代技術を開発するスタートアップに注目が集まっていた。
- PANTHALASSA

波の動きを電力に変換する自律型浮遊ノードを構想するスタートアップ。従来の複雑な機械式海洋エネルギーシステムとは異なり、海底への接続を必要とせず、可動部品をほとんど持たないシンプルな設計が特徴。
AIインフラ需要が拡大するほど電力・冷却がボトルネックになる中で、計算資源の外側からAIを支えるアプローチとして注目を集めた。 - H Company

エージェンティックAI向けの基盤技術を開発しているフランスのスタートアップ。企業のワークフローに統合され、メール処理、スケジューリング、データ分析、レポート生成などを自動化する。同社は2024年に当時ヨーロッパ最大となる2.2億ドルのシード資金を調達。単なるモデル性能競争ではなく、業務フローに統合して継続運用する設計が前提になっていた。 - ALL SIDES

リテール向けの3Dスキャン技術を開発するスタートアップ。同社の自動スキャナーは、物理的な商品を数分でリアリティグレードの3Dデジタルツインに変換し、年間30,000以上の3Dモデルを生成可能。このデジタルツインは、eコマース、バーチャル試着、2D商品写真生成、AR/VR体験などに活用されており、Zara、adidas、Metaなどの大手ブランドが採用している。 - Verobotics

高層ビルの外壁点検と清掃を行う自律型ロボットを開発しているイスラエルのスタートアップ。同社のロボットは重量10kg未満で、AIを用いて自律的にビルの外壁を垂直に這い上がり、清掃と検査を同時に行う。従来の人間による作業と比較して最大4倍の速度で作業でき、クレーン等を必要とせず、容易に展開可能。ロボットに搭載されたカメラが表面をスキャンし、ビル外壁のデジタルツインを作成することで、予測保全も実現。
注目セッション|Advancing Autonomous Vehicles With World Models

このセッションでは、World Models(世界モデル)を使った自動運転技術の進化が詳しく解説された。
ポイントは、現実世界の走行/稼働データだけではレアケースを網羅できず、開発の反復速度も上げづらいという課題に対し、世界モデル+高忠実度シミュレーションが“安全性と開発速度”の両方を引き上げる、という点。NVIDIAが提供する自動運転向けプラットフォームの一つであるであるNVIDIA Cosmosは、自動運転車向けに特化されており、新しいアーキテクチャの変更と最適化により、初めてリアルタイムシミュレーションを実現している。

またセッション内では、ゲームのような見た目と操作感のシミュレーションデモも実演され、車両やエージェントが環境の変化に応じて振る舞いを変える様子が直感的に示された。単なる「CG」ではなく、開発者がその場で条件を変えながら挙動を確認できる形になっており、シミュレーションが検証・学習の“実務ツール”として成熟してきたことを強く感じた。
最後に
今回のGTCは、AIが単なるアプリケーションやモデルの競争段階を超え、社会を支える「インフラ」として確立されつつある様子を実感させるイベントだった。業務を自律的に進めるエージェンティックAIが現実味を帯びる一方で、フィジカルAIの実装にはWorld Modelsのような検証基盤が不可欠であり、会場では“Sim-to-Real”を前提にした開発の進め方が具体的に語られていた。
ビッグテック主導のAIの基盤整備が進む一方で、スタートアップは「運用」「データ生成」「現場作業の代替」といった具体課題で独自のポジションを取りにいっている。KDDI Open Innovation Fundは、AIがモデルの進化からインフラの構築と現場導入へ重心を移す中で、どの領域で新規プレイヤーの台頭が起きるのか、引き続き注目していく。



